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2002/11/07(木)

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看護婦と犬、というのはどうだろう。もちろん、勤務中に、制服姿でやるのである。


彼女の腕を掴み、力ずくで引き寄せ、抱きすくめた。

「あっ!!」ちいさな悲鳴が、彼女の唇から漏れる。

その微かに開いた唇を、優次は強引に奪った。腕の中で、看護婦の薄いピンクの制服がもがく。が、容赦はしない。自分はベッドに横になったまま、優次は看護服の彼女を自分の下に引き入れ、抑えつけた。そして押しつけた唇の間から舌をねじこんで、亜美の口腔に侵入してゆく。ねっとりと熱く、柔らかな舌が、侵入した優次の舌にあらがい、身をよじった。彼女の狭い口腔の中で、濡れた舌と舌が、熾烈な攻防を繰り広げる。二人の唾液が混じり合い、舌に絡みつく。優次はその唾液を啜りあげた。いくらでも、あらがうがいい。その抵抗も含めて、全部、俺の物にしてやる。

必死で抵抗する亜美の唇をふさいだまま、優次は彼女の尻に手を伸ばした。制服の上から撫でただけでも、その豊満な丸みがよくわかる。看護婦なんかにしておくのは惜しい身体つきだ。服の上から谷間に沿って手を下ろし、裾をたぐると、太腿の間にねじこんでゆく。かあっと火照る体温が心地よい。

「ん!! んんん〜っ!!」

口を塞がれたまま、亜美がせいいっぱいの悲鳴をあげる。優次は、腹の中でせせら笑った。この病室は、優次の個室だ。心配性な親がたっぷり金を積んでくれたおかげで、普通より広くて遮音性のいい部屋を使わせてもらっているのだ。ちょっと悲鳴をあげたくらいでは、誰にも聞こえやしない。たとえ聞こえたとしたって、優次の二十歳の肉体は、もう抑えが効かないほど興奮している。この病院に入院したのだって、バイクで事故って脚を骨折したからだ。身体の他の部分はぴんぴんしている。あまり運動できなくなったせいで、普段より精力が余っているくらいだ。

せいいっぱいの力で抵抗する亜美の両膝をこじ開けて、優次は自分の脚を太腿の間に割りこませた。そうして、閉じることの出来なくなった股間を、優次の手が後ろから擦りながら探索してゆく。かすかに湿り気を帯びた下着は、その布地に彼女のぬくもりを含んで、這い寄る指をあたたかく包みこんだ。優次は割れ目を探した。指を揃えて、前へ、後ろへと亜美の股間を我がもの顔で探りまわる。

「んぐっ!! んんっ!! ん〜っ!!」

出ない声で懸命に嘆願するのを無視して、優次は下着の内側へと指を入れた。むっちりと弾力のある尻たぶの奥にすすむと、とろりと熟れきった牝肉が彼を迎えた。なんていい身体してやがんだ。実際に突っ込むまで、我慢できるだろうか。優次はその、がーん、と突っ立ったものを看護婦の太腿に押しつけ、さらに指で彼女を掻き分けた。

「ん〜っ!! ん〜っ!! んんん〜っ!!」

舌が口の中で、言葉を形作ろうと激しくもがきまわる。二本の指が、彼女の入口を探り当てた。優次は情け容赦なく指を……。

ずがんっ!!

情け容赦ない一撃がこめかみを直撃し、優次の目から火花が散った。かろうじて優次の押さえ込みを脱した彼女の片手の、渾身の一撃だった。

「うっ……」

くらっ、と視界が回る。その一瞬を捕らえ、亜美はもう一方の手で、股間をまさぐっていた優次の手を掴み、小指に関節技を極めた。

「あいっ!? ってーーーっ!!」

ひとたび極まってしまえば、主導権は亜美の物だ。問答無用、彼女はそのまま優次の手を、腕を逆に捻りあげ、ついに再び自由の身になった。そのまま腕の関節を極め、優次をベッドに抑えつける。態勢は逆転した。

「よ〜く〜も〜」怒りの余り、うまくセリフが出てこない。亜美の両眼は火を噴いていた。「よくも、よくも、よくも、好き勝手にぃ〜、やってくれやがった、わ、ね〜」

「いて、いててててて、て、手が、手がぁ……」

「さぁ〜て、どう料理してくれようかしら。とりあえず、もっと長く入院してみる?」

「まいった!! まいったっす!! いてぇっ!! たすけてぇ」

「助けてあげてもいいわよ。ただし、お仕置きの後で、ね」

「そ、そんな……いてて、わ、悪かったよぅ」

「悪いのはわかってるわよ。なにしろ強姦未遂だもの。問題は、ペナルティをどうするかなのよ」

「ペナルティって、そんな……あ、亜美さんだって悪いんじゃないかよぅ」

「ん? なんで、あたしが悪いのよ」

「あいて、いて、いて……だ、だって、そんな普段から艶っぽい雰囲気で、美人で、フリーで……って、痛ぇっ!!」

「艶っぽくて悪かったわね!! だいたい、あたしフリーじゃないわよ、バカ」

「え……亜美さん、彼氏いるの?」

「いるわよ。あんたみたいな馬鹿ガキとは比べ物にならない、素敵な彼氏が」

「馬鹿ガキって……いてて……ど、どんな人、彼氏って?」

「そ、れ、は、ナイショ。でも、とっても素敵な男性よ。ふふっ」

「ふふっ、て……どんな野郎だよ、くそぅ……あいてっ……お、俺よりいい男なのか?」

「比べものになんないわよ!! このエロ馬鹿!!」

「いて、いて……そんな責めないで……ちくしょう、だったら1回会わせてくれよ。そいつと勝負してやる……いてててててててて!! ちょっと、かんべんしてぇ!!」

「会ったって勝負になるわけないでしょ!! いい加減に、しなさい!!」

「いてぇ!! いてぇ!! こ、このぉ、訴えてやる!! 暴力看護婦め、病院ごと訴えてやる!! そりゃ俺も悪かったけどさ、こんなの行き過ぎだろ!! 訴えて、裁判沙汰にしてやるぅ!!」

「な、なに言ってんのよ、あんた……」

「なあ、せめて亜美さんの彼氏に会わせてくれよぅ。俺、これじゃ諦めきれねえよぅ」

「あ、あのね……」亜美は呆れた。まるで駄々っ子だ。

「でなきゃ、訴えてやる!! うちの親、けっこう顔が利くんだからな。マスコミにも連絡つけて、暴力病院バッシングのキャンペーン張ってやるぞ!!」

「む……無茶苦茶だわ」

「無茶でも何でも知るか!! 手ぇ、離せよ!!」

おもわず、亜美は彼の手を離した。優次は荒い息をつきながらベッドに座り直し、極められていた関節をそうっと揉んだ。

「今夜で、どう?」優次は言った。

「なにが、どう、よ?」

「亜美さんの彼氏。会わせてくれる?」

「そ、そんなの、出来るわけないでしょ!! だいたい、夜間は部外者立ち入り禁止よ」

「そこを、さ、へへへ、内側から手引きがあれば、何とかなるんじゃねぇの?」そこで不意に仏頂面になって、彼はぼそりと言い捨てた。「でなきゃ、やっぱり裁判か」

「好きにすれば?」

そうは言ったものの、亜美の声には力がなかった。きびすを返し、彼女は病室のドアへ向かった。

「だいたい……」病室のドアに手をかけたところで、顔だけ振り返って亜美は言った。「か、彼のほうにだって都合があるし……連れてこれるかどうか、わかるわけ、ないでしょ……」

ドアを開け、彼女は病室を出て行った。

優次にしてみたところで、駄々をこねてみたところで、亜美の彼氏に会えるとは思っていなかった。だいたい、訴訟がどうのというのだって、はったりもいいところだ。たしかに優次の家は裕福なほうではある。だが、馬鹿な息子の後始末のために訴訟を起こすような真似は、さすがにしないだろう。そもそも彼氏に会ってどうするというのか。勝負する? 殴り合いでもするのか? 馬鹿々々しい。そんなことで、亜美の心が自分に向くとは思えない。

優次はごろりとベッドに寝ころんで、窓の外を眺めた。冬が近づいた青空を、ひと掴みほどの雲がわびしげに漂っている。

だいたい、亜美を抱こうとしたのが大間違いだったのだ。無理やり押し倒して、性欲のはけ口にしようとしたのが、よくない。当たり前だ。当たり前すぎて、自分が嫌になる。強姦しそこねて、嫌われて、駄々をこねて……自分が、なんの価値もないクズに思えてくる。ちくしょう。

優次は寝返りをうって、壁の方を向いたまま毛布をひっかぶった。

窓の外では、じきに日が暮れることになりそうだった。

だが。

その夜、亜美は本当に、優次の病室にやってきた。

「優次くん……」かすかな、風が木の葉を揺らすほどの小声で、彼女が呼んだ。

優次はびくり、と引きつったように体を起こした。一瞬、病院にまつわるあれやこれやの怪談が脳裏をかけめぐった。だがよく見ると、病室のドアがわずかに開いて、そこから亜美が呼んでいた。

「あの……亜美です……ねえ、起きてる?」

「起きてるよ」同じように囁き声で答えて、優次は亜美を手招きした。

そうっとドアを開け、亜美が中に入ってきた。弱い常夜灯のあかりに照らされ、彼女のなにか緊張した貌が浮かび上がる。

「なんだよ、こんな夜中に」優次は囁いた。「彼氏でも、連れてきたの?」

「うん……」亜美は頷いた。「つ、連れてきたわ。でも、あの、あたし本当は今、ナースステーションに詰めてることになってて……」

「連れてきた!?」すると、彼女は真に受けたのか!? なんてことだ。「でも……どこに?」

さっき亜美が入ってきたとき、他には誰もいないようだった。とにかく、他の人間の姿は見えなかった。病室の外に待たせているのだろうか?

「こ、ここに……」亜美の声は、泣きそうなほどに震えていた。「ここ……あたしの足元に、いるでしょう?」

「え……?」

優次はベッドから乗りだして、亜美の足元を注視した。

見上げてきた彼と、目があった。真面目で、優しそうな目だった。優次は数十秒間、その犬と見合っていた。

「犬じゃん」優次は言った。

「ええ、犬よ」亜美が答えた。

優次は、亜美を見た。亜美は顔をそむけ、うつむいた。

「からかってんの?」

ふつふつと怒りがわき上がってくる。こんな夜中に、犬を連れ込んでまで……そこまで馬鹿にされるようなことを、俺はしたのだろうか。正面切って非難されるならともかく。ああ、もちろんこれは、「お前なんか犬以下だ」という、当てこすりなのだろう。だが何も、ここまで手の込んだやり方をしなくても……!!

「か、からかってなんか、いないわ!!」亜美は慌てて否定した。

「へえ、そう? じゃあ、亜美さんって、犬が恋人なわけ?」

「そ、そういう、ことね」

「ペットじゃなくて? 飼い犬を可愛がっているとかいうのとは、違うっての?」

「違う……違います。こ、恋人です」

「ほほう? じゃあ、教えてくれよ。亜美さんは、この犬とセックスしてる? 犬とさかってますか。週に何回くらい?」

うつむいた亜美が唇を噛むのが、薄闇をとおして見えた。

「セックスしてます」亜美は答えた。「犬……犬と、さかってます。……週に……に、2回か、3回です。……これで……これでいい……これで、いいですか?」

優次は本気で腹が立ってきた。この女、どこまで人をおちょくる気だ。

「そうかい、じゃあ、もっと詳しく教えて欲しいね。セックスは、わんわんスタイルですか、人間スタイルですか? 犬とのセックスは楽しいですか? 犬と人間とではどっちが気持ちいいですか? 人間と何回姦った上で、そう判断しましたか?」

「スタイルは……その……わんわんスタイルです。犬とのセックスは……セックスは……」まるで、すすり泣いているかのように声が震えている。「犬とのセックスは、楽しいです。犬と人間では、犬が……犬のほうが……ひ、ひどいわ!!」

「なんだよ、ちゃんと答えろよ!!」

「はい……ごめんなさい……」震える声で、亜美は答えをつづけた。「犬と人間では、犬のほうが、気持ちいいです。……少なくとも、あたしは、そうです。それから……人間とは……今まで……5人と経験しました」

「それで、その犬が、俺とは比べものにならないほどいい男の彼氏だと?」

「……」

「どうよ?」

「はい……ジョンが……この犬が、あなたよりいい男の、あたしの彼氏です」

「ああ、ジョンって名前なのね。で、俺は、犬以下ですか」

「……」

「俺は、畜生よりも下等な生き物ですか、亜美さん?」

「ご、ごめんなさい……それは、あたしが言い過ぎました。謝ります。申し訳ありませんでした」亜美は、ぺこり、と頭を下げた。だが、うつむいた顔は上げなかった。

「ああ、そう?」優次はもう、どうでもよくなってきた。こうなりゃ徹底的に絡んでやる。「じゃあ、俺は亜美さんの恋人に立候補できるわけね?」

「そ、それは……」亜美は言葉を濁した。

「そうかい、やっぱり俺は畜生以下かい」

「そんな……だから、それは謝りますから……」

「でも、俺が恋人になれるわけじゃないんでしょ」

「それは……それは、上とか下とかいうのとは、別の話です。優次さんが犬より下ってことじゃなくて……あたしが……あたしが……あたしが、犬を愛してるだけです。それだけです!!」

「はいはい、そうですねぇ」優次は嫌みたっぷりに言った。「じゃ、謝ってもらいましょ。そうね、土下座で、ということで」

亜美は素直に、その場で床に膝をついた。両手を前に出し、床について、頭を下げる。

「今日は、優次さんにとても失礼なことを言ってしまいました。どうも申し訳ありません。このとおりお詫びいたしますので、どうかお許し下さい」

薄闇の中、ピンクのナース服が床に土下座して、言った。

「うん、それでいいよ。あとは、そうだねぇ……」どうでもいいような感じで、付け加える。「その犬と、ここでセックスして見せてよ。それで終わりにしましょうかねぇ」

はっ、と亜美が顔を上げた。優次はじぃっ、とその顔を見た。あれは涙のあとだろうか? 暗すぎて、よくわからない。

「あの……ここで、ですか?」

「うん、ここで。週に2、3回やってるんでしょ。それを、ここでやって見せてくれよ」

「……」

「その……ジョンだっけ? そいつが人間だったら、俺もこんな事言わないけどさ。でも、いきなり、犬が恋人です、って言われてもなぁ。本当か嘘かわかんないでしょ。だから、証明して欲しいんだけどね。セックス、見せてくれますか」

「……はい」亜美は答えた。

「あ、見せてくれる? よかった。あ、いちおうこれ、獣姦ショーってことになるのかな。亜美さん、獣姦ショー見せてくれるんですよね?」

「はい……」唇を噛んで、亜美は肯定した。「獣姦ショーを……お見せします……」

「ほう、お見せします、ですか」ねちっこく、優次は絡んでやった。「亜美さん、ホントは見せたかったんじゃないの? 自分が犬とセックスするところ、見せたいんでしょ。どうよ?」

「別に……」

「あ、そ。じゃあ、もういいや。ぜひ見て欲しいってんなら見てあげるけど、そうでないなら、いらないよ。さよなら。夜中にさんざん嘘ついて、ご苦労さん」

「そ、そんなつもりじゃ……」

「……」優次はなにも言わず、明後日のほうを向いてすっとぼけて見せた。やれるもんなら、やってみろ。

屈辱をかみ殺して、亜美は言った。

「あの……どうか、あたしの獣姦ショーを、見て下さい。あたし、犬とセックスするところを、ぜひ見て欲しいんです。お願いします。どうか、あたしに獣姦ショーをやらせて下さい」

「変態」

「はい……あたし、変態です」

「いつもは、どうやってんの? 服は着てる? それとも、裸?」

「あ、あの……あの、裸、です」

「じゃあ、今日は着たまま。あ、スカートはめくってね」

「……はい」

亜美は床にひざまずいたまま、スカートをたくし上げた。そしてスカートの裾を腰の上にめくったまま、床に四つん這いになって、その格好で犬のほうへ這っていった。

優次の冷たい視線に見守られながら、亜美は顔を下げると、そうっとジョンの腰の奥を窺った。まだ勃起はしていない。当然ではあるが。亜美は片手をさしのべると、優しく、ジョンの股間を揉みはじめた。

何度も経験しているジョンは、すぐに亜美のもとめを理解した。四つん這いの亜美が、飼い主の女主人から、発情した牝犬へと位置づけを変えられてゆく。オスとして求められていると知るや、ジョンの生殖器は即座に勃起しはじめた。ジョンの視線が、亜美の姿態の上をさまよう。牝だ。俺の牝だ。俺に犯されたがっている、牝の犬がいる!!

隆々とそそり勃ってきたペニスは、夜目にも赤かった。その生殖器の内部で血流が脈打つのが、見て取れるかのようだ。

優次はごくりと生唾を呑んだ。今日の午後、亜美をこのベッドに押し倒してから、まだ半日しか経っていない。その亜美が、あどけなさの残る貌を犬の股間によせ、その白い指を獣の生殖器に奉仕させている。もっとよく見たかったが、暗すぎて細かいところまで見えない。優次は、意を決して、ベッド脇においてあるスタンドのスイッチを入れた。ドアには窓がないから、そんなに灯りが目立つことはない。ドアと壁の隙間からは、ちょっとだけ灯りが漏れてしまうだろうが。

ぎょっとしたように、亜美が振り向いた。まぶしそうに、目をぱちぱちさせている。

優次は口に指を一本あてて、黙れと合図した。亜美はなにも言わず、性愛の儀式に戻った。

亜美の指が、犬の股間で前後に動いている。今度は、よく見える。握っているのではなく、軽くさすっているようだ。それにしても、こいつのペニスは大きい。太さは人間と同じくらいだが……優次は嫉妬がわき上がるのを覚えた。くそぅ、俺よりは、長いかも知れない。もしかして、本気でこいつのほうが、俺より「いい男」なのだろうか。

「そのペニスの、どこがそんなにいいんだ、ええ?」優次は吐き捨てるように言った。

「どこ、って……」亜美は困ったようだった。「たとえば……」

「たとえば?」

「たとえば、この……先っぽとか」

「先っぽぉ?」

優次は目をこらした。犬の生殖器の先端は、わずかに人間よりも尖っているようだ。いや、たしかに、人間のペニスと比べると、形状が違ってはいるようだが。しかし、そんなに善し悪しの違いが出るものとは思えない。

「この先っぽが……」ペニスをさすりながら、亜美が説明する。こころなしか、先ほどまでの緊張と屈辱がうすれ、うっとりした表情に変わってきているように思える。「この先っぽが……挿さるんです、私に……その……あそこ、って意味じゃなくて……もっと奥に……もっと奥の、子宮の口に」

「……つまり、そこまで届く、って言いたいのか?」優次は憮然として訊いた。

「届くのはもちろんですけど」隠しようもない陶然とした表情を浮かべ、亜美はオス犬の生殖器を見つめる。「届くだけじゃなくて、ぐぅっ、と押しつけられてくるっていうか……それに……それに……」

「なんだ?」

「それに……あの、その……射精のとき、挿さったまま……ああ……あたしの奥へ……射精が……!!」

もはや、亜美がそのペニスに見とれていることは明らかだった。熱のこもった潤んだ瞳が、ペニスをじいっと注視している。その手つきは、まるで王に奉仕する小姓のようだ。

亜美の唇から、ほうっ、とため息が漏れた。

「くわえろ」優次は命令した。

亜美は喜んで命令に従った。

床に肘で這うと、犬の腰の下に頭をさしいれ、口を、あ、と開け、そして受け入れた。亜美の頭が、犬の腰に向かって動く。口の中に、血の色の肉が消えてゆく。根元ちかくまで受け入れ、そして出てきたときには、ねっとりしたものに包まれていた。

亜美が、ちらりと優次を振り向き、そして再び口で受けに行った。優次は、彼女の顔に歓喜の色が浮かんでいたのを見逃さなかった。

「牝犬」

優次は吐き捨てた。

「おい、牝犬!! 自分が牝犬だと思うなら、尻を振って見せろ」

亜美は尻を振った。口は、犬のものに奉仕しつづけていた。

「犬か。犬なんだな? 人間の女じゃなくて、犬の牝なんだな、あんたは?」

これ見よがしに、亜美の尻が揺れる。

「口から離せ」命令した。

亜美はなごり惜しそうに、自分の唇をつらぬいていた生殖器を離して、振り返った。

「今まで、口の中に出されたことはあるかい?」

亜美はうなずいた。「あります」

「何回くらい?」

「何回も」嬉しそうに亜美は答える。「数え切れないくらい、何回も」

くそぅ。犬にはそんなことまでやっているのに、俺は拒絶されたんだ。

「もう、犬のほうの準備はいいだろう。もっと灯りの近くに来いよ。そうして……」亜美の目が、期待を込めて彼の言葉を待っている。「……そうして、ここで、やってみせろ。犬と犬のさかり方を、実演してもらおうか」

「はい!!」熱烈に亜美は答えた。

ジョンを呼んで亜美は、ベッドの枕元ちかくの床に四つん這いになった。スカートが腰の上にめくれ、そして、今、亜美が下着を降ろしてゆく。太腿を通り過ぎ、膝を越えた布きれを、亜美は床の向こうへ放り捨てた。

亜美は床に頬をつけ、尻を高くかかげた。

「ジョン、おいで……」

ジョンは流れるような動きで前脚を亜美の腰に乗せると、ぐうぅっ、と腰を近づけていった。唾液に濡れた性器が、てかてかと赤く光る。先端が、亜美の尻に触れ、股間から伸ばされた亜美の手が、中心へと誘う。

ジョンの荒い息が、病室にこだましていた。

赤いものが、亜美の肉球の下へと触れ、静かに、その長さを失っていった。

亜美が息を呑んだ。

ジョンが前脚の位置を調整すると、いつのまにか、腰と腰が驚くほど近づいていた。

「あっ!!」亜美が微かに悲鳴を漏らした。「あ、あぁっ!!」

ジョンの毛皮が、亜美の尻に密着した。あれほどに目を引いた獣の生殖器官は、もはや一片も見えていない。どこへ……どこへ、消えたんだ? わかりきったことを、優次は自問せずにいられなかった。ああ、亜美さん……。そこに……その中に、あるんですね? 亜美さんの中で、脈打っているんですね? 亜美さんが言ったように、奥まで、子宮の口まで挿さっているんですか? ああ、亜美さん……。

「ジョン……」亜美が絡みつくような囁きで飼い犬に命じた。「ジョン、ファック!! ファックよ、ジョン!! ああ……ジョン、ファック!! ファック!!」

犬の腰がぐうぅっ、と引かれた。それにともなって、ぬうっ、と真っ赤に灼熱した鉄棒が姿を現す。亜美が震えるように息を吐いている。彼女の腰から復活した犬の一部は、激しく液にまみれ、どろどろと流れるように光が滴っていた。そして、犬は再び亜美を犯し、腰を沈めた。

「あぁぁっ!!」ため息のような、押し殺した歓喜の悲鳴。

そして、腰が引かれ、そして、またもう一度。牝の内部へ突き入れられ、引き出され、突き入れられ、繰り返しの動作がだんだん早くなって行く。

「あっ!!……あっ!!……あぁっ!!」亜美の悲鳴は、突き入れられるたびに甘い響きが増えてゆくようだ。「ジョン、ファック!!……あっ!!……ジョン、ナイス!!……いい……いいわ、ジョン……あっ、あっ、あっ……う、うれしい!!……もっと……ジョン、もっとよ……ファック!!……ああ、素敵……ファック!!、ファック!!、ジョン、ファック、ビッチ!!」

優次の見守る前で、看護婦の制服は犬に踏みしだかれ、足跡と抜け毛にまみれていった。そして病室の床に這った看護婦は、もはや羞恥もなにも振り捨てて、犬の下で歓喜に悶えている。

ジョンが、ひときわ深く腰を埋めると、背を反らすようにして、動きを止めた。

「あっ……は、あぁっ……!!!」

亜美と飼い犬が、一瞬、動きを止めた。ぶるるっ、と震えが疾った。

「あぁぁぁぁっ……」

亜美は床に這ったまま、ぐったりと身をよじった。粘るようなため息が、唇の奥から吐き出される。腰と腰を密着させたまま、犬がわずかに身じろぎした。何が起きたのか、優次にもわかった。亜美の肉体の奥で、今、何が行われているのか、そこで何がどちらへ向かって流れ込んでいるのか、容易に想像がつく。

「どうした?」それでも、優次は訊いた。

亜美は目を閉じ、唇を開いて、閉じた。

「答えろよ。どうしたんだ、牝犬?」

亜美は答えない。物憂げに首を振り、ただ、唇を微かに動かしている。

ジョンが、のそり、と動いた。腰を飼い主に押しつけたまま、もがくように、体の向きを変えてゆく。前脚が亜美の背から降ろされ、後ろ脚が不器用に主人の背を蹴る。亜美が責められたようにか細い悲鳴を漏らした。犬が完全に後ろ向きになると、尻と尻を押し合わせたまま、動かなくなった。亜美の体に痙攣のような震えが一瞬だけ現れ、そして数秒後に、また震えた。亜美は、泣いていた。逃れられない責め苦を受けているように、苦痛を耐えるかのように、か細い声を漏らし、泣き続ける。

「いくぅ……いくぅ……」亜美は朦朧と繰り返した。「ああ……ジョン……いく……許して……もっと……あ、いくっ!!……あ……あぁ……許して……お願い、ジョン……責めてぇ……あぁ、もっと……くるぅ……」

突然、病室のドアが、ばぁん!! と開いた。

ぎくっ、として優次は振り向いた。そこに、鬼のような顔をした看護婦が立っていた。

「あ……おおさわ……ふちょう?」さすがに少し正気に返ったらしく、その看護婦を見て亜美がつぶやいた。

「これは、どういう有り様なんですか?」大沢婦長の声は大きくもなく、激しくもなかったが、動かしようのない意志がこもっていた。

「あ、あの……」優次が言いかけた。

「あなたには訊いていません!!」ぴしり、と大沢婦長は決めつけた。「あなたです、西山さん。説明しなさい!!」

「あ……う、くぅん」答えようにも、言葉にならない。

大沢婦長は、じっ、と亜美を見つめた。氷のような数秒間が過ぎた。

「ま、よろしい。見れば、だいたいわかります」婦長は言った。「病院内へは、動物の持ち込みは厳禁です。西山さん、身辺の整理をしておきなさい。……たっぷり愉しんでからで、よろしい」

騒ぎを聞きつけたのか、病室の周囲に人が集まりはじめているようだった。

「それから、あなた」婦長は優次のほうを振り向いた。「もう、そろそろ、退院してもいいかもしれないわね。元気なんでしょ?」

「え……あ……そのぅ……」優次はしどろもどろに答えた。

婦長は、亜美のほうへ視線を戻した。ふん、と息を吐いて、どうしようもないというふうに首を振った。

「まあ、あんたたちがどういう関係かは感知しませんが。もし気にかかるようなら、面倒みてあげるのね。それとも、面倒見るのはこの犬がするのかしら?」

病室の外から忍び笑いが聞こえた。「おいおい……」「え……何事ですか?」「いや、あの可愛い看護婦さんがね……」「あ、犬だぁ」「なんで床に倒れてんだ?」「ありゃあ、あと30分は抜けねぇぞ」

「責任とって結婚でもしてみるのも、いいかもしれないわね」婦長は皮肉たっぷりに言った。「どっちが新郎をやるのかは……まあ、わかるような気がするわ、この状況を見れば」

婦長はこれで全ては終わったといわんばかりに、野次馬を追い払いながら病室を出て行った。

「式には呼んでちょうだいね」振り返りもせず、彼女は言い捨てていった。「看護婦一同、各科の先生がたもみんなで、お祝いしてあげるから、ね、西山亜美さん……」

「あぁ……」かすかに、うめくように亜美がつぶやいていた。「ありがとうございます、大沢婦長。あたし……あぁっ!!……しあわせ、です……」


あのー、今、午前5時15分なんですが?

なぜに、妄想を書こうとするとこんな時間になるですか? 昨日の休日も含めて、一昨日の「妄想断片の倉庫」は早めにリリースしておいて、実質3日ちかい時間を用意していたはずなのに。いや、それより今日も会社あるんだけど……? 大丈夫か、俺。

この後、2002/10/07 の「花嫁と犬」につづく……か、どうかは考えてなかったりして。ああ、ラストはもっと言葉責め&牝犬堕としする予定だったのに。わんわん、ばうばう!!

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