梅雨どきの止まない雨を見限って、窓に背を向けた。こんな休日は、損をしたような気持ちになる。
本棚の乱雑な本の山々に、ふと目が留まった。隙間の奥で斜めになった、ビデオテープ。引っぱり出すと、うすく埃をかぶっていた。これはいつの事だったろう。風があたたかかったことは、よく憶えている。陽射しをあびた、五月の風。
馬小屋の中は、静かで、薄暗かった。開け放した戸口の向こうに、暖かな陽射しをあびた草原が風にそよいでいる。その風が、小屋の奥にも草原の香りを運んできて、全裸の自分の恥毛を揺らす。片膝を地面についていると、ひらいた股間がすうすうする。こんなに無防備で、いいのかしら。
馬は自分のことを気に入ってくれたようだった。こちらは、最初から彼のことが気に入っている。自分の手が撫でているものを見ると、うっとりしてしまう。垂れ下がっているそれのまん中へんに口づけすると、愛おしさがこみあげてきた。視線を少し上に向けると、ああ、握り拳のような睾丸が、きゅっと引き締まった姿でそこにある。放出の時、そこからどれだけ大量のものが供給されるのかを想像すると、両脚のあいだが疼く。痺れる。
亀頭を持ち上げて、唇を押しつける。そっと吸って、それから舌先でちろりと舐めて。ああ、これじゃ唾が足りないわ。もっとたっぷり濡らしてあげないと。でも、全部はとても無理。先っぽのほうだけで、我慢してね。唾液をたっぷり載せて、舌を根元まで出して、舐める。顔ごと動かさないと、大きすぎて舐めきれない。乙女にこんなことをさせるなんて、いけないひとね。あたしの舌、気持ちいいかしら。
どんな気持ちかは、すぐにわかった。だんだん、彼のペニスは堅くなって、水平に勃ち上がってくる。まるで銃口のように、顔を向いてくる。いいえ、砲身のように。口を開いて、押しあててみたけれど、とても入らない。でも、舌は使える。いちばん先端の、放出口を、ねっとりと。もし、このまま射精されてしまったらと考えると、声が出そうになった。されてしまってもいいんだけれど、それはそれで想い出に残る体験になると思うけれど、でも今はまだ駄目。堅さが充分になるまで、もう少し口でサービスしてあげる。
ペニスが弾けるように逞しくなると、なごりは惜しいが唇を離した。
馬体の下に木箱を入れて、毛布をかけると、ちょうどいい高さだった。仰向けになって、股間からにじり寄るように彼の下にもぐりこんでいく。すこし、元気がなくなってきただろうか? 下向きかげんのそれを持って、太腿をこすり、そのまま股間のほうへ持ってくる。逞しさが戻ってくるのがわかった。大きい。
かなりの太さで、持ち上げている指が回りきらない。直径は 5cm か、もう少しあるだろう。処女というわけではないが、こんなのはさすがに経験にない。いや、だいじょうぶ、練習はしたのだ。それに、彼とならきっと出来そうな気がする。自分の、ここで。おもわず溜め息が洩れた。こんなにも切ないことだったろうか。
脚をひらく。防ぐものは、もうなにもない。
片手で花弁をひらく。さあ、ここに来てちょうだい。
先端を触れ合わせる。どきどきする。たくさん、濡れている。上下に動かしてみる。あそこを舐められているみたいだ。そう、ペニスがあたしを舐めている。ああ……。もっと……。
もう一度、押しつける。彼は大きい。まだ入りそうにない……もう一度……まだ、駄目だ……もう一度……どう?……少しだけ。
ぐぅっ、ときた。彼がのしかかってくるような気がする。圧力があがる。
膣が拡がってゆく……両脚の間に、なにかとても巨大なものがある……まだ、拡がる……あ、そんなに……拡がる……来る……そんなに、駄目よ……あ、あぁ……大きい……あぁーーーっ!!
ビデオで見ると、なんとも生々しい。自分の秘部とは、こんな形状だったのだろうか。美醜を知ってか知らずか、馬のペニスは喜び勇んで突入してゆく。ペニスに押し開かれた自分は、はしたないほど大きく拡がっていた。潜りこんでゆくペニス。それを呑み込む肉襞。牝馬を求める生殖器と、種馬を貪る生殖器。今、こうして見ている自分でさえ信じられない、馬との結合。
我ながら、おどろおどろしい見物だと思う。だがそれでも、この映像から目を離すことができない。股間が、疼く……。
内側に、なにかとんでもないものが入ってきていた。クリトリスが下から押し上げられ、尻の肉が左右に分かれてゆく。身動きしたくても、串刺しにされたように腰が動かない。
「あぁ……は、ああぁ……」
喘ぎとも悲鳴ともつかない息を吐く。入っている……入っているのだ。
「好きです」思わず口走った。「好きです……愛してます……来て……愛してるの……あなたを、受け入れさせて……!!」
彼の息が、大きく馬小屋に響いた。自分の肉体に反応しているのだ。馬体が、動いているようだった。ずしん、と突き上げがきた。「あああああぁっ……ぁ、うぅ……ん」ずるり、と身の半分が抜けた。「は……あぁーー……」腰を横揺れさせた気配があった。「あぐぅぅ……っ!!」
もう、なにがなんだか、わからなかった。わかっているのは、彼が、そこにいるということだった。自分の膣内に。
ながい時間がかかったような気がした。彼が、じっと立っていた。先端が、だいぶ奥まで来ていた。子宮と亀頭がキスしているくらいにだ。いったい、彼のペニスをどれくらいまで受け入れてしまったのだろう。
下から見上げる彼の馬体が、張りつめたように緊張しているのがわかった。その瞬間が来ることが、予測できた。
びくん、というわななきが、ペニスをとおして感じられた。生理はいつだったろう、と、ふと場違いなことを思った。自分の卵子は、いまどこにいるのだろう。その瞬間、激しく、どぅどぅとうなりをたてて大量の熱いものが子宮に浴びせかけられ、溢れ、逆流し、股間から噴き出し、滴った。
「ひいいいぃぃーーーーっ!!」牡の絶頂を受けて、自らも頂点へと押し上げられてゆく。堪らない。堪らなかった。
30cm は、いっている。ほとんど根本まで呑み込んでしまうなど、我ながらなんて牝だと思ったほどだ。ときどき叫んだり呻いたりしているが、その声は、こうして聞いてみるとまぎれもなく、恍惚の響きがある。映っているのは自分なのに、そんなあばずれ女など、突きまくってひいひい言わせてやれと思ってしまった。
そして、その瞬間。それは、ビデオで見ていても、はっきりとわかった。あまりにも淫らな牝に堪えきれなくなって、可哀相な馬は射精してしまった。噴出する大量の精液が、自分の股間から滴ってゆく。尻も太腿もびしょびしょだ。
カメラは向きを変えて、彼女の顔をクローズアップした。ぐしゃぐしゃに泣いている自分が、そこにいた。だがマイクに入る声は、もっと来て、もっと注いでと嘆願していた。
離れたくなかった。ずっと一体になっていたかった。
だが、彼は出て行った。蹂躙され、精液で汚された彼女を残して。子宮から溢れる精子を残して。いつのまにか乾きかけた涙が、自分が我を忘れて泣いていたということを教えてくれた。流れ出た精液が、尻の丸みに沿って流れ、滴った。
風で、彼のたてがみが揺れていた。
引きずり出されていったペニスは、まるでタコの吸盤のようになっていた。ぬらぬらと光っているのは、それが彼女の体内にあったことのまぎれもない証拠だ。それにしても、あんなグロテスクな代物で、ほんとうに自分は歓喜したのだろうか? そう、それはもちろんだ。機会があるのなら、自分は悦んで受け入れるだろうと、わかっている。
股間がクローズアップされた。自分の愛液と馬の精液をぽたぽたと滴らせているそこは、舐めてあげたいほど艶っぽかった。
指が二本あらわれて、襞を押しひらいた。誇らしげに晒された自分の膣道が、ぬめるようにひかり、液が滲み出ようとしているところで、映像は終わった。
雲が暗くなり、一日が終わろうとしていた。梅雨はまだ、つづきそうだった。