第4章


桟橋には、外洋航海用の大型クルーザーが係留されていた。

すでに撮影機材や、無人島での野宿の為のテント、食料等も積み込まれ、いつでも出航できる状態になっていた。

午前10時頃、高級外車が止まり一人の男が降りてきた。

車から降り立った男は本村であった。

本村興業会長 本村基弘、一代で財を成した男である。

乗船クルー達が、桟橋に並んで本村を出迎えた。

「私達も並んだ方が良いですかねぇ」

田中が小山に聞いた。

「ん、別に俺達は普段通りで良いよ。」

小山は煙草の煙を吐きながら答えた。

本村が乗船して来た。

「お早うございます。」

小山が本村に挨拶した。

「よう、どうだい、このクルーザーは良いだろう。」

本村が片手を上げて自慢気に言った。

「俺のアパートより良いですよ。」

小山が答えた。

「ハハハハッ。」

本村が笑った。

「我々のスタッフを紹介します。」

「こいつが、助監督の田中、そして、カメラの加藤と大竹、それから音声の・・・・・・・・・・」

「そして、遠藤与志子さんです。」

小山がスタッフ全員を紹介した。

与志子は小山の後ろに隠れていた。

白いブラウスの上に水色のセーター、黒いミニスカートという服装であった。

与志子は栄子に(少しお金を稼いでからそちらに向かいます)とメールで連絡していた。

「おお、君が猿道好子君か、実物の方が綺麗だねぇ。」

本村が眼を輝かせて言った。

「本村さん、始めまして、私が彼女をスカウトした西山です。」

西山は、ちゃっかり自分を売り込んでいた。

「おお、君がスカウトをねぇ。」

本村は西山の方を見た。

与志子が、小山の袖を2回ほど引っ張り小声で言った。

「なんで、あんな奴が居るの?」

「いや、君を探すのに奴にも協力を願ったのさ、そしたら自分も参加させてくれって言うから・・・」

「まさか、君が奴を嫌っているとは知らなかったんだよ。」

小山も小声で答えた。

与志子は機嫌を悪くした。

「よーし、出港だ。」

本村はクルー達に告げた。

クルーザーはゆっくりと動き出し、桟橋を離れた。

「キャビンを案内しよう。」

十数分程デッキの上で雑談し終えると、本村が歩き出した。

「ここが、リビングだ。」

本村が皆を招き入れた。

「おおーっ。」

ホテル並みの部屋を見て皆が声を上げた。

「今は便利なもので、海の上でもテレビが見られるようになったわい。」

本村が指差した先には大きな液晶テレビがあった。

「上が操舵室。」

本村が天井を指差して言った。

突き当たりに幅の狭い階段があり、そこを降りると寝室やシャワー室、調理室などがある。

「そして、ここが主寝室、そして、こちら側がゲストルームだ。」

「好子さんは、このゲストルームを遠慮なしに使ってくれ。」

本村が言った。

「ありがとうございます。」

与志子が礼を言った。

「ここがシャワールームだ、水の使用量は制限されるが、とても快適だぞ。」

本村がドアを開けて見せた。

「ところで、彼は何処なの」

与志子が本村に聞いた。

与志子は今回の撮影で一つだけ気楽な事があった。

ここに居る周りの者は皆、自分が「番い」の女優だということを知っている者ばかりであった。

だから、恥かしがる事なくオスカーと一緒に居られるという事だ。

「あの猿は、艫の貨物室に繋いである。」

本村が何気ない顔をして言った。

「そこへ、案内してくださる」

与志子は猿という呼び方に少しムッとした口調で言った。

本村は渋い顔をして渋々案内した。

「ここだよ。」

と言って、本村はドアを開けた。

オスカーは、紐で繋がれ元気なく部屋の隅でうずくまっていた。

与志子はそんなオスカーを見ると、慌てて駆け寄った。

「ああ、かわいそうに。」

与志子はオスカーの頬を愛しそうに撫でた。

オスカーも与志子だと気付くと、オウッ、オウッと嬉しそうに啼き与志子を抱き寄せた。

「彼は縛る必要なんてないのよ」

と言って、首輪を外した。

「与志子さんは、このオランウータンの事を知っているみたいだけど・・・」

小山は不思議そうな顔をして聞いた。

「・・・・・」

「この子の名前は・・オスカー」

与志子はオスカーの顔を撫でながら言った。

「それよりも、どうしてこの子がここに居るの?」

「訳を教えて!」

与志子は本村を見た。

本村は諦め顔で話し始めた。

「・・・もうここまで来たから話しても良かろう」

皆が本村に注目した。

「小山君も知ってのとおり、あの女園長どうしても首を立てに振らん、それで動物商と組んで密輸したんだ。」

皆がシラッとした顔で本村を見た。

「やっぱり、そんな事だと思っていましたよ。」

「本村さん、自分がしたことが、どんな大きな罪か解っているのか。」

小山が少し声を荒げて言った。

「解っておる。」

「しかし、船は陸を離れてしまったぞ。」

「撮影を降りる奴は泳いで帰ってくれ。」

本村は強い口調で言い放った。

「小山、マグロ船に乗っていた経験のあるお前なら解るよな。」

「いくら救命具を着けて漂流していても助けられる確率の低さを・・・。」

本村は小山を睨みニヤッと笑った。

「・・・・・・。」

小山は黙っていた。

小山は知っていた。大海原を漂流して助かる見込みの無い事を。

「まあ、まあ、ここまで来たからには、やるしかないでしょう。」

「か・ん・と・く」

西山が割って入った。

「ところで、何でこのエテ公を知っているんだい?」

西山が振り向いて与志子に言った。

「あなた達には関係ないわ」

「悪いけど、私達だけにして」

西山が次の事を聞こうとするのを静止して与志子が言った。

与志子の険しい顔を見て、皆がそろそろと部屋を出て行く。

「愛しい彼と会えて良かったですな」

本村は意地悪そうに言った。

与志子はキッと本村を睨み付けた。

「はいはい、ごゆっくり」

本村はドアを閉めた。


「ああっ、オスカーどうして此処に?」

与志子とオスカーは見詰め合っていた。

オスカーがゆっくり与志子の乳房に手を伸ばして揉み始めた。

「・・・・・」

触った感触が違うので不思議そうな顔をした。

「どうしたの?」

与志子も最初は解らなかったが、少し間をおいて解った。

「あ〜っ、ブラジャーを着けているからね」

「でも、ここじゃイヤよ、もう少し我慢して」

与志子はオスカーの首に腕を巻きつけ唇を吸った。

柔らかな唇の感触が久しぶりであった。

お互いに舌を絡め合い、唾液を吸った。

そして、唾液の糸を引きながら唇が離れ、与志子はオスカーの胸に顔を埋めた。

「ああ、逢いたかったわ」

「それと、ごめんなさい。」

「あなたがこんな扱いを受けていたなんて・・・」

オスカーが与志子を両腕で抱き締めた。


昼食後、キャビンでは皆がゆっくりと寛いでいた。

本村がこのクルーザーで、釣り仲間達とよく小笠原諸島辺りへ、トローリングに出掛けるので、話はもっぱら本村の釣り自慢ばかりであった。

「目的の島まで何時間くらいです?」

田中が本村に聞いた。

「う〜ん、そうだな、大体このクルーザーで父島まで20時間くらいだ、そこから2時間くらいかな」

「おがさわら丸だと父島まで24〜5時間かかるのだぞ」

本村が答えた。

「じゃ、随分こちらの方が速いんですね」

カメラの加藤が言った。

「全速ならもっと速いぞ」

本村が自慢気に言った。

(やれやれ、22時間もこのおっさんの自慢を聞かされなきゃならんのか)小山はうんざりした顔をした。

「このクルーザーには、専属のコックが乗船しているからの、今日は前祝にご馳走するぞ」

本村はニコニコして言った。

本村が小山の所に来て、小声で言った。

「俺も、悪い事とは解っていたが、どうしてもパート2が撮りたかったのじゃ」

「勘弁してくれ」

小山は呆れ顔で本村を見た。

「ところで、小山君、猿道好子いい女じゃのう」

「美人でスタイルも良いし、あの猿にはもったいないのう」

本村はニヤニヤと笑いながら言った。

「ええ、まあね」

小山が答えた。

「そこで、今晩辺りわしの相手を出来んかのう?」

「所詮、金で何とでもなる女なんだろう?」

小山の耳元で本村がささやいた。

「そう云う事は、俺は苦手だから、会長自ら口説いたらどうです。」

小山が言った。

(このスケベ親父が)小山は困惑した。

「う〜ん、そうか」

本村は唸った。

与志子が少し心配そうな顔をして、キャビンに入って来て小山に言った。

「ねえ、彼の様子が少しおかしいのよ」

与志子が心配そうに言った。

「ちょっと看て見ようか」

小山は立ち上がり、貨物室へ向かった。

貨物室に入るとオスカーがグッタリと横になっていた。

与志子と小山は顔を見合わせた。

「獣医じゃないから解らないが、もしかしたら船酔いかもしれないよ」

「でも、吐いた後が無いしな?・・・」

「明日、父島で燃料を補給するから、その時に獣医が居たら診せよう」

小山は言った。

「獣医が居なかったら?」

与志子が心細そうに言った。

「その時は、人間の医者に診てもらうサ」

小山が答えた。

「それでも良くならなかったら?」

与志子は尚も聞いた。

「う〜ん、しばらく様子を見て、それでもダメなら中止だな。」

小山は答えた。

オスカーは引取られてから、ズッと檻の中での生活の疲れが溜まっていた。

オスカーは与志子の顔を見て安心して、溜まっていた疲れがドッと出たのであった。

「オスカー、頑張るんだぞ」

小山はオスカーの掌を摩りながら励ました。

オスカーは虚ろな目で小山を見ている。

与志子は小山のオスカーに接する姿を見て思った。

(この人は、他の皆とは違うみたいだわ)

「小山さんは動物好きなの」

与志子が聞いた。

「ああ、まあな、子供の頃は田舎でずっと犬を飼っていたんだ。」

小山が答えた。

「動物と接する時は怖がっちゃいけないんだよ」

小山が答えた。

「私、心配だからここで寝るわ」

与志子は言った。

「エッ、ここで」

小山は驚いた。

「だって心配だわ」

与志子が言い返した

「う〜ん、そうだな。」

「どうせ上に居ても、君も嫌だろうからな、・・・食事が出来たら呼ぶよ」

小山が言った。

「小山さん、ありがとう」

与志子は小山が部屋から出る時に言った。


夕食の準備が整ったので、田中が与志子を呼びに部屋に入ってきた。

「与志子さん、夕食ですよ」

「どうです、オスカーの容態は」

田中が部屋に入って来て言った。

「あまり変らないです」

与志子が答えた。

「うーん、この様子じゃ餌も食べそうにないですね」

「僕の家の犬も、体の調子が悪い時は、餌も食べずにジッとして体力が回復するのを待つんですよ」

「だから今、オスカーは体力の回復を待っているんじゃないですかね」

田中が言った。

「そうなら良いけど」

与志子は心配そうに言った。

「オスカー、早く元気になれよ」

と言って、田中はオスカーの肩を摩った。

「田中さん、彼が怖くないの」

与志子が聞いた。

「ええ、大人しい事は解りましたから」

田中はオスカーを撫でながら答えた。

与志子は思った。

(小山と田中は、信頼できる人達だと)

「さあ、与志子さん、食事に行きましょう」

田中が誘った。

「ええ」

与志子は心配そうにオスカーを見た。

「お昼も、あまり食べなかったでしょ」

「食べないと、貴女までおかしくなっちゃいますよ」

田中は与志子を急かす様に言った。

与志子はオスカーの方を何度も振り返りながら、田中に急かされる様に部屋を出た。

リビングに行くと、皆はすでに食事を始めていた。

「やあ、与志子さん先に始めさせて貰いましたよ。」

小山が言った。

「ええ、構いませんわ」

与志子は小山の隣に座った。

「どうかね、一杯」

本村はワインを与志子に勧めた。

「いえ、結構です。私、飲めないの」

与志子は断った。

「まあ、そう言わずに一杯」

本村が尚も進めた。

与志子がチラッと小山を見た。

「一口くらい飲んだ方が、リラックス出来ますよ」

小山が言った。

「そう、じゃ、少しだけ」

与志子がグラスを差し出した。

「ハハハッ、そう来なくっちゃ」

本村は機嫌良さそうにワインを注いだ。

「ところで、あの猿の具合はどうかね」

「猿のくせに一人前に具合なんぞ悪くなりおって」

本村が言った。

「本当に役に立たないエテ公ですねぇ、会長」

西山が本村にワインを注ぎながら言った。

与志子の顔色が変ったので、小山が与志子の手を握った。

与志子は小山を見詰めた。

「本村さんそんな言い方はないでしょう。」

「大体今日まで、オスカーをあんな檻に閉じ込めておけば具合もなりますよ」

小山が反論した。

「ああ、解った、解った、猿一匹の為にもめるのも馬鹿ばかしいわい」

「さあ、皆、気分治しに飲んだ、飲んだ。」

本村が言った。


本村は酔いが回ったのか、饒舌になり釣り自慢を延々と語った。

与志子が食事を半分ぐらい残して席を立とうとしたのを小山が止めた。

「与志子さん心配なのは解る、でも、食べないと君が病気になるぞ」

「さあ、あと少し、食べなさい」

小山が与志子に言った。

「解ったわ」

与志子は食べ始めた。

相変わらず本村が釣りの自慢話を続けている。

与志子が食事を食べ終わると、小山が気を利かせて言った。

「さあ、オスカーが心配だろうから、行った方が良いよ」

「そうさせて頂くわ」

与志子は席を立った。

「サンキュー」

小山の耳元でささやいた。

小山も、本村の釣り自慢にはウンザリしていたのである。


二時間後、小山は毛布とリンゴを一つ持って貨物室のドアをノックして開けた。

白熱電球一つの明かりの下に与志子とオスカーは居た。

「いや、参ったよ、あのおっさんには、あれから今まで延々と釣り談義だぜ。」

小山があきれた顔をして言った。

「ごくろうさま」

与志子が微笑んだ

「どう、具合は?」

小山が聞いた。

「随分良くなったみたいよ」

与志子がオスカーを見て言った。

「そう、良かったな。」

眠そうな眼をしてオスカーも起き上がっていた。

「これ、君に」

と言って、小山は与志子に毛布を渡した。

「それとオスカーに食欲があったらこれを」

リンゴを手渡した。

「ありがとう」

与志子は言った。

「俺がオスカーを見ているから、君はシャワーでも浴びてさっぱりして来たらどうだい」

小山は指をシャワー室の方へ向けて言った。

「でも、・・・」

オスカーを見ながら与志子は言った。

「いいから,行ってこいよ」

小山が言った。

「じゃ、少しの間お願いね」

与志子は立ち上がり着替えをゲストルームへ取りに行った。

シャワー室のドアを開けると、畳半分程の脱衣場があり、与志子は衣服を脱いでシャワールームへ入った。

与志子がシャワーを浴び始めると、シャワー室のドアが開き、男が今脱いだばかりの与志子の下着を手にした。

与志子はシャワー室の入り口のドアをロックするのを忘れていたのであった。

シャワールームの扉は擦りガラスの為、与志子の裸体がぼやけてはいるが、

与志子の下半身からキュウと細くなった腰のラインは良く判った。

(本当にいい体をしてやがる)

男が手にした下着には、まだ与志子の肌の温もりが残っている。

男は下着に顔を埋める様にして匂いを嗅いだ。

男の股間がピンとくる妖しく甘い匂いだった。

男が薄いピンクのパンティをひっくり返して見ると、薄い黄色いシミがあった。

そこに今まで、与志子の媚裂が密着していたところである。

男は、鼻を押し付けて匂いを嗅ぎ、唇を押し付けて舐めた。

与志子がシャワーを終えそうなので、男は、パンティとブラジャーをポケットに入れて素早く立ち去った。

与志子は着替えを終えて初めて自分の下着が無くなっている事に気付いた。

(下着が無くなっている・・・・誰?私の下着を盗んだの)

(私がシャワーを浴びるのを知っていたのは・・・・・まさか・・小山さん?)

「どうだ、オスカー、食べられるか?」

小山はオスカーにリンゴを手渡した。

オスカーはクンクンとリンゴの匂いを嗅いで一口かじった。

旨いと思ったのか、綺麗に全部食べてしまった。

与志子が浮かぬ顔をして、部屋に入ってきた。

「どうかしたのかい」

浮かぬ顔をしている与志子を見て小山が言った。

「いえ、別に」

与志子は下を向いて答えた。

(まさか、小山さんじゃないわよね)与志子は心の中で小山ではないと信じたかった。

「オスカーがリンゴを食べたよ」

小山は親指を立ててオスカーの方を指した。

「本当?食べる気になったんだぁ」

与志子はホッとした顔をした。

「明日の朝に餌を与えてみようか」

「食べればもう大丈夫だと思うよ」

小山は与志子の顔を見た。

「さあ、もうそろそろ俺は寝るよ」

小山が立った。

「ありがとう、お休みなさい」

与志子は微笑んだ。


翌早朝、小山達スタッフは、リビングで寛いでいた。

「おはようございます」

与志子がリビングに入ってきた。

「おはようございます」

大竹が挨拶をし、他の者達は軽く会釈をした。

「随分暖かいわね」

与志子はセーターを腰に巻き、上着はブラウスだけであった。

「もう直ぐ、父島だよ。」

「小笠原諸島は一月から海で泳げるんだよ」

小山が言った。

「道理で暖かいはずね」

与志子は窓の外に広がる海原を見た。

「オスカーはどうしたの?」

加藤が聞いた。

「いま、田中さんが餌を食べさせてくれているの」

与志子が振り向いて答えた。

「食べたかい?」

小山が聞いた。

「お腹が空いていたのね、すっごくよく食べてるわ」

与志子が安心した顔をして言った。

「じゃ、もう、医者には見せなくてもいいな」

小山が言った。

「ええ、多分良いと思うわ」

与志子が答えた。

田中がオスカーを連れて、リビングへやって来た。

「随分元気になったでしょう」

田中が言った。

「おう、見違えるほどじゃないか」

小山がオスカーの傍に寄り言った。

「いまから、少し外の空気を吸わせてやろうと思ってね」

田中がオスカーの手を引いて、キャビンの外へ出て行った。

皆も、つられて外へ出た。

キャビンの外で見る海は、見渡す限りの水平線で海の広さを改めて思い知らされた。

「なぜ、ここへ猿を連れてきたんだ」

振り返ると、本村が立っていた。

「ちょっと、外の空気を吸わせてやりたくて」

田中が答えた。

「もう直ぐ朝食だ、猿を元の所へ連れて行くんだ」

本村が面白くなさそうに言った。

「早朝からエテ公の顔を見ると気分が悪いですねぇ、会長」

西山が本村に媚びる様に言った。

「悪いな、オスカー」

田中はしぶしぶとオスカーを連れて、貨物室へ行った。

「まあ、そんなに目くじらを立てなくても」

「オスカーもやっと体調が良くなったんだから、外の空気ぐらい吸わせてやらないと」

小山が本村に言った。

「不愉快だ」

本村がくるりと背を向けてキャビンの中へ入った。

「あんたって、最低の男ね」

与志子は西山とすれ違い際に言った。

朝食を済ませた頃、父島が直ぐ近くに見えてきた。

「このくらいの船なら、燃料補給しなくても中ノ島まで行けないのですか」

大竹が本村に聞いた。

「行けるサ、目的は燃料じゃない。」

「食料を注文しておくんだ、これだけの人数の食料をひと月分も積めないからな」

「そのついでに、水と燃料も補給するのサ」

本村が言った。


水と燃料を補給すると直ぐにクルーザーは中ノ島へ向けて出港した。

父島を出港して二時間が過ぎた頃、中ノ島が目前に見えてきた。

「あれが中ノ島だ」

「今では渡り鳥だけが生息する絶海の孤島だ」

本村が皆に言った。

「予想していたより大きな島だな」

小山が驚いたように言った。

中ノ島は直線で4km四方くらいの島であった。

20年程前までは、50戸程の集落が有り、人が住んでいた島である。

「島の西側に山が有るだろう、剣山と言ってその大昔は火山だったんだよ」

「今はその火口に水が溜まり、火山湖になっているそうだ」

「火山湖の水が湧き水となって、集落の近くに水源池があると聞いた事がある」

本村が皆に教えた。

「あの剣山の高さは、どのくらいでしょうね」

加藤が聞いた。

「う〜ん、海抜80mくらいじゃないか」

本村が答えた。

クルーザーは島をぐるりと回り、小さく窪んだ入り江にゆっくりと侵入した。

随分と痛んではいるが、コンクリート製の桟橋にクルーザーを着けた。

クルー達が素早く桟橋に飛び移り、ロープでクルーザーを固定した。

「機材を降ろすのは後にして、先ずは島を見て回ろうか」

小山が皆に言った。

「そうですね、撮影場所を探したいですしね」

田中が言った。


小山達はクルーザーを降り、桟橋に立った。

桟橋の向こうに朽ちかけた家々を覆うように亜熱帯植物が茂っていた。

皆は歩き始めた。

与志子はオスカーの手を引いて最後尾で皆について歩き出した。

「どの家も屋根に貯水タンクが乗っているのを見ると、つくづく水の大切さがわかるな」

「人が居ないとこんなにも家は傷む物なんだぁ」

小山が驚くように言った。

「でも、この家なんかまだ、丈夫そうですよ」

田中が一軒の家を指差した。

木製のテラスがあり、荒廃していても他の家とは明らかに造りが違っていた。

「どうせ会長さんのような金持ちが別荘のつもりで建てたんじゃないのか」

小山が本村を見て言った。

「釣り好きなら、ここら辺に一軒有っても良いわな」

本村が家を見上げて言った。

「中を調べて見ます?」

大竹が家に向かって歩み出した。

雑草を掻き分け前に進むとバサバサバサッと何か白い生き物が目の前を横切った。

「ヒエッ」

大竹は驚いて尻餅をついた。

鶏が飛び出してきたのであった。

皆は大竹を見て大笑いした。

加藤が笑いながら雑草を掻き分けて覗き込むと、三十数羽の鶏が群れていた。

「島民が置き去りにしていった鶏が自然繁殖したようだな」

本村が言った。

「これで毎日新鮮な卵が食べられるな」

小山が言った。

「家の中に入ってみますか?」

田中が言った。

「いや、後にしよう」

小山が止めた。

家々を横目に膝から腰の高さまでの草が生い茂った、昔の道らしき道を進むと砂浜があった。

「あら、素敵なビーチね」

後から付いて来た与志子が言った。

「当分の間、風呂には入れないから、ここで海水浴でもして汚れを落とすか」

小山が言った。

「白い砂浜を汚さないようにね」

与志子が笑って言った。

小山達は尚も草が生い茂った道を進むと、道の脇に大きな石臼のような物が置いてあった。

そして、岩の上の方から水道の蛇口をいっぱいに開けたくらいの水量の水が流れ落ちていた。

「火山湖の水が湧き出ているんだな」

小山は剣山の山頂を見上げた。

石を削った水の溜め場から水が溢れていた。

「もしかして、ここが水源?」

加藤が唖然とした顔をした。

小山が流れ落ちる水を掌で受けて飲んでみた。

「うん、冷たくて旨い。」

「井戸水みたいだ」

小山が言った。

「まあ、これだけ流れていれば、飲み水と食事の支度はできるだろう」

小山が言った。

「それと、海から上がった後のシャワー代わりにもなりますしね」

大竹が言った。

「もう少し、先へ行ってみましょう」

田中が進みだした。

道は緩い上り坂になっていて、道の両端が昔は畑であったのだろう。

マンゴーとか、バナナ等の熱帯性果実の木が群生していた。

畑といっても20年も放置されているので木々の下草が腰の高さくらいまで伸びていた。

「いろんな果実の木が生えているなぁ」

大竹が見回しながら言った。

「美味しそうね」

与志子が畑の中に入って熟したマンゴーの実を採ってみた。

「どう、食べる?」

与志子はオスカーに採ったマンゴーを手渡した。

「島の人達は半農半漁の生活で、畑でいろんな果実の栽培をしていたと聞いたなぁ」

本村が思い出した。

「栽培していた果実の木が自然と増えてしまったのであろう」

「そう云えば、小さいが学校の分校も有ったと聞いたな」

「もう少し先へ行ってみよう」

本村が言った。

皆が先へと歩き出しても、与志子はオスカーがマンゴーを食べ終わるのを待っていた。


「どう、美味しい?」

と与志子は、オスカーの顔を覗き込んだ。

オスカーは食べていたマンゴーを捨てると与志子の腕を掴み、畑の奥へとグイグイと引っ張って行った。

「ちょっと、何処行くのよ」

オスカーは急いでいるのかスピードを上げた。

「ちょっと待ってよ」

与志子は雑草が足に絡み、前のめりに倒れそうになって手を付いてしまった。

ちょうど四つん這いの格好に倒れてしまった。

それを見たオスカーは与志子の髪の毛を掴み、奥へと引っ張っていく。

「痛い、痛い、イタタタッ」

与志子は四つん這いになりながらオスカーの後に必死でついて行く。

バナナの木の横で、やっとオスカーは与志子の髪の毛から手を離した。

「ちょっとぉ、痛いじゃない。」

怒りながら顔を上げた与志子の目の前に、

猛々しく隆々と天を向くオスカーの肉棒があった。

オスカーは与志子の後ろに回って腰を掴み、勃起した肉棒を与志子のお尻に押し付けた。

興奮して唸り声を上げながら硬直した肉棒を与志子のお尻に押し付けた。


緩い坂を上りきった所に平らな広場があった。

今は腰までの高さにまで生い茂った草原は、昔は運動場であったに違いない。

広場の隅に荒廃してはいるがコンクリート製の分校らしき建物もあった。

広場の向こうは木々が被い茂った森になっていた。

「テントを張るなら、ここしか無さそうですね」

「それか、あの分校の中を調べて見ますか」

大竹が言った。

「あとは、先程の民家を調べて使えそうならそちらにするかでしょうね」

田中が言った。

「ここなら平らだし、それにクルーザーにも近いですからね」

加藤が言った。

「どうです、会長」

小山が本村の意見を聞いた。

「一度あの分校を覗いて見ようじゃないか」

本村が言った。

1、2ヶ所のガラス窓はおそらく台風で割れてしまったのであろう、室内に破片が飛び散っていた。

入り口の扉も壊れて建物の中に倒れていた。

「まあ、ガラスの破片を掃除して、少し手入れすれば使えそうですね」

田中が言った。

「うん、まあ、ここで良かろう」

小山が言った。

「ちょっと待ってくれ、実はワシはまだテントで寝た事が無いのだよ」

「だから、一度でいいからテントで寝てみたいのだよ」

本村が恥かしそうに言った。

「分りました。」

「じゃ、この周りの草を踏み固めようか」

小山が言った。

「悪いな、子供みたいなことを言って」

本村が言った。

「別に気にしなくていいですよ」

小山が笑っていた。

「終わったら、昼食にでもするか」

本村が言った。

「じゃ、始めるぞ」

と小山が言って、皆で腰の高さくらいまで伸びた雑草を踏み始めた。


「ちょ、ちょっと待って」

与志子は膝立ちになり、急いでパンティを下げようとする。

しかし、交尾に飢えたオスカーが与志子の腰を掴んだまま肉棒を押し付けてくるので思うようにパンティが脱げない。

オスカーが少し苛立ち、ガウーッと唸り声を上げた。

「ああ、ごめんなさい、もう少し待って」

やっと、与志子はパンティを膝まで下げて四つん這いの姿勢をとった。

与志子はスカートを腰まで捲り上げて、手にべっとりと自分の唾液を付けて媚裂に馴染ませた。

シミ1つ無いムチッと張った与志子の双臀が木漏れ日に妖しく映えた。

大きく左右に開いた与志子の両脚の間にオスカーが位置を確かめるように二度、三度と

肉棒の先端をこすり付けてから、肉棒を押し入れた。

「ツッ、」

媚裂がまだ潤っていない為、肉棒が分け入ってくる時に軽い擦れる様な痛みがあった。

その感覚が与志子はオスカーに串刺しにされた事を実感した。

もう待ち切れなかった衝動を一気に爆発させるように、オスカーは小刻みに素早く腰を振っている。

与志子の女芯にオスカーの睾丸が小刻みにぶつかって刺激するので与志子も徐々に感じ始めてきた。

「う・・む・・」

与志子がうめいた。

与志子が右に左に頭を動かし始めた。

腰の辺りもブルッ、ブルルッと震えている。

与志子の媚裂は潤いを増し、柔らかくとろけかけた内襞をオスカーの肉棒が内へ巻き込む様に押し入ってくる。

「う、うう・・オスカー・・・ハァッ」

与志子は内襞でオスカーの肉棒をしっかりと感じ取っていた。

納まるべき本当の主を納めた媚裂はグイグイとオスカーの肉棒を締め上げる。

スマトラで与志子を貫いた肉棒の感触を十分堪能しようと肢体が目覚め始めていた。

熱くなった内襞がオスカーが腰を動かす度にヒクリ、ヒクリとひきつれる様に蠢く。

オスカーの与志子を突き上げる腰の動きが、しだいに大胆なってきた。

後背位での体位の為、より深くオスカーの肉棒は与志子を貫いた。

オスカーが力強く腰を打ち付けると、肉棒の先端がズシッという感じで子宮口に達し、繋がりがいっそう深みを増した。

「ひいッ・・・」

深く押し入ってくる肉棒が子宮を押し上げる感覚に与志子はのけぞる様にして、眼を開いた。

「あ、オスカー・・・」

頭をグラグラさせつつ、与志子は喘いだ。

唇を半開きにして喘ぐ表情がもう牝の顔になっていた。

オスカーは絶頂が近いのか、肉棒が硬度を増して荒々しく腰を押し込むように思いっきり打ちつけ始めた。

(え、・・・もう・・)与志子は思った。

オスカーは最後の一突きを与えると、快美の唸り声を上げておびただしい精をドッと心ゆくまで放っていた。

「ああッ・・」

与志子は激しくのけぞりながら、子宮口に灼けるようなドロリとした液体を感じ取った。

(ああ、可愛そうに、こんなに溜まっていたのね。)

(だから、いつもより早いのね)

オスカーは与志子の双臀に腰を押し付けドクッ、ドクッと精を注ぎ込んでいる。

「ああ、まだ出るの」

与志子はあまりの多さに後を振り向きオスカーを見た。

オスカーは目を細めて至幸の顔をしていた。

オスカーは与志子が帰国して以来、交尾をしていなかったのである。

(ああッ、あなたの愛液を全部受け入れる事が出来るかしら)与志子はあまりの多さに心配になった。

オスカーは精を注ぎ終えると与志子から離れた。

与志子は肉棒が引き抜かれると、一滴も逃すまいと顔を伏せて双臀を高く掲げ、媚裂が真上を向くような姿勢を取った。

それでも、オスカーの獣液はゴポッと媚裂から溢れた。

媚裂から溢れてもドロリとした獣液はそこから零れ落ちる事はなかった。

暫くしてから与志子は獣液が固まり膣栓が出来たのを確認して、尻餅をつく体勢に変えた。

「溜まっていたから、早かったわね」

「でも、あなたは満足でしょうけど、私はまだ中途半端だわ」

与志子が笑って言った。

与志子は久しぶりのオスカーの肉棒の感触をもっと楽しみたかったのである。

オスカーが与志子の傍に来て、唇を吸った。

与志子はオスカーの首に腕を巻きつけ、舌を絡めた。


「ふーっ、意外と重労働だったな」

小山達はぐるりと周りの雑草を踏み固め終えた。

「この広さならテント7張りは張れるでしょう」

田中が言った。

「あれ、オスカーと与志子さんが居ないな」

加藤が言った。

「そういえば、畑の所で見て以来それから見ていないな」

大竹が言った。

「う〜ん、取りあえず昼飯にして、捜しながらクルーザーまで行こう」

小山が言った。


与志子はパンティを穿き直して、立ち上がった。

「でも、本当に沢山出たわね、お腹が張ったような感じがするわ」

与志子が下腹部を摩った。

「さあ、皆の所へ行きましょ」

と言ってオスカーと手を繋いで歩き出した。

途中、よく熟れたマンゴーとか、名前は分らないが赤くて丸い果実を枝からもぎ取りオスカーに持たせた。

畑から出た与志子とオスカーは、水が湧き出ていた所へ行き、石を削って作った水の溜め場へ果実を入れた。

「こうして冷やした方がもっと美味しいのよ」

与志子が言った。

与志子も掌に水を取り飲んでみた。

「ああ、美味しい」

「ほら,あなたも飲んでみたら」

与志子はオスカーに言った。

オスカーは溜まっている水に直接口を付けて飲んだ。

「おーい、与志子さーん」

少し離れた所から自分を呼ぶ声が聞こえた。

小山達であった。

「何処に居たんですか」

小山が尋ねた。

「果実を冷やして皆で食べようかな?と思って、オスカーと取っていたの」

与志子は嘘を言った。

「ただ、この赤くて丸い果実が判らないのよ」

与志子が手に取って見せた。

「これは、パッションフルーツですよ」

田中が答えた。

「旨いのか?」

小山が聞いた。

「買った物は旨いですけど」

「畑も荒れ放題ですから、スーパーで買う様な物と一緒に考えない方がいいですよ」

田中が答えた。

「クルーザーまで持って行って、食後のデザートにしよう」

小山が言った。


昼食を摂りながら、午後からの事を皆で話し合った。

「ところで、本村さん、わざわざここまで来て、どういうストーリーなんですか」

小山が尋ねた。

今まで何度か聞いたが、本村は答えようとしなかった。

ただ、無人島で撮りたい、と言うだけであった。

「もう、いい加減に教えてくれないと、撮影に入れません」

小山が言った。

「簡単じゃ、「番い」で夫婦になった二人が無人島で暮らしている様子を撮るのだ」

「もちろん、夫婦の営みを中心にな」

本村が腕組みをしてきっぱりと言った。

「それで好子さんの服装だがな」

と、本村が言いかけた時に与志子が口を挟んだ。

「どうせ、裸なんでしょ」

与志子が判りきった顔をした。

「いや、最初から裸では男は飽きてしまう」

「水着を着てもらって、それをあの猿が脱がすのさ」

本村が厭らしそうな顔で言った。

「最初は服でと思ったんだが、やっぱり南の島だから水着だな。と、思ったのさ」

「どうじゃこのアイデアは?」

小山に聞いた。

「まあ、最初から本村さんが、ストーリーは俺が考えるって言ってましたからね」

「・・・良いんじゃないスッか、それで」

「それに反対したら、あんた怒るでしょう」

小山が好きにしてくれという様な顔をしていた。

「それでこれが好子さんに着て貰う水着だ」

本村はクルーの一人に紙袋を持って来させた。

「水着なら私、持って来てますわ」

与志子は言った。

「いや、駄目だこの水着でないと」

クルーが紙袋を与志子に手渡した。

紙袋の中から与志子は水着を出してみた。

その水着は豹柄のビキニタイプの物であった。

「よりによって、豹柄なんて」

与志子は閉口した。

「ジャングルの様なこの島ではぴったりじゃないですか」

西山が本村の顔を見ながら言った。

「そう思うだろ、えーと、君は名はなんと言ったっけ」

本村が機嫌良さそうに聞いてきた。

「西山です」

西山が答えた。

「お〜、そうだった、君も良い感性しているねェ、ワハハハッ」

本村は上機嫌であった。


昼食後、皆で分校がある場所まで撮影機材、テント、その他諸々を運んだ。

「ふー疲れたな、いったいクルーザーとここを何往復したんだ」

田中が加藤に聞いた。

「疲れるのは当たり前ですよ、6往復ですよ」

加藤が額の汗をぬぐいながら言った。

「さあ、テントを張って、機材から荷物を入れよう」

小山が号令した。

「それから海に行って、汗を流そうか」

小山が言った。

「テントは、俺達が張るから、君は休んでいていいよ」

小山が与志子に言った。

「でも、皆に悪いわ」

与志子が言った。

「クルーザーに戻ってシャワーでも浴びて来たらどうです、汗だくでしょう」

「オスカーは僕らで見ていますから、気兼ね無く行って来て下さい」

田中が言った。

「そう、じゃ、御免なさい」

与志子は着替えを入れた袋を持ってクルーザーに戻って行った。

途中まで戻った時、後ろから誰かが走り寄って来た。

与志子は歩みを停めて振り返って見た。

西山であった。

与志子はきびすを返して、また歩き始めた。

「どうかしたの?」

西山が聞いてきた。

「どうもしないわ」

与志子はツンッとして、脇目も振らず真っ直ぐクルーザーに向かって歩いている。

「何処へ行くんだい」

西山が与志子に並んで話しかけた。

「何処でもいいでしょ。」

「それより、あんた皆と一緒にテント張り手伝わなくていいの?」

与志子は冷たく言った。

西山は与志子が一人になる時をずっと待っていたのだ。

周りを見回して誰も居ないのを確認して、与志子を畑の方に押し倒した。

「な、何するのよ」

与志子はビックリした。

「俺の下半身のテントはいつも張りっぱなしさ」

西山は間髪居れずに片手で与志子の両手を頭の上で押さえた。

与志子は足をバタつかせて暴れるが、西山が上にのしかかっているので思うように抵抗できない。

「嫌ッ、やめて」

与志子が叫ぶ。

「この乳房を何度しゃぶりたいと思ったことか」

西山はブラウスの上から与志子の胸の谷間に顔を埋めた

「嫌ッだったら、嫌よ」

与志子は肢体をよじって激しく抵抗する。

「エテ公には喜んで抱かれるくせに、人間に抱かれるのは嫌なのかよ」

西山は必死に押さえ付ける。

「ええ、そうよ、嫌よ。」

「吐き気がするわ」

与志子は抵抗は続けている。

「エテ公に抱かれる前に、人間の俺が抱いてやる」

西山がスカートの中に手を入れた。

与志子が急に抵抗しなくなった。

「わ、解ったわ、西山さん」

「やっと俺の気持ちが解ってくれたかい」

西山も与志子の両腕を押さえていた手を離した。

西山はハアハアと息を切らし、与志子のスカートの中に手を入れると、パンティに指を掛けてゆっくりと脱がし始めた。

与志子の片足を上げさせ、パンティを足から抜き取った。

「昨日は薄いピンクで、今日は白かい」

西山は抜き取ったパンティの匂いを嗅いだ。

「あなただったのね、下着泥棒は」

与志子が言った。

「ああ、そうさ」

西山は与志子のスカートを大きく捲り上げて、両足を大きく開かせた。

西山は改めて与志子の肢体を眺めた。

あられもなく開ききった股間を覗き込んだ西山の視線が与志子の陰毛へと移った。

まともに光を浴びている与志子の股間は、艶やかにもつれた黒い茂みと縦割れの肉をはっきりとのぞかせている。

艶やかにもつれ合った繊毛が、妖しい女の色香を立ち昇らせながら、西山の眼の前にさらけ出された。

与志子は肌が白いだけに、その茂みの黒さが鮮烈であった。

「ふふっ、とうとう俺のものに」

西山は呟いた。

「・・・!」

「お、おまえ」

「ほ、本当に入れたのか」

西山は呆然とした。

与志子の秘部へと視線を落とした時、陰毛の下に英語の文字が見えた。

それに太腿と肢体の付け根のライン沿いに彫られた文字。

それと同時に、白濁としたガム状の物が媚裂の入り口をしっかりと塞いでいるのを見つけた。

「アハハハハッ・・」

与志子が笑った。

「そうよ、あなたに言われたとおり彫ったのよ」

与志子はスマトラから帰ってくると直ぐ、Tattooを彫りに行ったのだった。

Orangutan

Only

 ↓

と下腹部に彫ってあった。

オランウータンの女になったその証として彫ったのである。

「Ape slut .ってか・・・・」

西山は力なく呟いた。

「私はオランウータンの牝として生きていくのよ」

「それと、もう彼に抱かれたわよ」

「彼ったら、久しぶりだから、すっごく、いっぱい私の中に出したの」

「ドクッドクッって、すっごく濃いのをいっぱい」

「もう少しで、私から溢れ出そうだったわ」

与志子は指で膣栓をゆっくりなぞりながら、うっとりとした表情で語った。

「今日は濃いからいつもよりしっかり塞いでいるわ」

与志子はゆっくり脚を閉じた。

「私はオスカーの女」

与志子は呆然としている西山からパンティを取り上げた。

「私は彼達だけのもの。誓ったのよ、もう二度と人間に抱かれないと。」

与志子はパンティを穿きながら言った。

「彼達?・・・なんだ、達って」

「まさか、おまえ二匹の他にもエテ公と・・・」

「それと、いつの間にあのエテ公と・・・」

西山は呆然としながら与志子の顔を見た。

「秘め事を聞くなんってヤボよ」

与志子は冷笑しながら言った。

「邪魔よ」

与志子は西山の胸を強くドンッと押すと西山は地べたにへたりこんだ。

「彼とめぐり合わせてくれたあなたには感謝しているわ。」

「だから、この事は内緒にしてあげるから、もう私達に関わらないで」

与志子は強い口調で言った。

「お前、気が狂ってる」

歩きだした与志子の背中越しに声を吐き掛けた。

与志子は振り返り、ニコッと笑みを浮かべただけであった。

服装の乱れを直して何も無かったように与志子は畑から出ていた。



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