【第5弾 2002/09/01】痴漢電車/電車でイきます(蛇バージョン)


俺に近づくんじゃねぇ!! と、氷の視線を浴びせると、そいつはあたふたと引き下がっていった。ちょうど開いた乗降口から、逃げるように電車を降りてゆく。はん!! 犬野郎が。

ったく、よくあることとはいえ、朝っぱらからムカつくこと、はなはだしい。そりゃあ、あたしは美人でキュートなおねぃさんかも知れんが。だからってベタベタ寄ってくると、噛みつくかんな。あたしの身体は、あたしのもんだ。勝手に触んじゃねぇぞ。

乗降口のドアが閉まり、がたん、と電車が動き出した。快速電車なので、次は会社の最寄り駅までは停車しない。あと10分くらいだろう。このあたりまで来ると、電車の中はものすごい過密状態だ。あたしは、空いているうちに車両の端っこのほうに居場所を確保しているので、こういう状態でも車両連結部のドアに寄りかかっていれば、なんとか耐えられる。唯一の問題は背後が無防備になりがちということで、それでさっきのクソ親父みたいなやつが寄ってくることがある。これまでは「氷の視線」で7割撃退、残り3割は実声の警告で撃退、あわせて撃退率10割を誇っている。触られてからでないと撃退できない、というのがムカつくが。

がくん、と電車が揺れた。むぎゅうぅぅ、とあたしはドアに押しつけられた。きつい。人津波状態だ。今日はいつもより混んでいるようだ。うー、息させて。

きぃぃ、とかすかなブレーキ音をさせ、電車はゆっくりと停止した。なんで? まだ次の駅に着くには、早いぞ。それより、息させて。うー。もぞ。む? 苦しいよー、ちょっとでいいから隙間が欲しい。うーん。ぷは。ひと息だけつけた。でも、まだ気を抜けない。気を抜いたら、つぶされる。もぞり。むぅ? 電車、動かないなー。なんかあったのかも。もぞもぞ。うぬぬ、こ、こんな時に来やがったか、2人目の性犯罪者。こんな時だからこそチャンスと思ったのかも知れないが、こんな時だからこそこっちはマジギレしそうなんだぞ。警察呼ぶ前にブチ殺したろか。

下の方でスカートをたぐる気配がする。なんだ、こいつ(-_-メ)。いい気になりやがって。とっ捕まえて、いきなり「痴漢か、この野郎」って大声出してやろうかと思ったけど、こんな超過密状態では身動きすらできない。得意技の「氷の視線」を出そうにも、振り向くことすら不可能だ。

すりっ、と撫でるように、太腿をさすってきた。何すんのよ、この変態!! 多少の無理は承知で、あたしは片手を後ろに廻した。とっ捕まえてやる。どこだ。すりすり。ふっざけんなよ、きさま(d_bメ)。手は? こいつの手はどこだ?

ぬら。え? あたしは後ろに廻した手で、もういちどヒップの辺りを探った。ぬらぬら。な、なに? ちょっと細すぎない?

その「ぬらぬら」が、動いた。すっ、と太腿の付け根に向かって撫で上げていく。こ、こいつだ、間違いない。でも、これ、人間の手じゃないよぅ。いったい何? あたし、何に痴漢されてるの? すりすり。ち、ちょっと止めてよぅ。すすすすっ。いやぁ。

もう相手が何かなんて構ってられない。あたしは力一杯、その「ぬらぬら」を掴んで押しのけた。異様に細い。え? なにこれ? まるでゴムホースかなにかみたいに細い。すり。また来た。あたしはもう一度、そいつの手触りを確かめてみた。うん、ぬらぬらしている。ていうか、あたしの手の中で蛇のように蠢いている。蛇? まさか、蛇? なんで蛇がこんなとこにいるの?

するり。そいつはあたしの太腿に巻きついて、股間のほうへ這い登ってこようとしているようだ。スカートの中だからみえないけど、まちがいなく蛇だと思う。女性の一番大事な部分を目指して、容赦なく這い登ってくる。こら!! やめろ!! だいたいなんで、こんな場所に蛇なんかいるのよ!! えぇい、離れろ!! 離れろ!!

掴んでいるしっぽを引っ張り、両の太腿をすりあわせて必死ではがし落としたかいがあって、蛇はあたしの太腿から落ちてくれた。よかった。

よくなかった。いったん落ちた蛇は、もう一度あたしの脚に巻きついて登ってきた。ただし、今度はもう、あたしの手は届かない。

冗談じゃない。あんた、しつこすぎるわよ、このエロ蛇!! あたしはもう一度、蛇をはがし落とそうとした。でも太腿をこすり合わせるだけなので、うまくいかない。もう!! なんであたしがこんな目に遭わなきゃならないの。

「えー、本日は○○線をご利用頂き、まことに、ありがとうございます」

車両の天井にあるスピーカーから、アナウンスが流れてきた。よかった。電車、動くのかしら。

「えー、ただいま入った連絡によりますと、××駅において、人身事故が発生した関係で、ただいま、上下線とも、運転を一時見合わせております。おいそぎの皆様には、大変、ご迷惑をおかけしますが……」

周囲から、いっせいにため息がもれる。いいわね、あんたたちは。せいぜい遅刻だけですんで。あたしのほうは、貞操の危機なのよ。蛇に痴漢されてるのよ。もうぅ、離れてよ、頼むから。

下着の布ごしに、蛇の頭がぐいぐい押しつけられる。胴体が太腿にこすれて、へんな感じがする。ぬめり、としっぽが太腿を這う。いやあぁ。蛇の頭が布の上からクリトリスを叩く。やめて。お願い。あたしの股間を、蛇が好き勝手に這い回っている。やめて。やめて!! 下着の隙間を、蛇の頭がさぐっている。蛇の力は意外と強い。下着ごしなのに、そんなに、ああ、駄目、そんなにしないで、お願い、お願いだから、もう許して、あぁ……。

割れ目の奥の方から、鳥肌が立つようなざわざわした快感が、悪夢のようにひろがってゆく。お願い、もうやめて。周りにこんなにたくさん他人がいるのに。これから会社に出勤するところなのに。駄目よ、駄目。

蛇の頭があたしのお尻のほうで隙間をみつけた。ひやりと冷たい感触が、布の内側にある。最悪だった。頭が下着の裾に引っかかって、抜けなくなった。蛇がさらにもがくと、下着の中へずるりと這入っていく。どうしよう?

あたしは連結部のドアに貼りついたまま、凍ったように身動きしなかった。どうするべきなのかは、わかっていた。悲鳴を上げて、周囲のひとに助けてもらうべきなのだ。きっとみんな助けてくれる。こんな畜生なんか、窓から放りだしてくれる。でも、声が出なかった。出なかったと言うべきだろうか。出そうとしなかったのだろうか。割れ目の奥が疼いている。恥毛の一本々々が蠢いているような気がする。ああ、お願いだから、もうやめて。あなたがやめてくれれば、何も起きないのよ。お願い……お願い……もう、何もしないで。

蛇の頭が股間の中心に押しつけられた。

ああ……。あたしは震えた。蛇の胴体が、お尻の間から前へ這っていく。ああ……来るわ……蛇が……あたしをこすり上げる……来た……あ……直に……冷たい……強い……クリトリスが……あぁ、そんなに……強すぎる……駄目ぇ……こすられる……あたし、もう……あん……やめ……気持ち、いい……やめて……あ、あ、弄ばないで……あぁぁ……駄目よ、中は、駄目……く、来るぅ……ああ力強いわ……あっ……奥に……這入らないで……そんな深くは駄目……あーっ……曲がってる……中なのに……くねらないで……お、お願い……あっ……あっ……駄目、駄目、許して、駄目……

ドアのガラスに額を押しつけ、あたしは必死で声を抑えた。こんな身動きも出来ない状態で、こんな激しく嬲られるなんて、拷問されているのと同じだ。声を出して悶えたい。でも、それは出来ない。ああ、誰か何とかして!!

蛇があたしの膣の中で、くにゃりと胴体を曲げ、ますます奥へ、ずるりずるりと、残りの胴体を引き入れてゆく。太腿を雫がつたい落ちていった。終わりのない挿入感ゆえか、体内でのたうつ感触ゆえか、でももう、どっちでも、いい……いい!!……いや、いや……あぁ……ん……潜られちゃう……いや……やめないで……潜られるぅ……やめちゃ、駄目ぇ……奥まで、這入って……あたし……あぁ、もう……あぁん……穴よ……巣穴よ……あなたの巣よ……もっと……いい……這入って……巣穴にしてぇ……あん、あん、あん……もっと……来て……あ……奥に、来てぇ……あ、はぁ……もっと奥に……いっそ子宮の中に……あ、見てる……車両の向こうから、見られてる……な、何よ、何でもないわよ……あっ!!……すごい……そんな奥まで来れるの?……ひぃっ……み、見ないでよ……あぁ、素敵よ……あ……あぁぁーーーーーっ!!!

がたん、と電車が動き出した。

「えー、ただいま入った連絡に寄りますと、上り線の電車は随時、運行を開始したとのことです。なお、時間調整のため、次の停車駅で……」

蛇があたしの胎内で蠢いている。尻尾の先まで這入り込んで、胴体をくねらせる。子宮の中が、爬虫類の細長い胴体で占領されている。蛇のやつは頭の先だけ股間の外に出して、ときどき、舌でちろちろとクリトリスを刺激している。あたしは、何度も、何度も快感の波に突き上げられ、翻弄された。蛇が動くたび、新しい波が起こって、あたしを押し上げる。無限地獄のような快楽だった。

電車が止まった。あたしは朦朧としたまま駅に降りた。ほとんど自動化された動きで、エスカレーターを降り、改札を出る。あたしが歩く振動が気に入らないのか、ときどき蛇がのたうち、あたしを罰した。病みつきになりそうな懲罰だ。ううん、もう病みつきになってる。あたし、もうこの蛇と離れられない。一生このままでも、いい。死ぬまで、あたしをあなたの寝ぐらにして欲しい。あたしを罰して。もっと罰して。子宮の中でとぐろを巻いて、いつまでも、何年でも冬眠させてあげる。その代わり、その代わり、もっともっとあたしを苛めて、のたうって、鞭打って。

あたしは、あなたの奴隷になります。あなたの巣穴になります。あたしの肉体は、あなたのものです。あなたを運び、暖めるための家畜です。どうか、あたしを支配して下さい。あなたのために奉仕させてください。あひぃっ!! ああ、もっと……!!

会社が近い。あたしは、はっ、と我に返った。いけない。このまま出社するわけには……。

「おっはよ〜」

肩を叩かれ、振り返ると、隣の席の加代ちゃんだった。

「あれ? どうしたの、顔色、わるいんじゃない?」

「あ、大丈夫よ。ちょっと、しつこい痴漢がいてさぁ」

「あ〜、やーよねぇー、そういうの」

しまった、具合が悪いって言って、このまま帰れば良かった。でも、もう遅い。どうしよう。会社に着いたら、制服に着替えないといけない。でも、蛇を抱えた状態で着替えなんて……蛇の頭が出てるから、下着が盛り上がってる。すぐ、みんなに知られてしまう。タンポンだと言えば? 駄目。生理は先々週あったばかりだし。ああ、本当にどうしよう。

そのとき、あたしはもっと悪いシチュエーションに気がついた。もし、着替えてるときに蛇が外に這いだしてきたら? あたしの股間からずるずると蛇がのたうち出てくるのを、みんなに見られたら? どうしよう? どうしよう?

会社はすぐ目の前だ。ああ、神様、あたし、どうなるんですか?



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