お姉ちゃんはいつだって、あたしのものを横取りしてしまう。子供の頃からずっとそうだった。でも今度だけは。今度だけはそうはいくもんか。
永戸くんが、朱美お姉ちゃんを体育倉庫に呼び出した。永戸くんがお姉ちゃんのことを好きになっちゃったのは、あたしも気がついていた。1年以上つきあってたんだから、それくらい分かる。初めてお姉ちゃんと話した瞬間に、永戸くんはお姉ちゃんにぞっこん参っちゃったらしい。そりゃそうだろう。たいていの男は、お姉ちゃんに参っちゃうから。
お姉ちゃんはちょっと見にはあまり美人じゃないけれど、色白で、眼が大きくて、潤んだ瞳でとっても幸せそうに、にこーっと微笑む。まるで無防備なお姫様のようだ。高三にもなって、世間のことを何も知らないわけじゃあるまいし、あんな笑い方は反則だ。男を引っかけるために狙ってやっているとしか思えない。引っかけるのは別に構わないけど、誰彼かまわず微笑みかけるのはやめて欲しい。そんなだから、あたしが困るのだ。妹の彼氏までひっかけちゃうなんて。
だから永戸くんには、あたしのほうから話を持ちかけた。「お姉ちゃんを、思いっきり好きなようにして見たくない?」 それで、永戸くんはお姉ちゃんを呼び出した。
3時限目、お姉ちゃんのクラスの体育の授業が終わったところで、さりげなく。次の時間は、どのクラスも体育の授業はない。告白には絶好のロケーションってわけ。お姉ちゃんは、何の疑いも見せずに、まるで当然のように永戸くんの呼び出しに応じた。告白なんて、お姉ちゃんには日常茶飯事だ。「いつもの事よ」 いつだったか、告白された後でお姉ちゃんはそう言っていた。それが妹の彼氏でも、同じなのだろう。いつもの事。でも今度は、そうはいかない。
お姉ちゃんと永戸くんが校舎裏の倉庫に入って、二人っきりになったのを確かめてから、あたしはそこに踏み込んだ。永戸くんはまだ、「告白しようか、どうしようか」って感じで時間を稼いでいるはず。お姉ちゃんはああ見えて、合気道初段だ。永戸くん一人で襲っても返り討ちに合うのが関の山。だから、あたしが「踏み込んで」手助けするってわけ。あたしのほうも、いろいろ準備しておく事があったし。
「ちょっと!! 二人で何してんのよッ!!」
さあ、修羅場開始よ。ただし修羅場を踏むのはお姉ちゃんだけど。
「え、絵美ちゃん……?」
はっ、と振り向いたお姉ちゃんの目が、驚きに見開かれる。肩の下までとどく長い髪が、さらりと揺れた。着替える前に呼び出されたせいで、お姉ちゃんはまだ汗ばんだ白い運動着にブルマを穿いている。盛り上がった胸とお尻が、自然に男を誘っている。ふん、今に見てなさいって。その瞳を屈辱でいっぱいにしてあげるから。その髪を獣欲で踏みにじってあげるから。その清純そうなブルマを剥いて淫らの限りを尽くしてあげるから。
「お姉ちゃん、いったい永戸くんと、何してるのよ!?」押し殺した声で言いながら、後ろ手に扉を閉める。鍵はかけない。仕込みがまだ外に置いてあるからだ。「永戸くんがあたしとつきあってるって、知ってるでしょ!?」
慌てず、騒がず、でも大急ぎ。最初が肝心なのよ、この作戦は。ここさえ手早く片づければ、あとはゆっくりお楽しみだわ。
「何って、別に何も……」お姉ちゃんは無邪気に微笑んだ。「ちょっと、お話ししてただけよ」
あたしはお姉ちゃんの両腕をわし掴みにして問いつめた。
「そんなわけ、無いでしょ」よし、今だ。「永戸くん……!!」
あたしもびっくりするほどの早業だった。背後から素早く手を回した永戸くんが、有無を言わさずお姉ちゃんを引き倒す。力ずくでマットの上に押し倒すと、あたしと彼は二人がかりでお姉ちゃんを抑えつけた。
「んっ……むぐぅっ……!!」
うつ伏せにされて口を塞がれているので、お姉ちゃんは悲鳴をあげる事も出来ない。あたしはお姉ちゃんの手を背中でねじり上げると、用意しておいた紐でぎりぎりに縛り上げた。それから両脚。この先があるから、脚を閉じさせるわけにはいかない。片足ずつ、折り曲げた形で縛り上げる。
「いいのかい、お姉さんにこんな事して」そう言いながらも、永戸くんはにやにやしている。
「いいのよ、お姉ちゃんにはこんな事しても」湧き上がる興奮を抑えきれず、あたしも笑みがこぼれた。「さっきのお姉ちゃんのセリフ、聞いたでしょ。なにが『お話ししてただけ』よ。それとも、ホントにただのお話だったの?」
くっくっく、と永戸くんは笑った。「いいや、告白の一歩手前だったよ」
「何よ……あたしに、何をする気なの?」
やっと口が自由になったお姉ちゃんが言った言葉が、それだった。声が震えてる。
「別に、何も」あたしの声も、期待で震えていた。「さっきまでの続きよ。お姉ちゃんに恋する男性がまた一人……かなわぬ恋に身を焦がし、そして、そしてついにその想いを熱く告白するの。お姉ちゃん、そういうの、好きなんでしょう?」
あたしは永戸くんの手をとると、後ろからお姉ちゃんの股間へと導いた。わずかに湿ったブルマの布の上で、あたしは彼と指を重ね、意地悪な悦しみをこめて、指先をこね回した。
「おいおい、君の姉さんだぜ」
「そうよ。お姉ちゃんと仲良くなりたかったんでしょう。だから、ほうら」二人の指が、中心の柔らかい部分に沈もうとする。
「俺は、君とも、仲良くなりたいね」
後ろから、もう一方の手があたしの腰に伸びる。制服のスカートの裾をくぐらせ、永戸くんはその指先で、あたしの中心も意地悪くこね回した。
「あ……ちょっと!!」そんな事してる時間はないのに。
「わかってるよ」永戸くんは言った。「でも姉妹いっぺんになんてシチュエーション、見逃せないだろ」
「もう……変態!!」
あたしはお姉ちゃんと並んで四つん這いになると、股間を永戸くんに差し出した。いやらしい指先が、あたしの中心をまさぐる。お姉ちゃんが息を吸い込んで、止める。指が、めり込んでくる……裂け目に割りこんだ指が、力まかせに肉を掴む。
わずか数分間だったが、いけないシチュエーションをたっぷり悦しんだ後で、永戸くんはやっとあたしを解放してくれた。
「もう、本当に時間無いんだから」
永戸くんのせいで、すっかり息が上がってしまった。いまだにお姉ちゃんをいたぶっている彼を睨みつけ、あたしは倉庫の外に出た。お姉ちゃんがすがるような眼であたしを見送った。心配しなさんな、すぐ戻ってくるから。
倉庫の角で、リックは大人しく待っていた。永戸くんの飼い犬。オス。3歳。シベリアン・ハスキー。「調教」済み。誰が「調教」に協力したかは、この際どうでも良い。あたしと同じ16歳のくせに、永戸くんの変態っぷりはちょっと普通じゃないとだけ言っておこう。
あたしの脚にじゃれつくリックを諫めながら、あたしは体育倉庫の中に戻った。主賓のご登場だ。内側から扉に鍵をかけ、あたしはもう一人の主賓の様子を伺った。永戸くんの意地悪な責めは、もうだいぶお姉ちゃんを参らせているようだ。今にも腰を振りかねない。
「告白タ〜イム!!」そう言いながらあたしは、リックをお姉ちゃんのほうに向かせ、お座りさせた。「お姉ちゃん!! また、告白したいって男の子が来てるわよ!!」
「な、なによ、その犬……!?」指責めで息を喘がせながら、お姉ちゃんは目を見開いた。
「ワンワン!!」永戸くんが言った。「僕、リックっていいます。朱美さん、僕、一目見たときからあなたの事が忘れられなくなっちゃいました」どんな責めを受けたのか、お姉ちゃんの腰がくうっと浮いた。「ああ、この気持ち、僕はいったいどうしたらいいんでしょう。朱美さん、あなたは僕の太陽です、天使です、女神さまです!!」
お姉ちゃんの唇がひらき、何か言おうとしたが、言葉にはならなかった。ただ目を閉じ、背中が弓なりに反り返る。
「ああ、そんなにも私のことを?」あたしが代わりに答えてあげた。「リックさん、あなたのように凛々しい方にそんなにも想われていたなんて、私、光栄です。リックさん、どうか、どうか、言葉をつづけて下さい。その先の言葉を、大事なひと言を私に聞かせて下さい!!」
「朱美さん……!! ああ、僕は、僕は……」永戸くんの熱演だ。「僕は、あなたが、好きです!!」
「リックさん!!」あたしも頑張ろう。「ああ、駄目です。私は人間で、あなたは犬ですもの。でも、でも、私もあなたの事が……!!」
「朱美さん!! でも僕は、あなたの事が大好きなんです!! 今だけで良いんです、僕を好きだと言って下さい!!」
「ああ……好きです、あなたが好きです、リックさん!!」
あたしはリックの頭を撫でた。「良かったわね、リック。お姉ちゃんもあなたの事が好きだって」
「そっかー、朱美さん、リックの事が好きなのか」永戸くんがにやにやしながら言う。「残念だったなあ、俺も朱美さんのこと、ちょっと憧れてたのに。しょうがない、リックのために一肌脱ぐか」
空いている手を使って、永戸くんは巧みにお姉ちゃんのブルマをずり下ろした。
「ほうら、リック、おいで」飼い主に呼ばれて、リックはすかさずお姉ちゃんの後ろに駆けつけた。「リック、サービスだ!!」
リックの鼻面が下がり、お姉ちゃんの腰に隠れる。
「あんっ……だ、駄目ぇっ!!」お姉ちゃんが悲鳴をあげる。はっはっはっはっ、と激しい息づかいとともに、リックの舌が腰の中心を上下する。「あっ……ひいぃっ!!」
「リック、やめ!!」ぴたり、とリックは舌を使うのをやめた。「リック、レディ」
のそり、とリックが身を起こす。前脚がお姉ちゃんの腰を押さえ、両脚の間に腰を置いて立った。真っ赤な生殖器が、リックの後ろ脚の間に屹立していた。すごい。浮き出た血管が脈打って、今にもあたしのお姉ちゃんを突き刺しそうになっている。
マットに肩をついたまま、首をねじって、お姉ちゃんはあたしを見た。何が起ころうとしているか理解していても、信じられない。それとも……? なぜ、お姉ちゃんの瞳はあんなに潤んでいるんだろう。なぜ、あんなに切なげに息をしているんだろう。身体を強張らせるでもなく……なにかを待っているかのような。
「だめ……」蚊の鳴くような声だった。「いけないわ……あたし……それだけは……」そして、目を閉じた。
あたしは、ごくり、と生唾を呑んだ。お姉ちゃんの腰は、突き上げられたままだ。突き上げられたまま、リックの腰の真っ正面に位置しつづけている。お姉ちゃんは、待っている。
「リック、ゴー!!」
リックの体がお姉ちゃんの上にかぶさっていく。腰が沈んで、毛皮がお姉ちゃんのお尻に押しつけられる。
「んあぁっ……!!」お姉ちゃんが啼いた。びくっ、と一度だけ、白い太腿が痙攣した。
リックの腰がお姉ちゃんの腰を突き上げ、引き、また突き上げる。荒い息を吐きながら、リックはしゃにむにお姉ちゃんに縋りつき、腰と腰を打ち合わせた。
お姉ちゃんの腰が揺れ、くねった。リックに突き上げられるたびに、お姉ちゃんの身体がのけぞり、後ろへ……もっと深い結合を求めるかのように、淫らな動きを始めている。両手を背中で縛り上げられたまま、お姉ちゃんはリックに合わせて腰を動かしていた。
あたしの目の前で、お姉ちゃんが犬と交合っていた。
「こりゃ、すげえや」いつの間にかあたしの後ろに回った永戸くんが、両手であたしの胸を揉みながら舌なめずりした。「おまえの姉さん、変態だぞ。犬で感じてやがる」
永戸くんの腕の中に身をゆだねて、あたしはお姉ちゃんの狂態をぼんやりと見つめた。ああ、リックがあんなに激しく突きまくっている。あんなに深くつらぬいている。お姉ちゃんの腰が、犬を求めてくねっている。お姉ちゃんのあそこに、犬のペニスが入って、突き刺さって、前後に動いている。お姉ちゃんの中に、けだものが結合している。
リックが1回目の絶頂を迎えた瞬間は、あたしにも分かった。リックの身体が一瞬、硬直し、お姉ちゃんのお尻の強く腰が押しつけられる。
「あ……っ!!」
お姉ちゃんの身体に、かすかに震えがはしった。腰を押しつけたまま、リックは2、3度、その体を痙攣させた。そして不意に体を捻ると、腰を押しつけたまま、お姉ちゃんと後ろ向きになって床に前脚を下ろす。
「あっ……あっ……ああぁーーーーっ!!」
身をよじって、お姉ちゃんが泣き叫ぶ。注ぎこまれる精液の奔流に、たてつづけにイって、イきつづけた。
それから数10分もの間、リックが射精し終わって離れるまで、お姉ちゃんは犬の性交に身悶えした。やっとすべてが終わったとき、お姉ちゃんの顔には至福の微笑みが浮かんでいた。
命令されたわけでもないのに、リックは床にぐったりと横たわったお姉ちゃんに近づくと、愛おしげに頬を舐めた。
「終わったな」そう言うと、永戸くんはお姉ちゃんの縛めを解きにかかった。
まさか……?
じわじわと、胸の奥から何かが這い上がってくる。まさか、そんなことが……? リックがくぅんと啼いた。お姉ちゃんはゆっくりと目を開け、すべてをゆだねたように微笑んだ。永戸くんが、優しくお姉ちゃんを抱き起こす。まさか、だって、そんな。
お姉ちゃんは、いつだってあたしのものを横取りする。でも、今度だけは、そんな……。
たまには陵辱ものなどを。
03/06。まだ先は長い。