満月の夜には、なにか心ざわめくものがある。
2002年の中秋の名月は9月21日(土)だそうだ。金曜から土曜にかけては、天気もそう悪くはない。絶好のお月見日和、いや月和というべきか。某所ではお祭りもやっているらしい。お祭りの出し物には、一定の条件さえ満たせば誰でも参加できるという。
もっとも、たとえ条件をクリアしていたとしても、私はそのお祭りには参加するつもりはない。私はそういうイベントに参加できるような女ではないし、それに、ああ、ご主人様が私に、これから出かけるからお供せよとのご命令なのだ。ご友人のかたがたとのお集まりなのだという。
ふさわしい格好でなければならないとのことで、私はご命令のままに、ご主人様がご用意された衣服に着替えた。
「今夜は、月を見ながら愉しもうという趣旨なんだ。君にはコンパニオンの役をやってもらうよ」
長い耳のついたヘアバンド、お尻の上に真っ白でふわふわな丸い毛玉。バニーガールなら、お月見にも合うだろう。こんな格好で人前に出るのは羞ずかしかったけれども、嬉しくもあった。ご主人様のためにも、立派にお役目を果たさねば。レザー製らしいボディスーツは、搾るように乳房の周囲に喰いこんで、私の乳房を際だたせている。乳首を縛った細い糸が、首輪に結ばれ、呼吸するごとに私自身を苛む。両手が背中で拘束されているせいで、いやが上にも胸を反らせなければならない。この胸を皆様に見られるなんて。それに、抉られたようにそこだけ露出している股間には、素敵なバイブレーターが埋め込まれ、これ見よがしに根元を晒している。バイブレーターを固定する索具が、前と後ろの肉の割れ目に喰いこんで、早くも濡れた感触を伝えている。皆様に、ご堪能いただけるだろうか?
車が停まり、降りたところは一面のススキ野原だった。建物も何もない。こんなところで?
私たちはそのススキ野原の中へと足を進めた。だいぶ中のほうへ行くとススキが切れ、すでに数人の方々がお集まりになっておられた。
「おお、来たな大沢」一人が言った。「コンパニオン連れでは、一番乗りだな」
「他は?」
「一人はまだ会社だと。不参加だな、多分。他は、もう出たらしい。そのうち着くだろ」
「そうか。待つのか?」
「いやぁ、始めちまおう。やってる内に着くだろう。そのほうが、長く楽しめるだろうし」
「そうだな。じゃあ、さっそく始めるか」
ご主人様が私を呼んだ。
私は、地面の上にじかに四つん這いにさせられた。いや、両腕は背中で固定されているから、実際には両膝と肩で身体をささえている格好だ。
「ますます、脂がのってやがるなぁ」誰かが言った。「羨ましいね、こういう女を見せられると」
股間の拘束が外され、私に挿し込まれていたバイブレーターが、ずるりと引き出されていく。
「さて、まずはオードブルといこうか」ご主人様は責め具を抜いた後の私を広げて、皆様の視線を集めた。
なにかが、私の膣内に押し込まれた。バイブレーターではない。ピンポン玉ていどの大きさの、だがピンポン玉より質感のある、球状のものだ。それが、さらにもう1つ、そしてもう1つ……。
「さて、いくつ入るかな?」
ご主人様はなおも、それを私に押し込んでくる。5つ、6つ……。自分でもはしたないと判ってはいる。でも、入ってしまうのだ。あぁっ!! もっと下さい……ご主人様が下さるなら、私はいくらでも頂きます……あ……お腹が……重くなってゆく……。
「ひゃひゃ、すげぇぜ、この女!!」
「いやぁ、ずいぶん調教してるね。たいしたもんだ」
「まだまだ、ここからが愉しいんだろうが」
そう言うとご主人様は、ぐい、と私を引き立てた。
「あっ……はぁっ……」
急な動きのせいで、ご主人様に押し込めていただいた物が、膣内でごろりと動いた。おもわず失禁しそうになった。そんな私の歪んだ表情を、皆様がじぃっとご覧になっている。ああ、淫らで申し訳ありません、皆様。こんなに責められて悦ぶなんて。
「さあ、今度は出す番だ」新聞紙を地面の上にひろげ、ご主人様は私をその上に跨らせた。「ただし、みんなにお願いしてからだ。『産むところを見て下さい』とな」
産む? 私はご主人様の顔を見上げた。そんな……自力で出すところを、皆様にお見せせよとおっしゃるのですか、ご主人様。
私は言った。
「どうか皆様、私が産むところをご覧下さい。私のあそこから1つずつでてくるところを、どうか、どうか見て下さい……」
膣が拡がる感触があった。思わず背中が仰け反り、ヘアバンドの兎の耳が揺れた。ぽとり、と何かが落ちた。
「へっへっへ、ウサギ跳びの格好で出してやがるぜ、この牝兎」
次のが来ていた。「むぅっ……うぅん」ぽとり。そして、次。膣内に残っている分が、ごろりと位置を変える。次……。次、次、次……ジーッと音がして、見ると誰かがデジカメで撮影したところだった。「あ……どうか、下の方からお撮りになってください……」私は次のを産んだ。開いた膣口。のめるように出て行く球。こんな野外で、こんな変態的な行為に耽る私のあそこ……。ああ、撮ってぇ……。
すべて出し終えたと見て、ご主人様は私をそこからどかせた。
「よぉし、つれて来いよ」ご主人様は、ご友人の1人に言った。つれて来る? 誰を?
ご友人のかたは、すぐ戻ってきた。近くに待たせておいたらしい。とても美しい、金色の毛並みのゴールデン・レトリーバーだ。がっしりした堂々たる体格は、私などより体重がありそうだ。しかしその視線は知性的で、破廉恥な格好をした私を、いぶかしげに見つめている。言い訳の余地など、ありはしない。私はただ、羞恥にまみれて犬の視線を浴びた。
「さて、オードブルを召し上がれ」ご主人様が新聞紙の上を示した。
そこには、たった今、私が「産んだ」ばかりの、球……ピンポン玉大の月見団子が、ごろごろと転がっていた。私の膣内にあったせいで、淫液にまみれ、糸を引いているものさえある。月光を浴びて、その食べ物はねっとりと淫らなてかりを浮かべている。ああっ!! いやっ!! 見ないでっ!! これを……これを、わたしが? こんなにたくさん詰め込まれて? それを、自力でぽろぽろ吐きだしたというの? しかも、その間中、胎内からの圧迫感に苦悶と悦楽の表情を浮かべていたに違いない。
体中から炎が噴き出すような羞ずかしさだった。しかし、今さらこの団子を隠すわけにもいかない。だいたい、どこへ隠すつもり? もう一度、自分の膣内に詰め込むとでも?
ご友人のかたに促され、ゴールデン・レトリーバーは団子の前に進み出た。しばらくふんふんと嗅ぎまわると、害はない、と判断したらしく、かつかつと団子を貪り始めた。私の愛液にまみれた団子たちは、犬の牙に砕かれ、したたる唾液を浴びてさらに濡れた。
「よーし、もういいだろう、ほれ、離れろ」ご友人のかたが、犬を引いた。
新聞紙の上には、食い散らかされた団子の残りが散乱している。原型をとどめているのが2、3個、半欠けになったものがいくつか……。
「こんどは、お前だ」ご主人様が言った。「片づけないといけないからな。自分の後始末だ、喰え」
命令だった。
私は地面に膝をつき、前屈みになって団子に顔を寄せた。苦しい。だいたい、両腕が背中にまわっているのだ。前屈みの姿勢など、出来るわけがない。私は力を抜くと、そっと頬を新聞紙の上に落とした。これなら、喰べられる。口を開き、団子を囓る。ねとねとした歯触りで、つん、と鼻を突く匂いがした。自分の身体で温めた証拠だ。半欠けのやつに舌を伸ばす。唇に咥え、吸い込むように口に収める。私が汚し、犬が囓りとった団子。私の愛液と犬の唾液にまみれた、最低の食い物。
10数分かけて、私は犬の食い残したエサを平らげた。唇も頬も、何かの粘液でべとべとになっていた。
「ご主人様……?」
次の命令を期待して、私はご主人様を見上げた。
「……」ご友人の方々を見回して、ご主人様はにやりと笑みを浮かべた。
「犬と同じものを喰ったな」ご主人様は言った。「この牝犬め。おまえはコンパニオンだと言ったはずだぞ。それを、犬みたいな真似をしやがって。だったら、犬として扱ってやる!!」
わたしは俯せに地面に押し倒され、尻を高く掲げさせられた。
「申し訳ありません……申し訳ありません!! どうか、どうか許して下さい、ご主人様ぁ!!」
月明かりの下、私は男達に抑えつけられ、両脚を開いて尻を突き出す格好で固定された。乳房が地面にこすりつけられ、土で汚れた。次に来るものを予想して、私の身体に震えがはしった。かならずしも、恐怖ではなく……。
ふいに、みんなの動きが止まった。
「もし、お前がどうしても嫌だと言うのなら……」ご主人様の声は真面目で、なんの他意も隠していないようだった。「ここでやめてもいいんだぞ。お前が、本当に、嫌だというなら、な」
誰も、なにも言わなかった。
「どうだ、やめるか?」
私は、震えた。
「私が……」ああ、酷いです、ご主人様。私にこんなことを言わせるなんて。「私が悪うございました……どうか……」ああ、墜ちる……「どうか……続けて下さい……私に牝犬にふさわしいお仕置きを下さい!!」
背後で、はっはっはっ、と荒い息がした。
とすっ、と腰の上に何かが被さってきた。暖かい、毛皮をもった、何か……。
ゴールデン・レトリーバーは、私を犯した。
それからは、ジェットコースターのようなものだった。私は泣き、叫び、嘆願した。私はすすんで尻を振り、もっと牝犬になろうと懸命だった。ゴールデン・レトリーバーは熟練しきった動きで、私を翻弄した。絶頂の数など、憶えていない。最初の射精が終わると彼は後ろ向きになり、尻と尻をくっつけた状態で長期戦に入った。膣の入り口付近は彼の膨れあがったペニスで、破裂しそうになった。そして、子宮を突き上げるほど挿し込まれたその先端から、激しく、熱い奔流が、びゅっ、びゅっ、と数秒おきに打ち込まれてくる。私の子宮はゴールデン・レトリーバーの精液を注ぎこまれ、私は歓喜に泣いた。妊娠はしないとわかっていたが、受精すると言うことも知っている。自分の卵子が犬の精子の海に漂い、犯され、無数の犬の遺伝子が侵入してくる。月明かりの下で、人気のない野原で、私は犬と交合りつづけた。
「お、やっとご到着かよ」誰かが言った。
見ると、新しい女の子が到着したところだった。メイド服に、ウサギ耳のヘアバンド。そして……
新しく、ビーグル犬とシェパード犬の2頭が。月見の夜はまだ、終わらない。
某所でお祭り情報を発見し、兎 → バニーガール → 集会 → 衆人環視 & 野外 & 月の光の下で〜、と連想があっというまに妄想に成長してしまった。きわめてアブノーマルなネタで、しかも私は人見知りする質なので絶対に参加表明などしない(っていうか、表明しても問答無用で撥ねられるだろうけど。って、それ以前に、締めの文句が違ってないか? あれは確かはるか昔の別の祭りで……いや、何でもねぇっす)。が、妄想を捨てるのももったいないので、書くだけは書く。
さっき WEB 上で調べたところによると、今日の月齢は 13 とのことだ。ほぼ、満月と言っていい。しかし、実際のところ、どうなのだろう? いや、なんかここ2、3日、月を見てないなぁ、と。せっかくの名月なんだから、ひと目見ておきたいところだが。
………………。
見てきた。アパートを出てちょっと歩いたとこにある、なんだか雑草が繁った駐車場(なのか? 使ってるとこ、見たことないぞ)まで行ってきた。
うーん、いいなぁ。
草むらからは、せわしないとさえ言えるほどの、虫の声……。見上げると、雲ひとつない夜空にぽっかり浮かぶ、月……。夜空の背景はなめらかに、墜ちてゆくような冥い群青色。その群青へ、しっとりと、濡れた光を滴らせる蜜色の月は、ああ、牝の吐息を漏らすかのように、やっぱり丸かった。