第9章


高台に座っている与志子が、1隻のクルーザーが島に向かっているのを見つけた。

与志子は立ち上がると、隣で寝そべっているオスカーを起こし、手を繋いで別荘へと急いだ。

森を抜け、別荘の裏口から中に入った。

ベッドの横に放置したままのトランクから、薄手のワンピースを取り出した。

全裸のまま頭から、ワンピースを被るように着た。

「久しぶりだわ、何かを身体に纏うなんて。」

オランウータンの妻としては、全裸でいる事が当たり前の事であった。

クルーザーは速度を落とし、入り江に入って来た。


クルーザーが、ゆっくりと入り江に入って来て、桟橋に接岸した。

与志子は身を潜め、別荘の窓からクルーザーを監視いている。

男が一人、クルーザーから桟橋に飛び移り、ロープでクルーザーを桟橋に固定いている。

「男?」

与志子は緊張した。

クルーザーが固定されると、大きなトランクを持った女が桟橋に降り立った。

女は山野美和子である。

女が美和子であると確信した与志子は、今まで緊張していた気持ちが一気に緩んだ。

与志子は美和子を出迎えに行こうと、別荘を出て桟橋へ向かった。

美和子と男がクルーザーからに荷物を降ろしている最中である。

「約束を守ってくれたのね。」

与志子は荷物を降ろしている美和子に声をかけた。

美和子は振り向き、与志子を見て言った。

「当たり前じゃない。」

「あんな脅迫しておいて。」

与志子は恐縮しながら答えた。

「ごめんなさい、あのくらいしないと駄目だと思ったから。」

「許して。」

与志子が美和子と話していると、男がクルーザーから桟橋に移ってきた。

「ようッ、元気そうじゃないか。」

男は小山であった。

「小山さん、どうして?」

与志子は小山が一緒とは思ってもいなかったので驚いた。

小山の方から見ると逆光の為、与志子の薄手のワンピースは透けて、裸体のラインがはっきりと解った。

益々艶っぽくなったな。と、小山は思った。

「君の最後の言葉が気になって、すまないと思ったが、直接住所の所へ手紙を持って行ったんだ。」

「そして、悪いが話は全部聞かせてもらったよ。」

与志子は美和子を睨んだ。

「だって、1人じゃ無理だもの。」

「小山さんの助けが無ければ、この島まで来れなかったわよ。」


話は一ヶ月前に戻る。(第7章後半参照)

美和子と与志子は小さなテーブルを挟んで、対面する形で座っていた。

「相談と言うのは、・・・・実は、私に人工授精をして欲しいの」

与志子は思い切って言い出した。

「はあ、・・・それは婦人科の話ですよ。」

美和子は与志子の言っていることが理解できないでいる。

「違うのよ」

与志子は言うと、長椅子から立ち上がり、スカートの裾を捲り上げ、パンティを下ろした。

下腹部に彫った文字を美和子に見せた。

「えッ」

美和子は驚いた。

「猿道さん、そんな事したらもう結婚できませんよ。」

美和子はまだ驚いていた。

「人間とは、する気は無いのよ。」

「貴方なら私の気持ちが解るはずよ。」

「だって、貴女は私と同じ匂いがするもの。」

与志子はパンティを上げ、スカートの裾を下ろした。

「な、何を言うの」

美和子は与志子に見抜かれたことに狼狽した。

与志子は携帯を取り出し、黙って美和子の傍に行った。

おもむろに美和子の片足首を捕まえると、高く上に引き上げ、大きく股を開かせた。

美和子は足を高く引き上げられた反動で、長椅子に横たわった。

「いやッ、何をするの」

美和子のパンティを着けていない股間は大きく割り開かれ、リオの膣栓で封印された媚裂があからさまになった。

「あら、・・・この白い物ってなぁに?」

与志子は意地悪く言っうと、パシャッ、パシャッ、と媚裂の部分を携帯で写真に撮った。

写真を撮り終えると、与志子は足首から手を離した。

美和子は恥ずかしそうに、急いで脚を閉じ、スカートを股間に押し付けるように隠した。

「私の言うことを聞かないと、この写真をここの従業員、皆に見せるわよ。」

与志子は少し脅し気味に言った。

「わ、解ったわ。」

「それで私にどうしろと言うの?」

美和子はもう逆らっても仕方が無いと諦めた表情であった。

「牝のオランウータンの卵子を、私の子宮の中に入れて欲しいの。」

与志子は美和子を見詰めた。

「卵子だけ?」

美和子は不思議そうな顔をした。

「そう、卵子だけ。」

「あとは、私とオスカーが交尾をするの。」

「出来るだけ自然な形で妊娠したいのよ。」

与志子が話している最中に美和子は首を横に振っていた。

「そんな事、成功するはず無いわ。」

「受精させた卵子を人間の子宮に入れても無理よ。」

「もし成功したら、学会で報告できるわ。」

美和子は与志子を見詰めて言った。

「やってみなきゃ判らないわよ。」

「それに貴女には、拒むことは出来ないわ。」

与志子は携帯電話を美和子の目の前にちらつかせて、長椅子から立ち上がった。

「どうなっても私、責任持てないわよ。」

美和子は、部屋から立ち去ろうとする与志子に声をかけた。

「じゃぁ、近々連絡するから、準備して待っていて。」

与志子はドアを開け、振り向いて言った。


「さあ、何も無いけれど、我が家に案内するわ。」

「あっ、小山さんはよく知っていたわね。」

荷物を持って3人は別荘へと向かった。

玄関を入るとオスカーが居た。

「あら、オスカー何ヶ月ぶりかしら。」

「まだ私の事、覚えているかしら。」

美和子はオスカーの顔を覗き込んだ。

「オスカー久しぶりだな。」

次は小山が覗き込んだ。

もちろんオスカーは2人のことなど、忘れてしまっている。

オスカーは2人から少し距離を置き、落ち着き無く遠巻きに見ていた。

「さあ、今日はゆっくりしましょ。」

「久しぶりに、最近の世間の話も聞きたいし。」

夕食後、与志子は2人に最近のことを色々聞いた。

自分のDVDが前作を上回る大ヒットになっている事を知った。

「じゃあ、会長さんも儲けれたわね。」

与志子は少し面白くなさそうな顔をした。

「ああ、撮影前から注文していたクルーザーが出来上がったから、今までのクルーザーを気前よく俺にくれたんだよ。」

「私からのボーナスだ。と、言ってね。」

「だから今は、アパートを引き払って、あの船が俺の家さ。」

小山が親指で背中越しにクルーザーを指した。

美和子が与志子に話しかけた。

「猿道さん、お願いがあるの。」

「今回の事を、記録に撮らせて、お願い。」

「失敗しても記録に残す価値が有ると思うの、成功すれば尚、良いけれども。」

与志子は少し考えた。

3人の間に沈黙が続いた。

「いいわ。」

「でも、条件があるわ。」

「公表はしない事。」

「カメラ、ビデオ、メモリーは全て私に預けること。」

「後で見たければ、この島にまた来ることね。」

与志子が提案した。

「顔を隠して、音声も無し、場所も言わない・・それでも駄目」

美和子が逆提案した。

「駄目よ。」

「本村会長の口から、私達の居場所が、ばれるわ。」

美和子も小山も黙ってしまった。

「・・・・・」

「仕方ない、記録が撮れるだけでも良いじゃないか。」

小山が言った。

「そうね。」

美和子が力無く返事をした。


翌日、ビニールでカーテンを作り、ベッドの周りを囲った。

「簡単な手術室みたいなものよ。」

与志子が不思議そうに見ていると、美和子が言った。

カーテン内をアルコールの入った霧吹きで、丹念に消毒して回った。

そして、消毒したテーブルの上に、消毒済みの紙のシートを敷くと、冷たく光る医療用の金属器具を並べていった。

「さあ、始めるわよ。」

「ベッドに横になって。」

与志子は言われるままにベッドに横になった。

美和子は金属の箱から液体窒素で凍らせた、1本のガラス製の試験管を取り出した。

「この中にオランウータンの卵子が入ってるわ。」

「そしてこの卵子を今からあなたの子宮へ入れるのよ。」

美和子は与志子に見せた。

「準備してあるのは、全部で3本。」

「今日はその内の1つを使うわ」

「そして3回全部失敗したら、もう諦めてね。」

美和子は与志子に言った。

「解ったわ。」

「そこまでして駄目なら諦めるわ。」

与志子は答えた。

「じゃあ、始めます。」

「膝を立てて、大きく股を開いて下さい。」

小山は先程から、ビデオで撮影を開始している。

与志子は美和子の言われるままに膝を立て脚を大きく開いた。

ペリカンのくちばしの様な器具が与志子の媚裂に差し込まれた。

与志子はその器具がすごく冷たく感じた。


数十分後

「さあ、無事終わったわ。」

「後は運任せね。」

美和子は手術用のゴム手袋を外し、マスクを外した。

起き上がろうとした与志子に美和子は言った。

「今日は、大人しく寝て頂戴。」

「解ったわ。」

与志子は答えた。


翌日

「身体の調子はどう?具合は悪くない?」

美和子は与志子に尋ねた。

「ぜんぜん、いつもと変わらないわ。」

与志子は答えた。

「じゃあ、私達は一旦帰るけど、大丈夫?」

美和子は言った。

「心配しないで、大丈夫よ。」

与志子は笑って言った。

「来月様子を見に来ますね。」

美和子と小山は帰っていった。

与志子は妊娠することを期待して、すぐにオスカーとの交尾を開始した。

しかし、その期待は見事に裏切られた。


翌月、2度目の卵子埋め込みを受けた。

今回も裏切られてしまった。

3度目の埋め込み術を受けた。

「猿道さん、最初に言ったけど、これで駄目なら諦めてね。」

「私も出来ることは全てやったわ。」

美和子は与志子に再確認のつもりで言った。

「解ってるわ、今まで本当にありがとう。」

「貴女は、よくやってくれたわよ。」

与志子は美和子に感謝していた。

今回も駄目だろうなと諦めている自分と、最後の今回こそと、期待する自分が与志子の心の内で二人の自分が居た。


この頃、与志子は毎夜同じ夢を見る。

与志子と章吉は巣の中で喧嘩をしている。

与志子の隣には章吉との間に授かった子供が座っていた。

与志子は妊娠しているのか、お腹が大きく迫り出し乳輪は黒ずみ大きく広がり、乳房も大きく張っていた。

臨月に入っている為、章吉が交尾を求めても応じてやれなかった。

いつもは口腔で済ませていたが、今日はそれでは満足せず章吉は怒りだした。

他の牝猿と交尾をしようと巣から出て行こうとしたので、与志子は行かせまいと、

章吉の腕を掴んで、泣きながら必死に止めていた。

章吉は与志子の手を振り払った。

尚も、止めようとする与志子に向かって吼え、牙を剥いて威嚇し、巣から出て行ってしまった。

与志子と章吉の争いを見て子供が怖がりキイーッ、キイーッと喚き出したので、

与志子は仕方なく、子供を抱き上げ乳首を吸わせた。

子供は乳首を含んで安心したのか、泣き止み母乳を吸い始めた。

与志子は泣いていた。章吉との間に子を授かり、人間の世界にはもう戻れないのである。

章吉と一緒にオランウータンの世界で生きて行こうと決心したのに、その章吉に裏切られてしまったのである。

暫くして、失意の中で与志子は出産した。

章吉によく似た牡の赤ん坊であった。

そして、与志子は別のオランウータンの妻になった。


新しい夫のオランウータンは直ぐに現れた。

いつも章吉の留守を見計らっては与志子の前に現れ、交尾をしつこく迫る若い牡のオランウータンであった。

いつもは交尾を迫ってきても、上手くあしらって追い返していたが、一度だけ章吉には内緒で、乳を吸わせたことが有った。

もう、乳房がパンパンに張って、痛くて仕方なかったので、この若い牡に吸わせた事があった。

もう、人間の世界に戻れない与志子は、オランウータンの世界で生きて行くしかなかった。

オランウータンの世界で生きていく為には、新しい夫を迎え入れるしか術は無かった。

与志子は章吉との生活の邪魔をする、この若い牡のオランウータンが好きではなかった。

が、子供を育てながら生きて行く為に仕方なく妻になった。

与志子は新しい夫のオランウータンとの交尾が好きになれなかった。

野生で生まれ育った為に、前戯も無しで、いきなり与志子の媚裂に肉棒を突っ込んでくる。

与志子は膣が十分に潤っていないのに荒々しく腰を打ち付けられるので、すごく痛がった。

与志子が痛がっても、夫のオランウータンは、お構い無しに腰を暴れるように振り続ける。

あまりの痛さに与志子が逃れようとすると、力ずくで押さえつけられた。

それは、交尾ではなく、犯されているという感じであった。

そして挿入時間が長く、与志子には苦痛の交尾の時間であった。

我慢して幾度と交尾を繰り返すうちに、与志子の身体はこの野生の交尾の仕方に慣れてきたのか、

交尾を迫られると自然に愛液で媚裂が濡れるようになっていた。

新しい夫のしつこく、執拗な交尾に与志子は幾度も失神させられるのであった。

交尾の回数も章吉の比ではなかった。しつこく何度も交尾を迫るのだった。

与志子は見捨てられるのが怖くて、クタクタに疲れきった身体で新しい夫に懸命に仕えた。

今、この夫のオランウータンに見捨てられたら、子供を育てながら生きていく事が出来ないと思っていた。

そんな夫の気を常に自分に引き留めておく為に、他の牝のオランウータンでは味わえない快感を夫に与え続けた。

睾丸を嘗め回したり、口を使っての肉棒への愛撫。

いじらしい程に夫に奉仕した。

夫はそんな与志子との交尾に熱中した。

与志子の子宮は常に新しい夫の獣液で、いっぱいに満たされて空になる事は無かった。


新しい夫は、野生で生まれ育った為、章吉よりも逞しかった。

そして、身体も一回り大きかった。

与志子達を軽々と抱き上げ、木々の間を素早く、より遠くまで移動してくれる。

与志子は徐々にこの野生の逞しさ、力強さに惹かれていった。

そして、より強く、より逞しい子孫を残そうとする牝の本能で、もっと逞しい牡の子供が欲しいと思った。

それは、章吉と別れてちょうど1年程が過ぎようとしていた頃であった。

与志子は最近になって自分の身体の変化に気付いた。

子供を欲するようになってから与志子の媚裂は常に愛液で濡れ、

熟れた果物のようにパックリと開き、牡を誘う牝の匂いが常に溢れ出ていた。

いつでも、いかなる体位からでも牡を受け入れる準備が整っていた。

匂いに誘われ、与志子の周りには常に何頭かの牡のオランウータンが群れ、与志子に交尾を迫った。

その度に若い夫のオランウータンは、吼え、他のオランウータンの牡達を威嚇した。

与志子は子供を抱き母乳を与えながら、群がる牡達の1頭1頭を期待を込めて細かく観察していた。

若い夫のオランウータンに比べると、どのオランウータンの牡も風格があり、屈強そうである。

与志子はこの群れの中のオランウータン達なら、どのオランウータンと交尾してもよいと思っていた。

夫のオランウータンが他の牡を追い払っている隙に、1頭の牡オランウータンが与志子の前に現れた。

与志子は急いで子供を抱きかかえ、待ちかねたように腕をその牡のオランウータンの首に巻き付けた。

オランウータンは与志子達を抱き上げ、急いで自分の巣に連れて行った。

この老獪な狡賢さに与志子は苦笑いした。

野性の中では狡賢さも必要でなのである。

与志子はその事を本能で感じ、この狡賢い牡のオランウータンの獣精を受け入れる事にした。

巣に着くと与志子は素早く四つん這いの姿勢になり、牡に向けて尻を高く掲げ、尻を振って交尾を催促した。

子供を産んだ事で益々艶やかになった形のよい尻であった。

オランウータンの黒い掌が与志子の尻をガッチリと掴み、既に濡れそぼっている媚裂に肉棒を当てた。

与志子は我慢できずに自ら腰を振り、肉棒を迎え入れた。

与志子の歓喜の声が森に響いた。

与志子はこの牡オランウータンに好かれようと、

夫の交尾の時と同じような愛撫を加え、この牡に奉仕した。


交尾は2度、3度と繰り返された。

この牡が満足した頃、別の牡が与志子達の前に現れた。

牡は新しく現れた牡を威嚇したが、新しく現れた牡の一吼えで巣から離れ、争う事はしなかった。

新しい牡は与志子と子供達を抱きかかえて、自分の巣へ連れて行った。

先程の牡は、与志子との別れを惜しむような眼で見詰めていた。

新しい牡の巣に着くと、与志子はこの牡の肉棒を口に含み、舌を絡めて愛撫した。

そして、先程の牡との交尾で出来た膣栓を剥がし、この牡と翌朝まで交尾を繰り返した。

以後、与志子はまた別の牡に抱きかかえられ、巣に連れて行かれては交尾を繰り返した。


こんな調子で与志子は毎回違うオランウータンの牡達との交尾を繰り返す事になった。

与志子は毎回違うオランウータンの牡達との交尾を嫌だとは思わなかった。

それよりも、次はどの牡が自分を連れて行くのか楽しみにしていた。

牝の本能として、より良い野生の血を引き継ぎたい為に、好んでこのオランウータンの牡達との交尾を繰り返した。

そして、牡達も他の牝では味わうことの出来ない快感を与えてくれる与志子との交尾に夢中になった。

やがて、与志子と交尾をする為にオランウータン同士の激しい争いが起きた。

激しい牡同士の争いを、子供をあやしながら与志子は見ていた。

与志子は少し幸せな気分になっていた。

自分を奪い合うために、屈強な野生のオランウータン達が、血眼になって争うのである。

争っている牡達の中に与志子が密かに思いを寄せている若い牡のオランウータンが1頭だけ居た。

与志子は心の中でその若い牡が勝ち残るように願った。

そして、やがて争いは終わった。

争いを制したのは与志子が思いを寄せるオランウータンの牡であった。

このオランウータンの牡の妻になりたかった与志子は歓喜した。

与志子はこの牡に抱き付き、唇に吸い付いた。

それから、与志子は静かに跪き、掌でやさしく睾丸と肉棒を撫で始めた。

牡は気持ち良いのか目を細めている。与志子は意地悪く微笑むと肉棒を口に含んだ。

掌で睾丸を優しく撫で廻し、舌で肉棒を扱き始めた。

肉棒は徐々に大きくなり硬さを増してきた。

十分に硬くなった肉棒から、与志子の唇が唾液の糸を引いて離れた。

与志子は牡の手を握り、自身の身体に引き寄せながら仰向けになった。

黙って股間を開き、受け入れ準備が整った媚裂を牡の目の前に曝け出した。

牡は大きく割り開かれた股間の、毛深く黒々と柔らかくもつれ合い密集した陰毛を凝視している。

「ああ、そんなに見詰めないで」

「長い間、手入れをしていないから恥ずかしいわ。」

与志子は章吉とジャングルに来てからは、股間のビキニラインなどの手入れはしていなかった。

牡は局部だけに毛が生えているのを不思議に思い、

黒々ともつれ合い長く伸びた陰毛を掌で優しく撫でまわした。

「あなた達は皆、それ(陰毛)に興味を持つのね」

曝け出した媚裂からは、ほのかに牡を誘う匂いがした。

牡が与志子の毛深く、長く伸びた陰毛を掻き分けて、媚裂に鼻を近づけて匂いを嗅ぐと唸った。

牡は与志子の媚裂に舌を這わせ、ピチャピチャと音を立てながら舐め始めた。

与志子の口から呻き声が漏れた。

「あなたの子供を産みたいの」

「ねえ、お願い。はやく」与志子はこのオランウータンの牡との交尾を懇願した。

与志子が両腕を広げて牡を迎え入れるしぐさをすると、牡は覆い被さる様に与志子にのしかかった。

牡の肉棒が与志子の媚裂に分け入り動き始めた。牡の腰が与志子の股間を強く打ち始めた。

与志子の媚裂からは、蜜が溢れ出し牡の肉棒の動きを助けた。

与志子の身体を出入りする肉棒を、肉襞は逃すまいと肉棒に絡みつく。

与志子は切なげな声を発し、腰をくねらせ始めていた。

今までの交尾とは違い、妻になりたいと思っていた牡との交尾である。

与志子には、久しぶりの快感であった。

しかし、交尾に夢中になっていた牡が、いきなり与志子の身体から引き離されてしまった。

そこに立って居たものは、他の牡達よりも一際身体が大きく、

この辺りでは見た事も無い、逞しく強そうなオランウータンであった。

顔には自分の強さを誇示するかのように、大きくフランジが張り出ていた。

与志子から引き離された牡は怒り、向って行こうとしたが、

この見たこともない牡がひと睨みしたら、スゴスゴと後ろに下がったしまった。

与志子が思いを寄せる牡との争いを制した牡が与志子の前に立ち与志子を見下ろしている。

与志子は股間を開いたまま恐怖で凍りついてしまった。

今までに見たこともない凄味を持った眼つきの鋭い不吉な感じのオランウータンであった。

牡が蜜が溢れ出ている媚裂を凝視すると、与志子は牡の意図を悟り、

黙って子供を抱き寄せその牡の前に震えながら跪いた。

(私はこのオランウータンに犯される)与志子は直感で解った。

与志子が密かに思いを寄せる若い牡は争いに敗れ、近くの木に逃れ与志子と、この牡を見詰めていた。

牡が与志子に近づいた。

「いやッ」与志子は子供を抱きながら後退りした。

牡が与志子の肩を掴んだ。与志子は暴れて拒んだ。

しかし、牡は与志子達を軽々と抱き上げ、木々を素早く伝い自分の巣へと急いだ。

与志子は牡の肩越しから、思いを寄せる若い牡と別れを惜しむようにずっと見詰めていた。

やがて、思いを寄せる牡が見えなくなると、与志子は抱かれた腕の中でそっと泣いた。


牡の巣は章吉と一緒に暮していた森から、かなり離れた森の中にあった。

川の淵の大きな木の上に巣は作られていた。

与志子は巣の中で子供をギュッと抱き締めて、オランウータンを凝視していた。

このオランウータンが交尾をしたがっている事を与志子は解っていた。

与志子は、オランウータンの隙を見て巣から逃げようとした。

が、牡がいきなり与志子の足首を持ち、大きく割り開いた。

与志子の股間は大きく割り開かれ、媚裂が剥き出しになった。

「いやーッ」与志子は身体をバタつかせ、激しく抵抗した。

子供も母親が大声を張り上げて暴れているのを見て、怖くなってキイーッキイーッと啼きだした。

オランウータンは与志子に上にのしかかり、力ずくで押え付けると同時に与志子の股間に腰を押し付けた。

肉棒が与志子の媚裂にニュルと入った。

「いやーッ」与志子は首を振って大声でわめいた。

与志子の媚裂が先程の交尾の余韻でしっとりと濡れていたのが災いした。

グジュッグジュッと湿った音を立て、オランウータンの肉棒が与志子の媚裂を荒々しく貫いている。

やがて、泣きながら暴れて抵抗していた与志子の身体が妖しくくねりだし、

悲鳴が徐々に甘い喘ぎ声へと変わっていった。

与志子の身体は知らず知らずのうちに、オランウータンの動きに合わせて腰を振り、

首に腕を巻き付けて唇を貪るように吸っていた。

与志子はもう自分の身体が制御出来なくなっていた。

いくら嫌な相手でも、身体が勝手に反応してしまい、本能のおもむくままに快楽を貪るように求めていった。

この牡の性欲は、今までの牡達の比ではなかった。絶倫という言葉そのものであった。

いつ果てるともなく与志子を責め続け、与志子の身体をまるで貪る様に交尾を繰り返した。

与志子は、幾度も、この牡のオランウータンのあまりに執拗な責めから這って逃れようとしたが、

足首を握られ引きずり戻されては、力ずくで組み敷かれ責め続けられた。

もう、与志子は諦めていた。この牡オランウータンが満足するまで自分は犯され続けるのだと。

牡のオランウータンが泣き叫ぶ人間の女を延々と犯している光景であった。

「ひいっ、ひいっ」と最初のうちは与志子の悲鳴にも似た喘ぎ声が聞こえていたが、

やがて、喘ぎ声も聞こえなくなり、時折、「うっ」「うっ」という与志子の呻き声だけが聞こえていた。

与志子は何度も失神させられたが、オランウータンは与志子が失神していようと、いまいと、

お構いなしに責め続けた。

今や、与志子の瞳は焦点を失い、虚ろに一点だけを見つめて、だらしなく半開きになった口からは、

涎が垂れて、糸が切れた操り人形のように力無くグッタリとしている。

与志子の身体で動いているのは、オランウータンが股間に力強く打ち込むたびに

プルンップルンッと豊満な乳房が揺れ動いているだけであった。

それでも、母親としての本能なのか、子供がお腹を空かせて啼くと、

犯されている最中にも朦朧とする意識の中で子供を抱き寄せ乳首を吸わせた。

このオランウータンは与志子を三昼夜延々と犯し続けた。

与志子がこの牡のオランウータンの責めから開放されたのは、4日目の朝であった。

牡のオランウータンは、与志子を責めることに疲れ果てて泥のように眠りに付いた。


乳首を吸われている感触に与志子は眼を覚ました。

「ひいっ・・・いやぁ・・」

「もう、・・かんにんして」与志子は朦朧とする意識の中で、うわ言の様に言った。

よく見るとお腹を空かせた子供が、仰向けになった与志子の上に乗り乳首を吸っていた。

与志子は子供の顔を見て、安心した。

あの牡オランウータンのすさまじい性欲に耐え切れず、幾度も激しく拒絶したが、

その都度、力ずくで組み敷かれて責め続けられた。

与志子は、2匹の我が子達を抱き締めると、涙を流して嗚咽を漏らし大声で泣いた。

なぜか、オランウータンに犯された事よりも、犯されている身体が勝手に快楽を

求めてしまったことに泣けてきた。


与志子が目覚めた時には、その牡はもう居なくなっていた。

与志子はホッとした。

もう、これ以上は、相手をしてあげられないと思っていたからである。

だらしなく開ききった、股間の周りは与志子の身体の中に入りきらずに溢れ出た

オランウータンの牡の獣液が、べっとりとゴム状に固まり、こびり付いていた。

与志子は下腹部に獣液による膨満感を感じながら脚をゆっくり閉じた。

与志子は、まだ、少し朦朧とする意識の中で、乳を吸う我が子を愛しそうに見つめていた。

その時、突然、与志子達の前に初めて見る新たなオランウータンの牡が現れた。

牡は傍に来て、与志子に交尾を迫った。

「いやーッ、もう暫くは、いやーっ」与志子は嫌がった。

しかし、牡はしつこく交尾を迫ってきた。

与志子は、手足をバタつかせ必死で拒否し続けた。

与志子の必死の拒絶に、このオランウータンの牡も諦めたのか、巣の反対側の淵に座ってしまった。

与志子とこの牡のオランウータンの間に緊張感が漂っていた。

その時、子供が牡のオランウータンに歩み寄って行った。

「ひッ」与志子は心臓が止まりそうになった。

交尾を拒絶されて苛立っているであろう牡に寄れば、大怪我を負わされるか、

最悪の場合殺されてしまうかもしれないからである。

牡のオランウータンが子供に手を伸ばした。

「だめッ、やめて」与志子は叫んだ。

次の瞬間、牡のオランウータンは子供を抱き上げ、子供をあやし始めた。

それを見て、与志子はホッと胸をなでおろした。

二ヵ月後、与志子は妊娠した事を悟った。章吉との間に子供を授かり、これが2匹目であった。

何頭ものオランウータンと交尾を重ねたので、

どのオランウータンの子を孕んだのかは与志子にも分からない。

そして、妊娠をしてから与志子の媚裂からは、牡を誘う匂いはしなくなっていた。


それから数ヵ月後、章吉と別れてから2年近くが過ぎた頃。

川辺で楽しく水浴びをする与志子達家族が居た。

子供は、もう水に慣れているのか、1匹でバシャ、バシャと水に戯れている。

与志子は川の中に入り、掌に水を掬っては、子供にパチャパチャと、水を掛けながら言い聞かせている。

「だめよ、水を怖がっていては」

「あなた達には、人間の血が半分混じっているんだからね」

一頭のオランウータンが川岸に座って、与志子達を見守っている。

与志子があの時、交尾を拒絶したオランウータンである。

与志子はこのオランウータンの妻になっていたのである。

「ほらほら、あなたも川に入ったら?」

「気持ち良いわよ」与志子は夫のオランウータンに水を掛けながら言った。

夫のオランウータンは、水に濡れるのを嫌がり、半身になって避けていた。

「そんな、だらしが無いパパだと子供達に笑われるわよ」与志子は笑いながら水を掛け続けた。

大きくなった腹を抱えながら、子育てと新しい夫と生活する与志子が居た。

お腹の子供は時折、元気よくお腹を蹴るくらいまでに成長していた。

お腹を蹴る力が、今までの子供達の時よりも力強いと与志子は感じていた。

与志子はお腹を蹴る力強さで、お腹の子は私を犯した、あの牡の子供だと確信していた。

しかし、与志子は今、幸せであった。

自分を犯したオランウータンの子供だとしても、与志子が牝としての本能で欲した、

より強く、より逞しい本当の野生の血を継ぐ子を授かったのであるから。


与志子は目覚めた。

「はあー・・・また同じ夢」

ベッドから起き上がった与志子は、今までとは身体が何か違うと感じた。

はッ、もしかして、と、思った。

「今月は生理も無かった。」

与志子は淡い期待を胸に抱いた。

「あと2,3日で美和子たちが来るわ」

「そしたら判るわ。」

与志子は急に気持ちが明るくなった。

2日後、美和子と小山がやってきた。

美和子は尿を試薬で調べると

「エッ・・・・」

「信じられない。」

「・・・・・妊娠してる・・・」

美和子はまだ、信じられないという顔をしている。

「出来たのね。」

与志子は飛び上がらないばかりに喜んだ。

「猿道さん、来月、父島の診療所でエコーを撮って確認しましょ。」

「オランウータン子は人間の子より1ヶ月早く270日で出産よ。」

美和子はまだ信じられないという顔をしていた。


翌月、与志子は父島の診療所でエコー検査を受けた。

黒く判りづらいモニターに、はっきりと小さな胎児が見えた。

「おめでたですね。」

診療所の医師は、写っている胎児が、まさかオランウータンの胎児とは思ってもいなかったであろう。

「本当に神秘の世界ね。」

診療所からの帰りのクルーザーの中で、美和子は呟いた。

「だから、やってみなきゃ解らないって言ったじゃない。」

与志子は、はしゃいでいた。

「でも、気をつけなきゃ駄目よ。」

「流産って事もあるから。」

「あまり無理しないでね。」

美和子は、はしゃぎ気味の与志子に注意を促した。


次に美和子が島に来た時には、与志子の身体にも見た目にも変化が判った。

乳輪は黒ずみ、豊満乳房はさらに、豊満になっていた。

腹も見た目にも膨らんでいるのが判った。

「もう、どこから見ても妊婦だと判るわね。」

美和子は与志子に言った。

与志子は大切なものを触れるように、膨らんできた腹部を撫で回している。

「これからは、お腹の子が育ちすぎないように、しっかり栄養を取って、運動をしないとね。」


臨月になり、美和子と小山は与志子の出産を手伝いに来た。

美和子と小山が部屋に入ると、オスカーが与志子のパンパンに張った乳首に吸い付いていた。

「あッ、ごめんなさい。」

いきなり眼に入った光景に思わず謝った。

「いいのよ、気にしなくって。」

「あまりに乳房が張って痛いから、彼に吸ってもらって、乳道を開通させたてるの。」

与志子の乳房は青く血管が浮き出るくらいパンパンに張っていた。

「おかげで、一昨日母乳が出るようになったわ。」

「吸ってもらうと、随分楽になるわ」

と、与志子は言いながら、反対側の乳首をオスカーの口に持っていった。

オスカーは、差し出された乳首を強く吸い始めた。

「もう、そろそろ出産の準備をしなくちゃね。」

「まだ、陣痛とかは無い?」

美和子は与志子に聞いた。

「ええ、まだ。」

与志子は乳を吸うオスカーを見ながら答えた。


10日後、陣痛が夕方から始まり、明け方に与志子は無事出産した。

元気な牡のオランウータンだった。

美和子も初めての経験で、心細かったが無事にやり遂げた。

与志子は生まれたオスカーの子を抱き上げ、乳首を口に含ませた。

勢いよく、乳首を吸い母乳をごくごくと吸い始めた。

「元気に生まれてよかったわ。」

美和子は憔悴しきっていた。

与志子は元気に母乳を吸う我子を愛しそうに見詰めていた。

2週間後、今日は、与志子達の世話をしていた美和子と小山が帰る日であった。

桟橋にオランウータンの子供を抱いた与志子と、オスカーが見送ってくれた。

「猿道さん、また次も産みたい?」

美和子は冗談で聞いた。

「ええ、もちろん。」

「次は、牝が生まれるといいわ。」

与志子は次も産む気であった。

「その子供達、またその孫達と、この島でオランウータンが増えていく事が私の夢よ。」

与志子が語った。

「じゃあ、次は別の卵子と、精子が必要ね。」

与志子はそれを聞いて、ポカンとしているので、美和子が説明を続けた。

「この次もオスカーの精子を使うと、もし牝が生まれても、同じ血が繋がった兄妹になってしまうでしょ。」

「それが夫婦になって子供が生まれると、血が濃くなりすぎちゃうのよ。」

「すると、元気に生まれる確立が低くなるの。」

与志子は美和子の説明を理解した。

「オスカーには悪いけど、次は他の牡とペアリングするわ。」

「男前のオランウータンを探しておいてね。」

与志子は美和子に言った。

美和子は微笑みながらクルーザーに乗り込んだ。

「じゃ、元気でね」

美和子は言うと同時にクルーザーのエンジンが掛かった。

「今までありがとう。」

与志子は美和子と小山にお礼を言った。

小山が与志子に手を振りながら、クルーザーをゆっくりと動かし始めた。

桟橋を離れ、与志子達がだんだん小さくなって往く。

美和子は操縦する小山の傍に来て話し始めた。

「最初は学会で発表したかったけれど、猿道さんの幸せそうな顔を見ていたら、やっぱり発表しない方がいいわ。」

「ああ、そうだな。」小山は頷いた。

「あなたのポケットの中のメモリーカード、私に渡してもらえるかしら。」

小山は驚いた顔をして、美和子を見た。

美和子は黙って掌を差し出した。

「全てお見通しって訳か。」

小山はポケットからカードを出し、美和子の掌に握らせた。

「貴方がビデオからカードを摩り替えるのを見たのよ。」

美和子が言った。

「お金持ちになれるぞ。」

小山が操縦しながら言った。

「約束は約束よ。」

美和子は、メモリーを海に投げ捨てた。

それを見ていた小山は寂しそうに呟いた。

「・・・・・そうだよな、約束だからな」

クルーザーはスピードを増し、一路東京へ帰還した。



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