【第6章】


何処までも続く熱帯林、河の水がゆっくり流れ、鳥たちが囀る長閑な密林。

その密林の奥深く分け入った太い木々が密集した一本の木の樹冠部に大きな巣は作られていた。

与志子と章吉はその巣の中に居た。

与志子と章吉の巣は、快適な夜を過ごすために、折ったり引き裂いた小枝を並べ、葉のついたままの枝が

部分的に編むようにして作ってあった。

与志子と章吉は仲良く寄り添っていた。与志子は章吉の片腕に抱き付き、愛しそうに章吉を見詰めていた。

与志子達の前には、ドリアンなど森の果物が山のように積まれ、そして、章吉の仲間達が取り囲んでいた。

それは、まるで与志子と章吉が夫婦になった祝宴のようであった。

章吉が人間の牝を嫁に貰ったという噂は森中に広まり、オランウータンの嫁になった人間の牝を一目見ようと

その仲間達を取り囲むように森中のオランウータンが集まっていた。



与志子は全裸姿に太腿までの長さの白いストッキングを穿き、頭には白いウエディングベールを着けていた。それと、与志子が妊娠しているのは直ぐに判った。

臨月に入ったのか豊満な乳房はさらに大きく張り出し、乳輪は大きく黒ずみを増していた。

そして、お腹は大きく迫り出し、まるでスイカを飲み込んだように大きくなっていた。

章吉はそんな与志子を労わる様に与志子のお腹を摩り、与志子と見詰め合い、

そして、沢山の仲間が見守るなかで、唇を重ね合い舌を絡ませた。

見守っていた仲間達は一斉にウオーッウオーッと歓声のような鳴き声を上げた。

与志子は章吉の子供を孕んだ事で、もう人間の世界には戻らないと誓い、

章吉と共にオランウータンの世界で生きていく事を選択した。



暫くして、与志子は普通のオランウータンよりも体毛が薄い、章吉によく似た牝の赤ん坊を出産した。

与志子は、赤ん坊に微笑みながら乳首を吸わせている。

赤ん坊は時折、片方の手で与志子の大きく張った乳房を押したりしながら、乳首を吸っている。

赤ん坊の授乳の時らしく、隣には与志子の夫である章吉が、警戒の為に周りを見回している。

時折、与志子と章吉が幸せそうな顔をして見つめ合ったりしている。

与志子が赤ん坊への授乳中、章吉が与志子を見詰め顎をしゃくり合図した。

与志子は意を察して頷き、四つん這いの姿勢になって赤ん坊に乳を与え始めた。

与志子は、章吉が欲求すれば赤ん坊に乳を与えている最中にも関わらず、いつでも夫である章吉に仕えている。肘を折り曲げ、お尻を高く持ち上げ、章吉をバックから受け入れている。

章吉は、卑猥な腰つきで与志子の膣の中へ肉棒の挿入を繰り返している。

与志子が喘ぎながら体を弓反りにしたと同時に章吉が与志子の尻に力強く腰を打ちつけ

唸り声をあげて精を放った。



早朝、与志子は眼を覚ました。

「・・・・・・・」

「ああ・・夢だったのね」

与志子は下腹部を摩りながら独り言を言った。

(たぶん、この子達が見させたのかも?)与志子は思った。

与志子の子宮の中には、まだ昨夜の章吉の獣液がいっぱいに詰まったままであった。

与志子は横で眠っている章吉を愛しそうに見詰めて呟いた。

「夢の中であなたは私の夫になるのね」

「あなたは私を妻に選んでくれたの?」

与志子は少し考えて、意を決したように起き上がった。

そして、腰に巻きついている章吉の腕をゆっくりと外し、ベッドから起き上がった。

横で眠っている章吉を起こさないようにゆっくりと静かに寝室から出て西山に電話した。

「どうしたんだい?こんな朝早くから」西山は眠そうな声で電話に出た。

「今日の撮影を延期して欲しいの」与志子は言った。

「何だって!」

「今更それは無理だよ」

「おねがい。あと少し。あと少し時間をちょうだい」

「あと少しで、うまく出来そうなのよ。」

与志子は、嘘を言った。本当は章吉との生活を、このまま、もう少し続けたかったのである。

「出来なくても良いよ。撮影で誤魔化すから」西山は別荘での別れ際に、与志子の裸体を見てから章吉と絡ませるには、勿体無い身体だと思っていた。

「だったら、私はこの撮影から降りるわ!」

「あれほど嫌がっていたのに、どうしたんだい急に?」

「とにかく、あと少し。あと少し時間をちょうだい。」与志子は必死だった。

「・・・・・・わかった。監督に伝えてみるよ。」西山は与志子の必死さに根負けした。

「それと、私からの提案があるの」与志子は、自分の思った事を伝えた。

「うーん。わかった。それも監督に伝えるよ」

「また後で、結果を連絡するよ」と言って電話を切った。

暫くして、あと3日撮影を延期すると西山から連絡が入った。

与志子は「やったー」と叫び、走って寝室に戻り、目を覚ましていた章吉に抱きついた。

「あなた。あと3日一緒に居られるわよ」与志子は嬉しかった。

章吉をベッドに倒し、唇を吸った。

この時、与志子は章吉の妻になる事を決心した。

(私が夫に選んだのが、たまたま人間ではなくオランウータンだっただけよ)

以後3日間、与志子と章吉は交尾以外のときも、恋人同士のように常に身体を重ね合って過した。



撮影の当日、別荘に撮影用の機材が運び込まれ、別荘の居間は、教会の祭壇の様なセットが用意された。

与志子は今日は章吉の為に、いつもより入念に化粧をした。

今日までの10日間、昼夜を問わず交尾を迫る章吉の要求に応え、牡の精が染み込んだ身体は

誰が見てもハッとするような、美しさと、艶気が滲み出ていた。

与志子は鏡に映る自分の顔を見ながら呟いた。

(私はオランウータンの妻になる。・・・・後悔はしないわ。 )



今、与志子は夢と同じ服装で立っている。全裸に踵の高い白いハイヒール、太腿までの長さの白いストッキングを穿いて、髪にはウエディングベールが飾り付けられている。

この格好は、この作品を見る馬鹿な男たちがきっと股間を熱くして喜ぶであろう。

夢と違うのは、抱いているのが、赤ん坊ではなく、淡い色のブーケだ、という事くらいだ。

与志子と章吉は、作品パッケージの写真撮り・・・・・

いや、与志子と章吉の結婚式の記念写真を既に撮り終えていた。



今、章吉と与志子の前には、通路を真ん中に左右に来賓に扮したスタッフ達が座っている。

皆は与志子を一目見て、与志子が章吉の女だと云う事を直ぐに理解した。

与志子の身体の至る所に付けられた、赤茶けた無数の章吉に吸われた痕を見れば、もう、与志子が章吉の女だという事を疑う者は誰一人としていなかった。

来賓に扮したスタッフの中に西山が居た。

「与志子さん、あんた本当にエテ公の「もの」になってしまったんだな」西山は一目与志子を見て呟いた。

与志子達に強烈なライトの光が当てられ、監督の後藤が叫んだ。

「よーい」

「スタート」撮影の開始であった。

掛け声と同時にカメラが回り始めた。

与志子達の5m程先に立っている神父に向かって、与志子と章吉はゆっくりとバージンロードを歩んでいった。

スタッフが扮装したニセ神父でも、神父は神父である。

与志子は神父の前で夫婦の誓いを誓い、これで、与志子はやっと念願叶って章吉と本当の夫婦になれたのだ。

与志子は大勢の前で落ち着きが無くキョロキョロしている章吉の頬を優しく掌で挟み、少し前屈みになって唇を吸った。

皆の前で少しディープでは有ったが、誓いのキスを章吉と交わした。

キスを交わし終えると、皆が一斉に立ち上がって拍手をして、

「似合いの番いダ」と祝福してくれた。

そして、与志子と章吉はスタッフ達が別の部屋へ移動するのを見送った。

与志子は撮影を利用して、章吉と結婚式を挙げることが出来たのだった。



撮影方法は与志子の提案が、すべて採用された。

スッポトライトが、煌々と白いベッドを映し出している。

ベッドの周りには、撮影用のカメラが数台セッティングされている。

「見知らぬスタッフ達が傍にいては、彼の気が散って撮影が出来ないかもしれないから」と、与志子が言い。カメラは遠隔で操作される。

スタッフ達は別の部屋のモニターで与志子と章吉の交尾を見る事になる。

章吉の気が散るというよりも、本当の理由は章吉との大切な初夜を無粋な連中に邪魔されたくなかったからだ。

与志子は章吉の手を引いて寝室に入り、ドアを閉めた。

そして、シワひとつ無いベッドの上に脚を崩して座り、章吉を見詰めた。

「さあ、あなた」と、与志子は甘えるように章吉の手を引きベッドに誘った。

与志子がベッドに仰向けになると、章吉は与志子の内腿に手をかけM字型に大きく股を開かせて、股間に顔を埋めた。

章吉の愛撫の中で与志子の一番のお気に入りによる舌での子宮口への愛撫だ。

今、その一番のお気に入りが始まろうとしている。

章吉の舌が媚裂に分け入ると、与志子は喘ぎ声をあげながら、潤んだ瞳をカメラに向けた。

撮影されている事すら忘れるほど、与志子と章吉は激しい交尾を繰り返した。

スタッフ達はモニター越しに与志子と章吉の激しく延々と繰り返される交尾を見せ付けられ続けた。

初夜にしては少し激しかったが、撮影は無事に終了した。



与志子はベッドの上で眼が覚めた。延々と続く章吉との交尾で失神したのだった。

朦朧とする意識で上体を起こすと、与志子は辺りを見回した。が、章吉の姿は無かった。

撮影スタッフ達が忙しそうに黙々と後片付けをしているだけであった。

西山が寝室に入って来て、見覚えのある紙袋を与志子に手渡した。

「ご苦労さん」

「さあ、シャワーでも浴びて着替えるがいい」

「おっ・・彼は?」与志子は思わず夫と言いそうになり慌てて言い直した。

「君が気絶している間に動物園の人達が引き取りに来たよ。」

「・・・・そう・・」与志子は寂しそうに呟いた。

(結婚式を挙げた日に私達夫婦は引き離されたのね)

「相性がいいんだな。君とあのエテ公は」

「あまりの激しさに見ていて少し妬けたよ」

「SEXと言うより、これは交尾だ!と言って監督も興奮して絶賛していたよ」

「君は本当にあのエテ公を愛してしまったんだな。」

(当たり前でしょ。夫婦になったんだから)与志子は心の中で呟いた。

「どうだい?エテ公の妻になった気分は」西山はニヤニヤといやらしく言った。

「・・・・・」与志子は黙っていた。

「悪くは無い筈だよな。失神までさせられたんだから」

「おまけに身体中にいっぱいキスマークまで付けて。」

「・・・妻と言うより、エテ公のメスと言った方がぴったりだな。」と、言いながら西山は与志子の乳房に触ろうとする。

「彼はエテ公なんかじゃないわ」与志子は西山の手を払い、キッと睨みつけた。

「おおっ怖っ。」

「解かったよ。オランウータンの亭主に仕返しされたら嫌だからな。」西山はニヤニヤ笑いながら後退りした。

与志子はプイッと横を向いた。

「着替えが済んだら、近くの駅まで送るよ」と、言ながら西山は寝室から出て行った。

与志子の子宮と膣には章吉の獣液がいっぱい詰まったままである。

与志子は股間に手をあて、媚裂の口を塞いでいるガム状の膣栓を撫でた。

(あなた・・一生懸命暖め続けるわ)

与志子の体中を舐め回した章吉の唾液と汗で身体がベタベタしていたが、シャワーを浴びる気は無かった。

シャワーを浴びれば彼の匂いが落ちてしまうのが嫌だった。

紙袋の中からパンティーを取り出すと、膣栓が剥がれないようにゆっくり脚をパンティーに通した。

10日ぶりの下着の感触であった。

ブラジャーを着け、ワンピースの上着を着ると与志子は別荘を後にした。

この撮影で1つ残念なのは、せめてパンティーだけでも着けさせてくれていたら、

章吉にパンティーの脱がし方を教えられたものを。



撮影が終了して、与志子と章吉が離れ離れになってから今日で丸一日になるが、与志子の子宮と膣はまだ章吉の愛液でいっぱいに満たされている。

与志子は、このまま膣栓が自然に剥がれるまで、大事に暖め続けるつもりでいる。

与志子と章吉の初夜を撮影した、作品がDVDで発売されると空前の大ヒットになった。

そのDVDの作品名は 【番い(WEDDIN NIGHT)】【主演女優 猿道好子】

遠藤与志子を猿道好子と書き換えたのは、おそらく監督の後藤だろうと与志子は推測した。

あの駄洒落好きの後藤のやりそうなことである。

与志子は多額のギャラを手にしたが、当初予定していたバリ島には行かなかった。

もう、与志子は完全に人間の男には興味を持てなくなっていたのである。

アパートの窓から、沈み往く夏の太陽を眺めながら、別荘での出来事を思い出しては溜息をついた。・・・・



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