【第3話】第3話


テレビの深夜番組などで、シースルーのベビードールなんか出てくるとドキドキした。

ぼぉーっと見詰めてしまう事すらある。

だが、高校生の雪森かなたには、あんなものは買えかった。お金もないが、お金があったって、恥ずかしくて、とても買いにいけやしない。

だから、友達と入った繁華街の下着専門店で、そのシースルーのキャミソールを見つけた、かなたは



ズギューン



と心臓を打ち抜かれたような衝撃を受けたのだ。

それでも、その時は友達と一緒に来てたというのもあって、その場では買えなくて、

あとでこっそり一人で買いにいった。

青味がかったシースルーのキャミソール。前ボタンを留めて着るタイプのキャミソールで、細かいフリルの縁取りが、ことのほかテレビで観たベビードールを思わせる。

これを着て寝る。しかも下着を何もつけずにだ。想像すると、かなたは興奮して、顔が真っ赤になった。



「うわ。」



買って帰ったその日に二階の自分の部屋で、戸と窓を締め切って、早速それを身に付けてみたかなたは、鏡の中の自分の姿に、思わず小さく声を上げてしまった。

かなたの部屋には、ベッドと反対側の壁沿いに大きな姿見がある。姿見というか、母のお下がりの鏡台なのだが、化粧品もそれほど入っているわけでもなく、かなたは専ら姿見として使っていた。

「ひゃー・・・」

と言ったきり、言葉を途切れさせてしまう。

へ、変態みたい

一瞬そう思った。腰がムズムズしてくる。

その時、階下で弟のかずきの帰ってくる音がした。

ドキッと胸が高鳴り、反射的にその胸を押さえる。帰ってきたからといって、真っ直ぐかなたの部屋にくるとは考えられなかったが、それでも家族の者が誰かいるという状況下でこんな格好しているのは、やはり恥ずかしい事だ。

階段を駆け上がってくる元気な足音とともに

「ただいま〜!ねーちゃん、帰ってんのぉ?」



という元気な声が廊下を駆け抜ける。

隣の部屋の戸が開けられる音がした。かずきの部屋は廊下沿い隣で、階段から見たらかなたの部屋より奥になる。

「う、うん。な〜に?」

かなたはキャミソールの前を掻き集めて股間を隠すようにしながら、ベッドに座り込んで答えた。

なるべく平静を装っているのだが、どうしても喉の奥が引っ掛かる。

「ん?いや別に。何にもないけど。あ、そーだ。何か食うもん、あった?」

鞄を投げ込む音。

「知らない。れ、冷蔵庫、見たら?」

かずきは取り立てて不審に思った様子もなく、何にも言わずに階下に降りていった。

ほっと、肩の力を抜く。緊張が解けて、かなたは股間の異変に気付いた。

ぬるっ

身動(みじろ)ぎすると、濡れた陰唇が歪み、粘液の擦れる感触がはっきりと感じられた。

◆ ◆ ◆

けっこう猿軍団センターの猿舎は平日、飼育係が全ての片付けを終える夜七時には消灯される。

とは言っても、夜の七時などまだ外は仄明るく、窓から入る薄明かりで、十分物の形はわかるくらいだった。

窓には鉄格子が嵌っている。その鉄格子を、何かがカンカカカンと叩いた。

何かが偶然当たったような音ではない。これもアイブザル語の一つで、来訪と、そこのリーダーを呼んでいる事を示す。

しかも、自分はそのリーダーの事を知っていて、少しへりくだって「お呼び」する、というニュアンスを含む物の言い方なのだった。

人間の言葉にしたら

「ごめんくださーい。ケンタ先生はいらっしゃいますか」

となるところだ。



「誰?」

「あ、ケンタ先生でいらっしゃいますか?」

「先生?ちょっ、ちょっと待ってよ。ケンタは確かにボクだけど、先生なんて」

「いやいや。いやいやいやまぁまぁ。先生のご高名は賜っております。お休みの所、申しわけありません。

お初にお目にかかります。私、町猿のロンと申すものです。お見知りおきを」

「ロンさん?っていったら、ロン・グループの?」

町猿というのは、ノラ犬と同じように、町に住んで人の残飯等を漁っている猿達の事だ。しかしノラではない。

穴交町の猿には町猿と山猿と、穴交興行社(株)のけっこう猿軍団の、三種類の猿がいる。

ギンジのような山猿がこの中では一番勢力が大きくて、群れも二十を超えるほどあるが、町猿も五つを数えるほどの群れがあって、ロンはその中の一つの群れを束ねるリーダーだった。

「先生に頼めば、人間様の女の子と犯らしてくれるとお聞きしまして、失礼ながら馳せ参じてきた次第です」

「なんだかちょっと違って伝わってるよーな気がするなあ」

「え、違うんですか?」

「いや、大雑把に言えば、まあそうかな。まあともかく、こんな所で立ち話も何だから、中にお入りよ」

ケンタはそう言って、窓に嵌った鉄格子を両手で掴み、少し上に持ち上げ気味にしてガチャッと取り外した。

「おお、これは」

「うん、これね。何年か前にね。町猿の友達にちょっと手伝ってもらってネジ回しを取ってきてもらって、人間様にわからないように外しておいたんだ。どう?ネジの部分とか、見た目きっちりはまってて、わかんないでしょ。取り外すのも、ちょっとコツがいるから、ちょっとやそっとじゃ外せないし、よく出来てると思わない?」

「さすが。うまくしたものですな」

ロンはしきりに感心しながら、暗い猿舎の中に入った。

猿舎は鉄筋コンクリートで、その内装は壁伝いに無骨な鉄骨が剥き出しになって建物を支えているというものだ。ケンタがその鉄骨を足掛かりにしてスルスルと天井に登っていく。

天井も鉄骨が張り巡らされていて、ケンタはその内側に隠してあったビスケットや乾燥フルーツ等を持って降りた。

アイブザル達にも来訪者をもてなす習慣くらいはあるというわけだ。

「で、それで?」

「実は・・・この際ですから単刀直入に申しますが、・・・その・・どうしても犯りたい人間様の女の子がいるんです」

ロンがはにかみながら、意を決したように言う。

「・・・へぇ」

「な、何ですか!」

「あ、ごめんごめん。ちょっと驚いてしまって言葉が思いつかなかったんだ。いや、人間様を犯してみたい、ていう奴らは何匹かきたけど、誰それと交尾したい、ってロンさんみたいにはっきり相手が決まってるのは初めてだったから。ふーん、なるほど。さすが」

「何が、さすが、なんです?」

「だって童貞のロン博士といえば、有名じゃない。知略を買われて群れのボスになったってゆーくらいアッタマいーけど、せっかくボスになったってのに、全く雌に手を出さない、とかさ。もしかして、そのせい?」

ロンはフッ、と自嘲的な笑みを漏らして答えた。

「それを言うなら、インポのロン先生でしょう」

ロンが言ったのは本当は、「先生」という単語とは若干違う言葉だったのだが、日本語に適した単語がないので、ここでは便宜的に「先生」という単語をあてておく。理屈っぽいのをバカにするような、蔑称だ。

「ご推察通り。私達に、とても良くしてくれる人間様の女の子がいるんです。その女の子のご家族の方はみんな、私達猿に優しいんですが。何しろ他の人間様みたいに猿除け棒を振り回したりしないし、近寄っていくと、時々頭を撫でてくれたりするんです。それがどんなに嬉しい事か!」

「うんうん。わかるわかる」とケンタが身を乗り出して頷く。

「山猿の連中の中には、頭なんか撫でてもらって、何が嬉しいんだ、て奴もいるけど、なんてゆーか、気持ち良いよねー」

「そう、そうなんです。さすがケンタ先生、良くわかってらっしゃる。そうなんです。親に連れられて子供の頃からその女の子の家にしょっちゅう通って、餌をもらったりしていたんですが。その頃は私も、その女の子も幼くて、一緒に転げ回って遊んだりもしたものです。しかし、ご存じの通り、人間と私達猿とでは、身体の成長のスピードが違います。女の子の方は子供の純真さでぎゅうっと抱きしめてくれますが、こっちはもう発情期を迎えようかという年頃になってて、とても平静でなんかいられなくなってるんです。そしてある日、私は他の雌では交尾出来る状態にならなくなってる自分に気付きました」

「なるほどー。他の雌じゃあ勃たなくなった、と」

ケンタはそう言って殊更にロンの股間に目をやった。

ロンのそれは、ここにきた時から激しく昂ぶっていた。腹に付くほど反り返って、苦しげに見えるほどだ。こんな状態で歩いてる所を人間の女にでも見つかったら、悲鳴を上げられて逃げられてる所だろう。

「そう。その女の子の事を考えるだけでこんなになるのに。雌猿が寄ってくると、その女の子の事が頭にちらついて、逆にゲンナリしてしまうんです。でも、相手は人間様の女の子ですからね。そんな不埒な事を考えているってだけで、他の猿から何と言われるか。そう思うと、今まで誰にも言い出せませんでした。そんな時に、ケンタ先生のお噂を伺ったのです。私が、どれほど勇気付けられたか。おわかりいただけるでしょうか」

「うーん、わかるなあ。ロンさんの話を聞いててね、ボクも実は心に思っている人間様の女の人がいる事に、今気付いたよ。もしかして、“猿だって人間様の女を犯してもいい”てボクが気付いたのは、偶然じゃなかったのかも知れない。でもね、ロンさん。ボクだって何か特別な事して人間様の女を犯すわけじゃないんだよ。それこそ“雌猿を犯すように”人間様の雌を犯すだけなんだ」

「ええ、たぶん、わかってます。そうなんだろう、とは思っているんです。でも、それが、・・・出来ないのです」

ロンは苦渋の汁を絞り出すように、そう言った。

ケンタは「人間様の女」と言っていたのを、意識的に「人間様の雌」と言い換えていた。ロンの中にある、人間様に対する固定観念を、少しでも打ち消してやりたかったのだ。 ロンが、なぜそれを出来ないと言うのか、ケンタにはよくわかる。この、「人間様に対する根深い固定観念」が、ロンにそれを許そうとしないのだ。そしてそれは、ケンタ自身の中にさえあるのだった。

どうしても“人間様”と言ってしまうのがそれだ。

人間様の女の子を犯している最中、気分が高揚している時などは、平気で「人間の雌」などと言えるが、普段、特に他の猿と喋っている時などには、「様」抜きで喋るのは、かなり抵抗を感じた。

仕方がない。固定観念は、知恵を持ってしまった生き物の、不幸な宿業のようなものなのだろう。時に進歩の弊害ともなるが、これなしでは生きていけない。

だからこそ、一匹でも多くの牡猿が、一度人間様の雌を犯す必要があるのだ。

“人間様の雌を犯していいのだ”という事を実感しなくてはいけないのだ。

「よーし、わかった。ボクがその夢、叶えてあげよーじゃないの。で、その人間様の女の子って?」

◆ ◆ ◆

その日、雪森の家には姉のかなたと弟のかずきしかいなかった。

父親は広島に単身赴任中で、母はその父の単身赴任先に泊まり掛けで様子を見にいっているのだ。

母は二週間か三週間に一回くらいの割合で、こうして父の単身赴任先に一泊の小旅行に行く。洗濯や掃除をしてやりに行くんだというが、こういう所で、やはり母は父を愛しているのだな、とかなたなんかは思ってしまうのだった。時々、予定がなくてたまたま気が向けば、かなたやかずきも同行する事もあった。だが、今回はかなたは行かなかった。

ずっとこの機会を待っていたのだ。

風呂に入ってご飯を食べ、ずっとそわそわしながら9時になるのを待つ。

「それじゃそろそろ、お姉ちゃん寝るけど」

何が「それじゃ」なのかよくわからない。変な言い方にならなかったかと、ひどく気になった。

「うん。俺、もうちょっとテレビ観とく。おやすみ」

「おやすみ」

かずきはテレビから目を離さないで言った。どうやら、特には気にしていないようだ。かなたはホッとしながら階段を上がっていった。

自室に入って鍵を掛け、もどかしげに服を脱いでいく。震える手でタンスの奥に隠していた例のキャミソールを引っ張り出した。

ようやくこれを着て寝る事が出来る。

ドキドキと高鳴る胸を押さえかね、かなたは真っ赤な顔に潤む瞳でそれを見詰めた。

母が入れば朝起こしに来たりする危険もある。鍵が掛かってれば不審に思ったりもするかも知れない。だが、今日はかずき一人しかいないのだ。かずきが勝手に入ってくる事は考えられなかった。

下着もなにも付けない素肌にそれを着る。さらさらと肌を流れる薄い生地のくすぐるような肌触りさえエッチな感じがして、仄かに心地好かった。

前ボタンを留めて鏡の前に立つ。

い、いやらしい格好・・・

自分の姿を見て、わざと侮蔑するような言葉を心に思い浮かべた。しかし実際、その言葉通りなのだ。

形よく盛り上がった二つの乳房の頂点では、シースルーの生地を突き上げて乳首が激しく尖り立ち、かなたの興奮を指し示すかのようだった。その下はくびれたお腹が青い斜の向こうにうっすらと見え、更にそのすぐ下の丈の短い裾の隙間からは、何にも穿いてない下半身の陰りがチラチラと覗けて見えている。

下腹部の奥がずうんと重くなった。

はあ・・・

顔が熱い。溜息が洩れた。

でも、まだ何か足りない。

腕を持ち上げて、胸に手をやった。生地の柔らかな感触ごと、恥ずかしい感覚が皮膚の下で微かにさざめく。もう片方の手が裾を割って股間に伸びる。

既に肉鞘を割って頭を出し掛けている敏感な突起が、指に当たってピーンと弾けた。

「う・・・ん」

だが、まだもどかしい。

忙(せわ)しなく複雑な襞をめくって指先をめり込ませた。ねとねと擦れ合う接触面から、ジンジンと切ない快感の兆しが波紋を広げる。

鏡を見ながら、なんて格好しているのだろうと思う。

身体中のあっちこっちが、期待に疼いてる。だが、どんなに激しく揉んでも、どんなに激しく擦くっても、疼くばかりでその期待が満たされる事はなかった。

もっともっといやらしい事をしないと満足出来ないのだろうか。

焦っているように、ハアハアと喘いでいる。もう立っていられなかった。ちっとも満足出来ないのに、身体は立っていられないほど、興奮しているのだ。

そのまま、ヨロヨロと後ろに下がってベッドに腰を降ろした。

ギシ・・・

スプリングの軋む音にドキリとする。かなたは思わず息をひそめて階下の気配を伺った。その音が、かなたの恥ずかしい行為をいわずもがなの内に指し示しているような気がして。

だが、もちろんそんな微かな音が階下にまで届くはずはなかった。

ほっとして、いつの間にか止まっていた指の動きを再開させる。

ぬちっ・・・

「はぅっ・・・」

濡れた粘膜と指先がいつの間にか癒着したようにぴったりとくっついていたらしい。それが横滑りに引き剥がされる感覚に、かなたは不意打ちのような衝撃を受けてビクンと神経を震わせた。

いけない、と思って慌てて口をつぐむ。

でも、・・・気持ち良かった。一瞬頭が真っ白になった気がした。

また、そろりと指を動かす。今度は、薄布越しに乳首を弄繰る指も一緒に。

「ん・・・んっ・・んぅぅ・・・」

身体の中の敏感なポイントに何かが触れて、ぴくん、ぴくんっ、と断続的に跳ねて、かなたはたちまち座ってるのさえ辛くなってきた。足をベッドの縁に垂らしたまま、自然に上体が後ろに倒れる。ベッドの方向と垂直に横になる形なので、頭が壁に当たって首だけ起こした状態になる。目を開ければ、目の前には脚を広げてあさましく股間を弄(まさぐ)る、あまりにも淫らな自分の姿が鏡に映っていた。

恥ずかしさが慄(おのの)きとなって背筋を駆け昇る。

その時、鏡に映ったそのベッドの下の暗闇に、何かが蠢いた。気のせいか、と思うか思わないかの内に毛ムクジャラの長い腕がヌッと現れ、かなたの足首を掴む。

いっその事それが得体の知れない化け物の手であったならば、かなたも悲鳴を上げる事が出来たかも知れない。さにあらず。その手はこの穴交町の至る所で見掛ける、猿のものだった。

片手をかなたの足に掛け、猿の頭が現れる。

猿は少女の股間を下から覗き込もうとするように、身体を捻りながら這い出してきた。

驚愕はあったが恐怖はなかった。自分の部屋に引き入れるほどではなくとも、子供の頃から馴れ親しんでいるのだ。むしろ好きなくらいだった。だがこんな時に、いきなりベッドの下から現れたら、やはり息を飲まないで入られない。

それにこんな時だからこそ、声も出せなのだ。かなたはハッとして手で口を塞いだ。

かなたにはわからなかったが、その猿はケンタだった。ケンタは両手をかなたの両膝に乗せて更に身を摺り上がらせ、太股の内側をぺろぺろなめ始めた。

「なんだあ、一人でオナニーなんかして。可愛い顔して、ドスケベじゃん。そんなんだったら、これから毎晩やってきて、ボクらが一晩中掛けて気持ち良くしてあげるのに」

薄い笑いを浮かべて恐ろしい事を言う。もっとも彼の言葉はかなたにはわからなかった。もしわかったら、今度こそ本当に絶叫しただろう。

ケンタは一旦離れて、閉め切った窓の方に近づくと、ほとんど悩む事なく鍵を開けてしまった。

ガラリと開く。

出ていってくれるのかと思ったが、そうではなかった。

夜気がさーっと吹き込み、その夜闇に向かってキキキキッと小さく呼び掛ける。

するとそこに、二匹目の猿が姿を現した。町猿のロンだ。

かなたがいつも餌を上げたり、頭を撫でて上げたりしている猿だったが、かなたにはそこまでの区別はつかなかった。

「さあ。お待ち兼ねのお姫様だ。見てみなよ。凄い格好だろう?お姫様の方もすっかり準備万端って感じでさ」

かなたは片手で口を押さえ、片手を股間にやった格好のまま、動けないでいた。今ようやく、生まれて初めて、猿を怖いと感じていた。

危害を加えられると思ったのではない。最初の猿、ケンタの股間に、恐ろしく熱(いき)り立った物を見つけたからだ。さすがにそれで犯されるとまでは思わなかったが、それはかなたの身を竦ませ、かなたの目を釘付けにした。

だがそれに対してロンは。

「あれ?どうしたの」とケンタがロンの股間に目をやって言う。

恋い焦がれた少女の淫らな肢体を目の前にしながら、ロンの男性器は力なく項垂れたままだった。

「だ、だめなんです。さっきからずっと。もうすぐかなた様を犯れる、交尾出来るんだ、て一生懸命自分に言い聞かせてるんですが」

「お姫様のこんなあられもない姿を見て、幻滅した?」

「まさかそんな!美しいです。想像以上、いや、想像も出来なかったのに、こ、こんな・・・」

ロンはかなたを凝視したまま言葉を詰まらせた。

「ははん。わかった。嬉しすぎて緊張してんだね。本当に童貞だなあ。それじゃあ早く、触って上げなよ。大丈夫、舐めたり弄ったりしてる内に、ちゃんと勃起してくるよ」

「そ、そうですね・・・」

ロンは頷いたが、それでも動こうとはしなかった。否、動けなかったのだった。

人間様を犯すのだ。

心の中でその言葉を何度も何度もくり返す。だが、手が震え、脚が慄(おのの)き、考えれば考えるほど、心は畏怖に満たされていくようだった。

人間様を、かなた様を、かなた様の中に、こ、これを

突き刺して

これを

かなた様を

かなた様に

かなた様の

アソコに

「・・・だ、だめです。ケンタ先生。か、帰りましょう」

「な!今更何言ってんの」

ケンタは驚いてロンの肩を叩いた。だが、その肩もすっかり強張ってしまっていて、とても雌を犯す事など出来そうになかった。

そうこうしている内にかなたもさすがに冷静さを取り戻してくる。猿達を刺激しないように、ゆっくりと膝を閉じ、身を起こし掛けた。ケンタはそれに気付くと

「ちぇっ、仕方がないっ」

と呟いてかなたに飛び掛かった。

「んん゛ぶっ!」

くぐもった悲鳴を上げて反射的に後退りしようとする。だが後ろは壁だ。逃げようがない。さっきと同じように、両膝を掴まれ、再びグイッと押し開くかれると、その間に顔を埋められた。

大事な所を猿に舐められるというおぞましい予感に、身体が勝手に身構える。

だがその期待は裏切られた。猿の舌と熱い息吹きは急所をそれ、付け根近い内股を責め始めたのだった。

期待?否、期待のはずはない。だが、その寸前で肩透かしを食った神経は、まるで失望したようにキュウンとかなたのソコを疼かせた。

それに、全く刺激がなかったわけでもない。ケンタの顔を縁取る獣毛が、突き出たかなたの突起をくすぐるのだ。

それは、強い刺激ではなかったが、かなたの中断された性感を再び煽り立てるのには十分な愛撫だった。むしろ、強くない分、もどかしい刺激がよけいに切なさを掻き立てる。

「ん・・・んん゛・・ん、む゛」

抑えようとも抑え切れない嗚咽が、口を塞ぐ指の隙間から漏れ出てしまう。どうする事も出来ず、更にもう片方の手も口に持っていって、それをかなたは両手で押さえ込もうとした。

ケンタが反対側の内股を舐めしゃぶろうと頭を巡らせると、毛がさーっと横殴りに突起を嬲り、開かされた両脚の力が更に震えながら萎えていく。

脚を閉じようと思ったら閉じられたが、実際にはそれは不可能だった。

相手が人間であれば、ムリヤリ閉じて頭を挟み付ける事も出来ようが、猿が相手では、どんな暴れるかも知れないのだ。

膝を掴んでいた猿の手も、今は太股の外側を回って両側の脇腹を這い登っていた。敏感になった皮膚を無骨な獣の手に優しく撫でられると、心ならずもピクピク反応してしまう。

縛られているわけでないのに、身体の自由は奪われていた。心と身体のせめぎあう狭間で、ただひたすら声を殺し、頭を打ち振って四肢を震えさせるしかなかった。

キャミソールのシースルーの生地の下で、猿の手が徐々に胸の膨らみに近付いてくる。気持ちが胸の感じ易い部分に集中する。そこは、自分で慰めていた時と同様に激しく勃起し、まるで早く刺激が与えられる事を待ち望んでいるかのようだった。

もうすぐ・・・

もうすぐきちゃう

そう思った瞬間、刺激は予想もしない所に与えられた。つまり、焦らすように間近まで嬲られながらそれまで全く触ってもらえなかった股間の

「んう゛ん゛んっ!」

ぬめついた舌に舐め取られたクリトリスがズキンと強い快感を訴えて電流に近い痺れを背筋に送り込む。瞬間、意識が飛んだような気がした。

人間とは違う、猿の長細い手に乳房を揉みしだかれる。自分の手ではない指に弄ばれるというだけでもそれは鮮烈な感覚だったが、それが動物の手だと思うと、凄まじい違和感があった。

股間の剥き出しの神経をぺちょぺちょ舐められ、ちゅうちゅうと吸われるいやらしい音が、脳に食い入ってくるようだ。

猿に犯される・・・!

恐るべき予感が、現実感を伴って身に迫ってきていた。

嫌悪感と違和感。そして、それらとは裏腹に強制的に感じさせられる、快感。猿に屈伏させられる、屈辱。時折乳首に当たる指の、もどかしい感触。

逃げ場もなく、壁にごりごりと押しつける髪が、汗に濡れてぺっとりとこめかみに貼り付いていた。

「ん!・・・んう゛っ」

堰を切ったように浅い絶頂が何度も襲ってくる。その度にかなたは、子宮が身悶えするのを感じた。

とろり・・・とろっ・・とろろっ

身体の奥から、淫汁が溶け出てくる。

片方の乳首を、猿の親指と人差し指と中指が連携して摘み上げていた。と同時にもう片方の手は胸から離れて再び下に下がっていく。

何をされるのだろう

何をしてくれるのだろう

恐れながら期待しているかなたがそこにいた。

「そろそろ犯っちゃうけど。いいの?」

ケンタが三本の指で潤んだ肉裂を、ミチッと音をたてて開く。

かなたは自分の内部が外気に晒されて、淡い紅の鮮やかな肉色を露わにしている様を思い浮かべ、死ぬほどの羞恥を感じた。オナニーの時でも、こんなことまでした事はない。

ダメ、すごい、なんで、こんな

ぞくんと背筋が波打って、混乱の内にまたも意識が虚空に放り上げられてしまう。

にゅむむ

指で開かれた中心に、指よりはるかに極太の肉の固まりが押し当てられた。押し当てられたというより、押し広げられた膣口の中に、既に少し入っている。

とその時、ロンが突然動き出した。

ケンタの頭を横から殴りつけてかなたから引き剥がす。

「うぎっ!」

ごん!

ケンタは短い悲鳴と大きな音をたてて入口のドアの横の白いタンスに身体をぶつけた。

「んくうぅん・・・」

かなたの身体は寸前で飴を取り上げられた子供のように思わず悲しげにうねっていた。脚を閉じる事も忘れ、切なげに腰を揺らめかせる。ロンはその脚を下から掬い上げるようにして両腕に抱え、太股の間に腰を入れた。

ずぶりゅりゅりゅ

亀頭に押し開かれるのがはっきりと感じられた。処女膜が、肉のドリルに貫き通される。太い痛みが下腹部の中に突如として現れ、かなたの中心をメチャクチャに掻き回す。

「んん゛ん゛ん゛・・・!」

両手で塞いだ口の中で、くぐもった絶叫が響いた。ついに猿に犯されてしまったというショック。そこに折り重なって間段なく襲い来る、激しい痛苦。取り巻く全てがひっくり返り、かなたは何もわからなくなった。

「ねーちゃん、どうした?大丈夫か?」

いつの間にか弟のかずきが入口のドアの外の廊下にいた。ケンタの転がる音に驚いて階段を駆け上がってきていたのだ。

ロンの動きがピタリと止まる。男根は根元まで埋め込まれていた。結合部で泡立てられた処女の血が、尻の方に垂れ流れてきている。

かずきの心配そうな声に、かなたは現実に引き戻された。驚愕に凍りつき、恐怖に脅えた目で木製のドアを見詰める。

「ねーちゃん?ねーちゃん!」

ドアがドンドンと叩かれる。

早く、早く返事しないと、ヘンに思われる・・・!

かなたは口から手を外して声を押し出した。

「な、なに?」

「なんだ。返事しないから、焦ったじゃん。なんか凄い音したけど、どうしたの?」

「な、なんでもないわ。だい、じょうぶ、・・・んっ」

お腹の中で猿の物がぴくぴく動くのを感じて、危うく声を出し掛ける。

「さっきの音、なに?ねーちゃん、何しての」

「う、ホントに、なんでも、な、ないの・・・ん、」

「なんでもないって、ねーちゃん、声、苦しそうだぜ。ホントに大丈夫?」

はっとして返答に窮する。

かなたの声は熱っぽく上擦っていたのだった。目を背けていたその事実に突然気付かされ、激しい羞恥に襲われる。が、もとより言い訳考える余裕もなかった。

「ん・・・く・・ふく・・・むっ」

返す言葉もないのに、かなたの制御を離れた声ばかりが喉を突いて込み上げてくる。かなたはそれを、ただひたすら堪え続けるしかなかった。

「・・・まあいいや。なんもなけりゃあさ。んじゃ、俺ももう少ししたら寝るから」

トントンと階段を降りていく足音とともに、かずきの気配が離れていく。

「うふっ、は、あ、うくぅっっ、ん!んっ!」

かずきがいなくなった途端、ロンが再び腰の動きを再開し、かなたの中心を責め始めた。

癒着したようになっていた肉幹に膣壁をずるずると擦られ、そこから喜悦の波が押し寄せてくる。声が溢れ返り、かなたは慌てて口を閉ざした。

逃げる事はかなわないが、じっとしてもいられない。どうしていいかわからなくて、涙が溢れてきた。破瓜の痛みが快感のうねりの中で掻き消されている事にも気付かない。

「ふいー、やれやれ。危ない危ない。やっと行ってくれたかぁ」

それまで床にひっくり返ったままでじっとしていたケンタが、ゆっくりと立ち上がってかなた達に近付いてきた。

「えへへ。やっとその気になってくれた?」

ロンが、堪らない、といった表情で顔を仰向かせる。

「も、もう、ダメだ。あ、あ、お、お」

「へっ?」

ケンタにはロンの言っている事がよくわからなかったが、言葉の通じないはずのかなたにははっきりと感じられた。にっちょにっちょと淫らな音を響かせて肉汁を突く猿の男根が、今にも爆発せんばかりに切羽詰まっている事を。

それが、根元までぴったりと埋め込まれて停止する。

高まる内圧に耐え切れず、がくがくと痙攣し出していた。

「い、いや、だめぇーっ!く、はぁっ」

ぶびゅっ、びゅぶるるるっ

胎内深くで、牡の欲望が弾け出る。大量の精液。初めて受け入れた射精。それが、猿のものだなんて。猿に処女を奪われて、膣内(なか)にまで出されるなんて・・・!

かなたが今更ながら、その事実にショックを受けているその間にも、ロンの精液はどくどくと子宮にも流れ込み、かなたの子供をつくる器官に猿の子種を満たしていた。

「はッやー」とケンタ。「人間様と初めてした時って、みんな早いけど、一回も抜かない内にイッちゃったのはロンさんが初めてだよ」

「面目ない。童貞でオナニーもした事なかったから、我慢の仕方も知らないのです」

ロンが申し訳なさそうに言う。

「そっかー。それじゃ、鍛えなきゃね」

ロンが抜くと、亀頭の先端からかなたのソコに掛けて、細い精液の糸が掛かった。異様なほどの粘性である。それはかなたのその部分を陰毛ごと覆いつくし、交尾栓を形作っていた。

空気に触れるとすぐに固まり出し、女性器に栓をしてしまう。それが猿の精液なのだ。

その交尾栓を、ケンタはペリペリと剥がしながら言った。

「じゃあさ、じゃあとりあえず、舐めてもらったら?」

「いっ!」

かなたの股間に、毛を抜かれる痛みがプチプチプチッと襲いかかる。

そして痛みが引くとその入れ替わりにやってきたのは、アソコの毛を抜かれてしまったというショックだった。

もともとそんなに毛の濃い方ではなかったが、毛が根こそぎまるまるない、というのとは、まるで違う。猿に処女を奪われた後ではそれは、貞操以上の物を奪われたような気持ちにすらなるのだった。

「え?舐めてもらう?」

「ほら、早く。何を遠慮してんの?下の口に散々突っ込んだんだから、こうなったら上の口も犯して、徹底的に自分のもんにしちゃいなって」

ケンタがロンを急かす。

かなたにはそこで何が話し合われているのかはわからなかった。だが、かなたを犯した猿、ロンがベッドをギシ、ギシッ、といわせてゆっくりと上半身の方に近付いてくるのを見ると、おぞましい予感に囚われずにはいられなかった。

微かに震える獣の指に、髪と顎をぐっと捕まえられる。顔が動かないように頭を固定された。

「ほーら、見える?お姫様のせいですっかり汚れちゃってるの。初めての交尾、してあげたんだし、お礼にキレーにしてあげてよ」

ロンに代わって、ケンタが言う。ロンは再び熱く突き上げてきた欲望に、言葉を発する余裕もないようだった。

かなたの目の前に、かなた自身を凌辱した恐ろしい剛直が突き付けられている。毛の中から突き出した黒い肉の棍棒は、血の色を混じらせた白濁液にまみれ、動物に処女を奪われたかなたの無残さを殊更に思わせた。

顔を背けようとしても、顎を掴まれていてはそれもかなわない。

こんなに長い物が自分の中に入っていたんだと思うと、かなたはあらためて言いようもない恐怖を感じた。

堅く閉じられた唇に汚物まみれのそれが押し付けられる。吐き気を催すような嫌悪感。異臭。かなたは目を閉じて必死でそれを拒んだ。

だが

にゅむむっ

「くはっ」

注意の疎かになった下半身を、不意を突くようにもう一頭の猿、ケンタの男根が刺し貫いた。

下から突き上げられ、空気を押し出されるような呻き声を上げながら朱唇が開く。その唇に、ロンの汚れた肉棒が押し入ってきた。

「うぐうううっっ!むぐぐぐうぅぅうう!!」

悲鳴などではない。激しい嘔吐感による、生理的な反応だった。だが、大きな亀頭が喉の奥を蓋していて、込み上げてきたのも吐き出す事が出来ない。

かなたの小さな顔が、猿の股間に埋められ、巨大な肉塊を頬張った滑稽な形に変形させられていた。

「うぶううっ!んぶぶううぅっっ!」

汚いモノを舐めさせられる気持ちの悪さ、込み上げてくる吐き気、それを強制的に押し留められる息苦しさ。かなたは気が触れたように身体を振って身悶えし、顔を離そうとして果たし得ず、舌で押し出そうとしながら結果、いやらしい味のする肉幹を舐めまわす形になってしまった。

「お、お。す、すばらしい。かなた様の舌が、私のを!」

「なんだなんだあ。さっきまで処女だったくせに、もうチンコ舐めだしてんのお?お姫様どころか、とんだ雌犬だ、こりゃあ」

ケンタが揶揄の言葉を浴びせ掛けながら下の口を責めれば、ロンが上の口を犯しながら感嘆の呻きを洩らす。かなたは絶え間無く襲いくる嘔吐に、ただひたすら目を白黒させていた。

ロンが腰を引くと、喉元まで競り上がってきた酸っぱいものが、亀頭と喉奥の隙間からびゅるびゅると漏れ出してきて口元から溢れ出す。そこをまた元に戻して、ロンが喉奥に肉塊の栓をして止める。

腰を押し込んだり引き抜いたりする度に、黄土色の吐瀉物が、ぴゅっぴゅっと唇から跳ね飛び、かなたの新しいキャミソールと清潔なシーツを汚した。

下半身の汚れを、自分で舐めて綺麗にさせられる。一度吐いた物を、喉奥に押し込められてもう一度飲み込まされる。それは、頭が真っ白になるほどの汚辱だった。

「ふう・・・」

苦しげにのたうつかなたの中心を責めていたケンタが男根を引き抜く。ロンもそれを見て、口を犯すのを中断した。かなたの口を解放してやる。すると

「お゛え゛え゛え゛っ!う゛え゛え゛え゛っっ!!」

かなたは身体を折ってベッドの外に身体を突き出し、激しく吐き出した。絨毯を敷いた床に黄土色の汚いものが撒き散らされ、それは少女のキャミソールも汚した。

だがケンタ達にとって、そんなものは汚いものでもなんでもない。

ケンタと場所を交替したロンは、かなたがまだ苦しげに嗚咽しているのもお構いなしに組み敷いて、かなた自身の唾液と吐瀉物に塗(まみ)れたソレで再び少女の身体を貫いた。

「くひいぃぃっ!」

ずん、と脳天にまで響く快美な衝撃。我知らず、かなたは顔を仰け反らせていた。ケンタがその顔に、汚れた男根を突き付ける。

「う・・」と呻いてかなたが顔を背けようとするのを、ケンタが

「あれれ。ロン博士のばっかりしゃぶって、ボクのはしゃぶってくんないのぉ?お姫様さぁ、そりゃ、あんまりってもんじゃない?てゆーか、たかが牝犬のくせに、生意気だってーの」

と、顎に手をやって力をムリヤリ口を開かせる。

生臭い匂いと獣の長い毛が熱い体温とともに間近に迫り、気持ちの悪い肉塊がかなたの喉に押し込まれた。また、「う゛」と嘔吐感が込み上げてくる。だが、散々吐いて抵抗する気力も消失してしまったからか、先程のような激しい拒絶感はなかった。

それよりも、ケンタが細かく動く度に亀頭が喉を塞いだりするのが、ひどく息苦しくて辛い。何度も生唾を飲み込んで、その度に喉が猿の亀頭を締め付ける。

肉幹を口いっぱいに頬張った口腔内は、舌の逃げ場もなくて、血管の脈動や大きく張り出したエラが擦りつけられる度に、胎内を犯すもう一本の肉棒の形状の凶悪さを思わずにはいられなかった。



こ、こんな長くて、太いのが

今、お腹の中に、入っているんだ・・・



ズンズンと突き上げられる衝撃に耐えながら、あらためてそう思う。



お、お腹の中で

こんな風にピクピクしながら

私のアソコをぐちゃぐちゃに

・・・か、

かき回して





すごい・・・



「っんふぉ、んふぉいいい!」



ロンの突き上げに腰が弾み、ベッドがギシギシと軋る。全身に波及する官能の震えに、いつの間にか舌も男根の形を確かめるように淫らに蠢き、かなたは声を殺す事も忘れて喜悦を洩らしていた。

「おおう。いいよーぉ。お姫様、なかなかいいよー。さっきまで処女だったくせに、チンコ舐めるの、うまいじゃない」

そう言ってケンタは、自分でも細かく、出し入れしている。

自分が猿たちになんと言われて辱められているのか、躍り出ていって、教えてやりたくなってくるような光景だ。

だがすぐにその二本の肉棒が、申し合わせたように、にゅっと引き抜かれた。

「んう・・うくぅぅ・・・」

埋め込まれた物が凄まじかっただけに、それを引き抜かれた時の喪失感も大きい。かなたの呻き声はそれこそ雌犬がお預けを食ったように悲しげになった。上と下の両方の口から、淫らな涎が糸を引き、離れて行く雄の器官を惜しがっているようにすら見える。

ロンが退くと、再びケンタが下半身を貫き、ロンの方は反対にかなたの顔の方に回って、すっかり汚れた雄の器官を、少女の朱唇に突き立てる。

「うはぁぁっ、は・・・んも、ももおおぉぉ」

かなたのしなやかな身体は、二本の男根に貫かれた事を示して、激しく波打った。が、それももはや痛みや息苦しさによるものとは見えない。

「どう?憧れの人間様にチンコ咥えてもらう心地は」

「うう、さ、最高です。んむ、舌が、舌がチンコに絡み付いてくるみたいで、うお、お、こ、こんな」

「人間様っていったってさ、いやらしいのは雌猿と変わんないだろ。ほらほら。生意気なこのお口だって、ロン博士のチンコでモゴモゴしてるしー」

ケンタが下半身を突き上げながら手を伸ばし、かなたの頭を持ってグラグラ揺らした。そうやって、かなたのぬめった口腔内を、ロンの青筋立った肉棒で攪拌しているのだ。頬の裏側にロンの肉棒の形がモゴモゴと、浮かびあがったりへっこんだりしている。

「んぬ・・んむぅ、んくくっ」

「おお、おお、そ、そんな事したら・・・お、お、ダメです、ケンタ先生、いっ、良すぎて、よ・・・くうっ!」

突然激しくなった気持ち良さに、ロンは驚き慌てて頭を抱え、かといって気持ち良いだけに離れる事も出来ず、どうしていいかわからなくなって煩悶した。そうしている間にも男根を責め立てる蕩けるような快感は激しさを増し、酒を注がれている一升瓶が最後の所で一気にいっぱいになるみたいに、ロンの我慢を押し崩して一気に駆け登ってくる。

そして

「だ、ダメ・・・はうっっ!」

どぷっ

「う゛くううぅぅぅううぅっっ」

どぷどぷどぷ!どぷどぷどぷどぷどぷどぷ!!

かなたの口の中で肉棒が弾けた。その瞬間、ロンは本能的に根元まで腰を送り込んでいたので、亀頭は喉を突き、生臭い、否、それ以上に獣臭い精液は、直接喉奥に流れ込んだ。

嫌も応もなく、喉がごくごく鳴ってしまう。

とてつもなく濃い精液だった。喉を通る感触が生卵を丸呑みしたようで、飲み切れないで口の中に溢れたものが、モッツァレラチーズのよう。

口の中に出される予感を感じ取っていたかなたは息を詰めていたので、咳き込むような事はなかったものの、あまりの量の多さに飲み切れず、肉幹に塞がれた唇の隙間から白濁の唾液を漏れ出させていた。それが、異様に粘っこいものだから、一見、黄色味がかった接着剤で、唇の肉棒を咥えたまま接着されたようにも見える。

少なくとも喉の奥は完全に精液に塞がれていた。気道まで塞がれないように、かなたは「うふぅ、うふぅ」と鼻孔を膨らませ、注意深く呼吸していた。

だが、下腹部を禍々しい肉具で突かれながらでは、どうしてもその呼吸も乱れがちになる。

「ありゃりゃ。さっきイッたばっかりなのに、もう?でも、さすがに童貞だっただけあって、二回目でもすっごい量」

「ふう。それは、ケンタさんがかなた様の頭を動かしたりするから」

ずるずると力を失いつつある男根を引き抜きながら、まだ少し弾んだ声でロンは答えた。

「ん・・・」

かなたは無意識に精液まみれの唇を窄め、男根の汚れをこそげ取るようにしていた。そうしながら、引き抜かれる男根に追いすがり、付着している精液を舐め取っていく。舌で牡の性器に奉仕しているのを実感するごとに、恥辱の喜悦ともいうべき痺れがかなたの脳みそにジンジン響くのだ。

だがすぐに、自分の唇の淫らな行為に気付いてはっと我に返る。



な、なにをしてるの

私・・・



「でも、良かったでしょ」

「ええ、最高でした。先生のおかげです。ありがとうございました」

ケンタとロンはそんなかなたの狼狽をよそに、あいかわらず勝手な会話を交わしている。

ロンが退くと、ケンタは男根をしっかりと根元まで差し込み、かなたの脚を持ってベッドの上に乗り上がった。

「くあっ、は、あ、あたって、あたってるのぉ、お腹の中で、お、お猿さんの、グリグリするぅ」

かなたが口を塞がれていた恨みをここで一気に晴らそうとするかのように、感じるまま声を喘がせた。恥ずかしい事を言うと、よけいにビンビン身体が感じてしまうようだ。

ケンタは脚をベッドの縁に垂らす方向に寝かされていたかなたの身体を、ぐるっと90度回転させて、頭を窓と反対方向、部屋の奥に向けた。そして再びピストン運動を開始する。

「あ、あ、はぇ、は、おな、おなかぁ・・・あっ、あんっ、あんっ、あうんっ、おくぅ、奥までぇ、はぁぅ、うっくっ」

今まではもう一匹の猿の方に気兼ねしていたのかと思うような、凄まじい攻撃。ベッドのギシギシいう音が、そのままその激しさを伝えていた。

もし仰向けに寝ていたら、ケンタの背後に窓の外が見えただろう。そして、開けっ放しの窓から、その恥ずかしい音が思いっきり外に漏れ出ているのを目の当たりにしたかも知れない。だが今は、ケンタの毛むくじゃらの手で半屈曲位の形に脚を持ち上げられ、腰まで浮いた状態だった。なので、そっちの方向はほとんど見えなかった。それに、とてもではないが猿と自分が結合している所を直接見る事など、出来るはずもない。ただ、横を向いたら姿見が見えた。

スケスケの恥ずかしいキャミソールを着た女が、唇の周りに精液をいっぱい貼り付かせ、下半身を持ち上げられて、動物に男根を突き立てられている。

猿に犯されてあさましく喘ぐ、かなた自身の姿がそこにあった。

信じられない光景だが、子宮をズンズンついてくる衝撃が、その度にぐっちょぐっちょと響くいやらしい汁音が、鏡の中の黒い男根の出たり入ったりする様と連携して、それがまさしく現実である事をかなたに思い知らせるのだ。

断続的に腰が密着するので、そんなにはっきりと見える訳ではない。それでもぬらぬら照り映えている猿の銃身が、ちらちら見え隠れしているのを見ると、責められているその部分がびくびくしてしまう。なにしろ、その見えない部分でガシガシ肉槍を突き立てられ、ずりずり擦り立てられているのを、今まさにかなた自身が感じているのだ。

「ひっ、ひぐ、あぅ、あぅ、だ、だめっ、おさ、おさ、るさん、の、が、ん、ぐ、す、すごぃ、すごいのぉ」

声を抑える事なんか、もう、出来なかった。否、抑える事など、もはや頭になかった。突き上げられる度に断続的に途絶える喘ぎが、感極まって涙声になっている。

「くうっ、この雌、なんだか、知らないけど、鏡で、自分の、犯されるトコみて、凄い、締め付けだしたぞ!つう」

感に耐えないといった様子でケンタがかなたの膣壁の変化を訴える。

「ロン博士、こいつ、お姫様どころか、とんでもない、変態みたい。そんなに、いいの?それじゃあ、もっと、よく見せてあげるよ」

そう言ってケンタは、かなたの首をがっしり掴み、前を向かせた。真ん前に、欲望に猛った醜い猿。その顔の横に、かなたのすらりとのびた脚が、今は猿の肩にもたせかけるようにしてあった。

そのわずか下に、腰を持ち上げられた、かなた自身の股間。そしてその中心を貫いているのは、思っていた以上に醜怪な、猿の男根であった。

「はひぃっ、いひぃぃ、こ、こんな、こんなのっ」

息を弾ませながら絶句する。

血管の浮いた猿の逞しすぎるほどの男根もさる事ながら、それが出入りするたびに盛り上がる、己が肉裂の土手の淫靡さはどうだろう。いかにも牡の器官を腹いっぱいに頬張っているように盛り上がり、あまつさえてらてら濡れ光っているのが、浅ましく涎を垂れ流しているようだ。結合部の縁を飾る肉襞は、突き込まれれば巻き込まれ、引き抜かれればめくれかえり、見ているだけで堪らなくなる光景だった。

そしてまたそれは実際にその通りなのだ。否、それ以上に堪らない衝撃なのだった。肉幹に絡みついては擦り潰されているのがはっきりと感じられ、意識が遠のくほどに心地良い。

だがその瞬間、かなたを再び現実に引き戻す、何かが目に映った。

何かの恥ずかしい機械のように上がり下がりする牡猿の股間と、その攻撃を喜悦とともに受け止めてかすかに震え始めているかなたの股間の間に、断続的に小さな空間が出来る。その空間の向こうに、開けっ放しの窓が見えた。

四角く切り取られた夜の闇。その暗い背景を背にして、縁に隠れるようにして覗き込む人影。―――――かずきだった。

「いやあああぁぁぁぁ!!」

淫らな快楽に負けて声を放っている所を見られたという羞恥、恥ずかしさ。それも猿に犯されてヨガっている所を。実の弟に。見物されて。情欲の的にされて。

さっき見た鏡の中の自分の無様な姿がフラッシュバックのように脳裏に浮かぶ。否、それどころか、今目の前に見えている、出たり入ったりしている所までがはっきりと見られているのだ。

絶叫とともに膣がキュウッっと収縮する。そこを、遠慮会釈のない獣の男根が突きまくる。

「うおっ、お、ど、どうしたん。す、すごい、し、締め付けて」

根元まで突き込まれた男根の、その凶悪な形が脈動とともに膨れ上がるのまで、はっきりとわかった。

「ああ゛っ!く、くるっっ・・・!!」

身構えた。

どびゅっ、びゅぶぶぶぶぶ

子宮に直接、大量の精液を流し込まれる重い衝撃に、かなたは一気に駆け登った。

「あいいいぃぃっ、・・・・い!・・・いぃっ!・・・んくううぅぅぅっ!!」

悲鳴とともに、腰ががくがく痙攣し出し、その波が瞬く間に全身に波及する。まるで癲癇の発作を見るようだ。

ぶりゅりゅりゅりゅ。びゅりゅつ

「あがあああっ!!おああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

いつまでも続くかと思うような長い絶頂の震えに、声までが振動していた。収まろうにも、ケンタの射精が後から後から続くから、かなたの方も収まりようがないのだ。粘度の高い精液が溢れかえって膣壁を拡充し、逆流する。

こうして、猿の子種を最後の一滴まで全て注ぎ込まれ、その間かなたはずっとイキっぱなしだった。

何も見ていない目に涙を溢れさせて。

ケンタが思いのたけを出し切って

「ふう」

と一息ついて性器を引き抜き始めた時、少女の意識はすでに飛び、事切れたようになっていた。



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