この二人と一頭のその後については、あまり詳しい話は残っていない。
平太は数年後にきちんとした娘を嫁にもらい、一家の長として生涯を過ごしたという。
加代は結局どこにも嫁にゆかず、出戻りのままだったようだ。ただ、平太の嫁取りの話がまとまった頃に、さらに山奥の林間に小屋を建ててもらい、そちらへ移ったようである。新婚の弟夫婦に気兼ねしたのかもしれない。
イワオは、加代といっしょに小屋に移されたようだ。イワオは加代によくなついて、まるで仲のよい姉弟か夫婦のようだったという。
加代にはその後に何度か縁結びの話もあったようだが、結局まとまることはなかった。
「わしの旦那さまは、イワオじゃから」
加代はよくそんなふうに言って笑っていたという。
「そのうち、イワオの仔を産むかもしれんぞ。元気な馬っ仔を、よ」と。