【第2弾 2002/07/13】麻雀小説/博徒艶情


「ロン、タンヤオドラ3。8000」鷹雌鹿乃(たかめ かの。23歳。昼はOL、夜は雀士の二足のわらじを履く)の声が淡々と響き、獣合犬二郎(じゅうあい けんじろう。27歳。兄は私立探偵をやっているらしい)は窮地に立たされた。

犬二郎の最後の親が流されて、彼我の差は4万点を超えている。三倍満でも直撃すれば逆転可能だが、親の鹿乃は1000点上がって終了宣言すれば、勝ちだ。窮地と言うより、崖っぷちで片足が向こうにはみ出している、という状況だ。

代打ちで呼ばれてきてみれば、1対1の変則二人麻雀で、しかも負けた方はその場で犬に犯されるという「賞品」付きだった。無論、負けて犯されるのは犬二郎ではなく、代打ちを頼んできた相馬夫人である。

そういう「賞品」をかけて打つ女がいるという話は聞いていた。どうせイロ物だろうと思っていたが、いざ勝負に臨んでみると、強い。そういえば、女のほうが負けたという話は聞いたことがなかった。イロ物と思って、相手のことをろくに調べなかったツケが回ってきたということか。俺もいつのまにか、ずいぶんとヌルい打ち手になっちまったようだ、と犬二郎は苦い思いを噛みしめたが、まだ勝負が終わったわけではない。最後の一局は、石に齧りついてもこちらが手に入れねばならない。

犬二郎は相手の手元から視線を外し、精神を集中させた。この状態でこまかいサマを気にしてもしかたがない。それよりは自分がでかい手を、超ド級にでかい手をあがることに、すべてを賭けるのだ。

その気配を感じたのか、相手のほうも刃のような鋭さをこめて捨て牌を打ち出してくる。しかし……

「ロン!!」その一索こそ、犬二郎が狙っていた牌だった。「リーチ一発天和清一小三元一盃口三色対々和多牌タンヤオ ドラ4。ふっ、なんとかひっくり返せたな……」

そういえばイッパツテンホーって馬がいたなあ。なお、役についてはあまり追求しないように。多牌なんてチョンボだし。

「くっ……!! そ、そんな手を……」歯ぎしりする、鹿乃。

「恨むな。俺もこんな手をあがれたのは、初めてさ」

雀卓に手をつき、がっくりと鹿乃はうなだれた。こんな奴には、勝てないと思った。初めての敗北であり、そして初めて自らが「賞品」の立場になった、屈辱の瞬間だった。

「さぁて、お役目も終わったし、俺は帰らせてもらうぜ」上着を指二本にひっかけて、犬二郎は立ちあがった。

「あ、あの……」それまで固唾をのんで隅に控えていた相馬夫人が、おずおずと声をかけてきた。「あの、どうもありがとうございました。私……」

「待ちな!!」鋭い声が、二人を振り向かせた。唇を噛みしめ、雀卓にすがるようにして睨みつける鹿乃の顔があった。「賞品が、まだだよ」

犬二郎は困惑してかぶりを振った。「ええ!? 俺は、別に……」と、相馬夫人を振り向く。「わ、私だって、その……そんな、無理にとは……」顔をあからめて答える夫人。

「そういうルールだったからね。あたしだって……あたしだって、肉体を張ってるってこと、見せてやるよ」鹿乃は雀卓に手をつき、片手でスカートを捲りあげた。白い、意外なほど清楚な下着が犬二郎の眼にとびこんできた。

下着を引き下ろす手が、一瞬、ためらいを見せ、そして一気に膝まで下ろした。瑞々しい尻が宙に揺れる。

「おいで、アレックス」

鹿乃が呼ぶと、待ちかまえていたかのように、彼女の飼い犬が歩み寄った。股間に赤い棒がぶらりと垂れ下がっている。そして、いつもの勝負で慣れているのか、ひょいと前脚を鹿乃の背に乗せると、ぐうっ、と腰を押し出した。

「あ……あぁっ!!」突然の挿入に、思わず鹿乃の声が洩れる。かっ、と顔に血の色がのぼったのは羞恥か、思わぬ快感ゆえか。雀卓に突っ伏した彼女を、その愛犬が背後から巧みな腰さばきで責め始めた。



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