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2003/05/17(土)

最近の検索エンジンからのアクセスで、「孫尚香」+「エロ」という組み合わせがあったりする。まあ、せいぜい日に1件程度なのだが、それでもけっこうコンスタントにアクセスがある。よほど熱心な人なのか、それともよほど多数の人が検索しているのか。日に1件というところから見て、おそらく前者ではないか、と私は睨んでいるのだが、そんなことはどうでもよろしい。

問題は「孫尚香」+「エロ」という組み合わせだ。たしかに ZooM-Palace はアダルトサイトであるから「エロ」というキーワードに異存はない。また時々ゲームの「真・三国無双」のことを書くこともあるから、「孫尚香」というキーワードでヒットすることも、そりゃ有るだろう。しかし「孫尚香」と「エロ」というキーワードでヒットしてしまうのは、どうか。さらには、その組み合わせで日に1件という来訪者があるのは、これまたどうか。

別に嫌がっているわけではない。が、こうもコンスタントに「孫尚香」+「エロ」で来られると、普段は抑えていた、とある妄想が鎌首をもたげてくるではないか。

妄想と言っても、獣なそれではなくて。もちろん、エロっぽい妄想ではあるけど。

孫尚香という女性は、「弓腰姫」などというあだ名まで付けられるほどの、男勝りで武芸に秀でた女だったそうだ。しかもその上、けっこうな美人だったとも言われている。で、この人は独身時代が長かった。なんか断定調で書いているけど、ここら辺の知識は三国志関係の小説読んで憶えただけなので、あまり信用しすぎないように。それはともかく、孫尚香は嫁き遅れなかなか結婚しなかった。

孫家の娘であると言うことは、本当なら政略結婚のいい道具になりそうなものだが、「お兄様(この場合は孫権の事であろうと推測される)より強い豪傑でなければ、結婚したくありません!!」などとワガママを通していたらしい。この時代(つまり A.D.200 前後)の中国だと、女性は15歳くらいまでには結婚していて不思議はない。孫家のように江東にある程度の勢力を持つ家なら、武芸に秀でるなどという状態になる前に、12歳くらいでどこぞに嫁がせて政略の道具にしてしまいそうなものだが……。

ちなみに、孫家の主要人物の生没年は以下の通り。

孫尚香だけ生没年不詳となっている。誰だ、「秘密は女の魅力のひとつなのよ」なんて言ってるのは。まあ、いいけど。

余談だが、父である孫堅の没年は A.D.192 なので、どんなに遅くとも A.D.193 までには生まれていたはず。遅れに遅れて「まあ、このくらいの人なら豪傑と認めてあげないでもないけど、逃げるのが上手なだけの人のような気もするし……」とか言いつつ劉備と結婚したのが A.D.209。ちなみに「赤璧の戦い」が A.D.208。以上、google で検索して調べたっす。便利な世の中になったもんだ。

さて、問題なのは「お兄様に匹敵する豪傑でなければ、結婚したくありません」というセリフだ。これ、変じゃないか?

時代は乱世(これ“らんせい”って読むんだね。ずっと“らんせ”って読んでたよ(;_;)である。カッコ書き長ぇよ。とにかく、乱世である。江東の孫家はそれなりの一大勢力ではあったけど、かつては孫策と同じ陣営であった袁術が袁紹に滅ぼされたり、その袁紹も曹操にびしびし打ちのめされちゃったり、平穏だった荊州が劉表が死んだとたん戦場になってしまったり、とにかく予断を許さない世の中である。同じ陣営ってより、孫策は袁術の配下だったんだけどな。ところで、袁術を滅ぼしたのって袁紹だっけ? まあいいや、あんまり関係ないし。

そういう嵐のような世の中にあって、「お兄様に匹敵する豪傑」と言ったら? 孫家の配下でないことは確かだよな。おっと、この場合の「豪傑」というのは、別に腕力に秀でるとかいう意味じゃなくて、「勢力を率いている人」って意味(だと思う)。であるからして、孫家の配下では「お兄様に匹敵」しない。当然、他の勢力の人間という事になるのだが。でもそれって、いつ敵対勢力になるか分かんない人、って事でしょ? というか、勢力を保ち続けるなら、いずれ必ず敵対する人ってことだ。だって孫家だって、あろうことなら中原統一!! を狙ってるんだから。それに匹敵するとなれば、当然それと同等程度の勢力であるし、それくらいの勢力であればいずれは孫家をも討伐して……となるのは必然。

てことは、孫尚香が言っているのは「お兄様の敵になるような人でなければ、結婚しません!!」というのと同じ事になる。もっと突き詰めて言うなら「お兄様の敵(になりそうな人)と結婚したい!!」となる。ほおら、変でしょ。おまえ、兄に対してなにか恨みでもあるのか?

そろそろ飽きてきましたか? すまんね。

解釈のひとつとしては(というか、これ以外の解釈ってあまり無いと思うが)、敵対勢力の内部に入り込んで、孫家のために諜報活動を行い、場合によっては内部蜂起、あるいは夫(敵勢力のトップであるのが望ましい)を殺害し、一気に孫家に併合。そこまで行かなくても、孫家の血の入った人間を後継者とし、友好策のひとつとする。まあ、そんな狙いがあったのではないか。

実際、孫尚香は後に劉備に嫁ぐのだが、「こいつは何をしでかすか分からんから、趙雲、おまえ見張りしてろ」という事で四六時中、趙雲がお目付役に付いていたそうな。実際、後に呉に帰る時、行きがけの駄賃とばかりに劉備の子供(阿斗)を攫っていこうとしたし、血相変えて追いかけた趙雲がやっと取り返した、というエピソードもあるし。長坂の戦いでもそうだが、趙雲って阿斗を取り返すためにいるようなもんだな。

でも私としては、孫尚香のあのセリフには、もっと別の、インモラルな雰囲気を嗅いでしまうのだ。

もしかしてこれは「絶対に結婚はしません」という意味ではないのか? 「兄に匹敵する人物でなければ結婚しない」→「でもそんな人物は敵勢力に決まっている」→「敵と結婚するわけがない」→「私の結婚などあり得ませんわ、お兄様」という意味だったのでは?

武芸一筋だったから? いやいや、そんなの政略結婚には何の関係もない。だいたい、孫策にせよ孫権にせよ、孫尚香を政略の道具にせずに、なぜ放置していたのか。男勝りだろうが弓腰姫だろうが、勢力拡大・お家安寧のためなら、たとえ実の妹でも、いや実の妹であればこそ、政略の道具として使うのが乱世というもの。それなのに、なぜ彼女だけは例外だったのか。しかも決して醜女ではなかったのに。

手放したくなかったから、ではないのか。

孫権は、大酒のみで女好きで、何というかタガの外れた人物だったそうである。いっぽう孫尚香は、美人で、男勝りなほど溌剌としていて、武芸にも秀でているので孫策・孫権の兄たちとも話が合う。明らかに、そこらの普通の女たちとは異色である。異色であり、人目をひき、というかいっそ「キャラが立っている」女性である。

色好みの孫権が、彼女に目を付けないはずは無い。

だが当時は「同姓は娶らず」などと言う時代でもある。名字が同じというだけで「血のつながりがある(かもしれない)から」と言って、結婚できなかった時代だ。兄と妹で通じるなど、畜生に身を堕とすような所行なのだ。もし露見すれば、孫家の威光など地に落ちる。武将も陪臣も離散し、呉は魏蜀によって踏みにじられてしまう。

だから、それは隠さねばならない。赤璧の戦いの後、周囲の目を欺くため、孫権は妹に対し、劉備との結婚を指示する。もちろん、「すぐに戻ってこれるよう、手を打つから」と言い聞かせてあったに違いない。

孫尚香は劉備に嫁ぐが、もちろん、他の男に肌を許す気など、無い。だから侍女たちには武器を持たせて周囲を固め、おいそれと劉備を近づけさせない。いや、いっそ近くに来たらその場で首を刎ねて逃走しようかとさえ思っている。劉備のほうもそういった気配は分かるので、滅多なことでは彼女に近づかない。結婚後の初夜でさえ、同じ部屋には入ったものの、指一本触れられなかったかも知れない。

やがて孫尚香は兄の元へ戻るわけだが……武装侍女団など相当に人目に付くものだろうに、これ以降の動向は不明らしい。動向が分からないのは、侍女団そのものが解散になったという事かも知れない。病死、あるいは事故死などと偽り、おそらく孫尚香は名前を変え……どこか人目に付かない家にでも篭もったのではないか。彼女は歴史から姿を消し、ひっそりと生活を続ける。時折、高貴そうなある男性が尋ねてくる他は、誰も来ない生活を。

彼女がいつまで生きていたかは前述の通り不明なわけだが、早逝だったにせよ、永らえたにせよ、孫権にとって彼女以上の女など、いない。武芸で鍛え上げられた活き魚のような肉体を知ってしまった後では、他の女など粘土細工のように感じられただろう。人目を避けて禁忌を犯すというスリルも、格別だったかも知れない。やがて彼女が世を去ると、孫権は荒れる。女を取っ替え引っ替え試し、酒に溺れ、そうして失意に沈んで日を送るだけになると、じわじわと呉は没落していく。しかしそれはまた別の物語になるから、ここでは語らない。

孫策の死には、これはこれで別の冥い匂いも感じる。

孫尚香は生年不明だが、とにもかくにも、孫権より後に生まれたのは間違いない。だから可能性としては A.D.183-193 の10年間のどこかで生まれたはずだ。A.D.184-185 は、いろいろあって孫堅はかなり忙しそうだったから、可能性としては A.D.183(孫権の翌年)か、A.D.186 以降が可能性が高い。ひと仕事終えてほっとした孫堅がひさびさに房事に励んで出来た、ということで、私としては A.D.186 生年説を採りたいと思う。

A.D.186 年に生まれたとすると、孫策が死亡した A.D.200(キリがいいので憶えやすい年だな)には、孫尚香は14歳ということになる。もう立派に一人の女性と見られて良い歳だ。だが、まあ、孫策死亡の年まで時間を進めなくても良いだろう。その前年あたりで良い、と私は思う。

A.D.199 年。孫尚香は13歳。兄・孫策は24歳。最も精気に溢れた年頃だ。当時は年齢は数え歳だったから、実際には1歳づつ加算されるが、まあ歴史の勉強をしているわけじゃなし、現代風に数えてもよかろう。

幼い頃に父を失った孫尚香にとっては、孫策は父のような存在であったろう。しかも「小覇王」と呼ばれるほどの勇猛な男であり、次々に己が版図を拡大している最中の、輝きに溢れた男でもあった。こういうのに憧れない女はいない。まだ夢見がちな年頃であるなら、なおさらである。

もともと勝ち気な性格だった孫尚香は、兄の真似をして武芸に励む。もともと素質もあったと思われるが、めきめきと実力を上げてゆく。孫策と二人で馬を競わせることくらいは、やったかも知れない。孫策はものに拘らない豪放な性格で、護衛も付けずに一人で出歩くこともまれではなかったというから、兄妹が二人きりで人気の無い荒野を騎馬で駆け通すことも、一度くらいはあったのではないか。

「あたし、ずっとお兄様と一緒にいたいな。夜も昼も、家でも戦場でも、ずっとお兄様と一緒にいたい」

「はっはっは!! しかし、お前もいずれは嫁に行かなければならんだろう」

「あら、それならあたし、お兄様に嫁入りしたいわ。そうすれば、寝室でも一緒でいられるし」

「おいおい、兄妹でそんなわけには、いかんだろう」

「あたし、本気よ……」

「お前……」

「でも、いいの……もともと無理だって、わかってるもの。でも……あたし、お嫁には行かないわ。どこへも、行かない。行くとすれば、そうね、お兄様を討ち取ってしまった人がいたら、その人と結婚するわ」

「俺を殺した奴と結婚するって言うのか? そりゃまた、あんまりだな」

「そして初夜の床で、その人の首を刎ねるわ。そうして、お兄様の敵を討つの。あたしの体には、指一本触れさせない」

「……」

「どうして、黙っちゃうのよ」

「やめとけ。今は乱世だ。俺も、いつ戦場で死ぬかわからん。俺を討ち取る奴だって、名のある武将とは限らん。普通に生きろ。それがお前のためだ」

「……あたしのこと、嫌い?」

「好きさ。だが……」

「じゃあ!!」強く遮る妹。「じゃあ、証を頂戴!! 今、ここで!! そうしたら……あたし、普通に生きてもいい」

「な、なにを……?」

「あたしを、女にして……今だけ……いちどだけで、いいから……お兄様と結ばれたいの……」

そんなことがあったかも知れないし、無かったかも知れない。いっぽう、この時、孫権は17歳。血気盛んで精力横溢。色好みの性格も、その姿を現しつつある頃。女性経験も一度や二度では無かったはずである。女の色気を発しはじめている妹は武芸が好みで、ともすれば鍛錬の後、若い汗に濡れたまま兄の元を訪れたりもする。自然な色香を嗅いで悩ましい思いをせねばならぬほうは、ある意味、災難と言える。

これで血のつながりさえ無かったら、と思わずにいられようか。だが血縁だけは、生まれた時からどうすることも出来ないものだ。まばゆくもこの世ならざる天使を見て、孫権はこれも運命ゆえと諦めざるを得ない。

だが、しかし。遠乗りから帰った後の兄・孫策と妹・孫尚香の微かな異変に気づいてしまったとき、諦めは怒りに変わったのではないか。運命と思えばこそ、自分は諦め、人の道に外れた恋情を堪えていたものを!! それを、兄は踏みにじった!! 望めばいくらでも女性を手に入れられるであろう兄が、よりによって弟のささやかな慕情を奪い、汚すとは……。

翌 A.D.200 年。孫策は、曹操に内通しようとした呉郡太守・許貢を処刑するが、それによって許貢の食客の恨みを買うことになる。好機到来。暗い執念に突き動かされ、孫権はひそかに彼らに情報を流す。兄の行動を、いつ、どこを通るのかを、いつなら一人きりでいるのかを……。

半ば以上憧れでしかなかったとは言え、敬愛する兄・孫策を失い、孫尚香は悲嘆にくれる。そして彼女は、なお、武芸に励みはじめる。同時に、彼女は心の内に誓いを立てた。兄の敵を見つけ、自分の手で仇を討つと。

だがその誓いは、もう一人の兄・孫権が彼女に近づいてきた時、絶望とともに砕け散ったかも知れない。言葉には出さなくても、そういうことは察せられるものだ。だが孫権はいまや孫家の当主であり、どんな恨みがあろうと手にかけるわけにはいかない。さりとて我が身をまかせるなど、もっての他だが……この男なら、意が叶わぬとなれば、妹であっても消すかも知れない。そういった事は、孫尚香には敏感に感じ取れただろう。

どうするか? とりあえず、孫権に子ができるまで待つ。生まれたばかりでは駄目で、孫権の跡を継げるくらいまでは、成長を待たなくてはなるまい。そして、その時こそ、愛する兄の仇を……。だが、そのためには孫権の側にいなくてはならない。またしても、彼女は嫁ぐわけにはいかなくなる。

「ひ弱な男どもになど、興味ありません。私は孫権お兄様に匹敵するほどの豪傑でなければ、結婚などしたくありません」

「ほう? ……ところで、私自身は、どの程度の豪傑と思うかね?」

「そうね……これくらい、かしら」

相手の安心を誘うため、身をまかせるくらいはしたかも知れない。あるいは、その鍛え上げた性技に虜にされたような演技の、一つや二つはしたのではないか。世界など滅んでも構いません、孫家の私が、孫家のお兄様の子を産んで、孫家の世界を成しましょう、と耳元で囁いたりはしなかったか。


だからさ、「孫尚香」+「エロ」なんてキーワードで検索かけられたりすると、そういう妄想しちゃったりするんだよなぁ。獣属性は付いてないけど、さ。


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