参考になった文献

[縮刷版]日本民族事典
著者/編者:大塚民俗学会
出版   :弘文堂
本体価格 :\5,700

民俗に関する事物をとりまとめた事典。農業関連、婚姻の風習、道具などなど、さまざまな事柄が網羅されていて、今回はとても重宝した。

ただし、人獣の交わりについてはなにも載っていない。(あたりまえだが)

唯一、物足りなかったのが、ここに納められている内容が(おそらく)比較的に近代の民俗風習に基づいたものであろうと思われること。明治初期・中期、江戸時代、それ以前などの風習や事物を知りたいと思っても、この事典ではたぶんカバーされていない。

個人的には、馬と農家の関わりとか、馬(特に農耕馬)の生活史を知りたかったのだが、この事典ではよくわからなかった。もっとも、そんなことが載っている本などどこにあるのやら……というのが現状なのだが。

絵巻物に見る日本庶民生活誌
著者/編者:宮本 常一
出版   :中央公論社(中公新書)
本体価格 :\700

絵巻物を題材にして、中世日本(奈良時代〜平安時代〜鎌倉時代?)の人々の生活を解説している本。

この本のおかげで、当時の日本では馬が農耕に使役されることはまずなかったのだと知った。というわけで、書き始めてからずっと決めかねていた時代背景を江戸末期〜明治中期未満に決定。(それでも、かなりアバウトだなぁ)

また、昭和20年以前は、一般の人々は裸足で出歩くことにそれほど違和感を持っていなかったというのも面白い。現代の道路は路面になにが落っこってるかわからないからそんなこと無理だが。昔なら、ガラスの破片が落ちてるなんてことはなかっただろうからなぁ。あ、でも木の小枝とか、とがった小石とかはあり得る。ちなみに私は小学生の頃、真冬の草っぱらですっころんで、草の切り株の枯れて堅くなったやつをぶすりと膝下に突き刺してしまい、その怪我でしばらく難儀したことがある。だから昔の人だって、いつも裸足というわけではなかったはずだと思うし、なにかそういう危険がありそうな場合には履き物をはいていただろう。

とても参考になったのだが今回活かしかねたのが、P.21 の馬屋の様子。天井の梁からU字型に綱を垂らして、それで馬の腹を支えている。「立ったまま眠る馬を保護するためのものであっただろう」とのことだが、初めて知った。

しかしこの本にも、馬と農村の関わり(およびその歴史)はあまり詳しい部分は書かれていない。ううむ。もしかして日本民族史のミッシングリンクなのであろうか。

ふるさとの生活
著者/編者:宮本 常一
出版   :講談社(講談社学術文庫)
本体価格 :\800

あれ? 同じ人だ。(^^;)

各地方(主に本州の農村部)の、昭和初期のころ(またはそれ以前)の生活や風習などを、著者の旅の体験などをもとにつづった本。「旅の体験などを」というと簡単に聞こえるが、この著者は本当に精力的に各地を歩きまわったらしい。各地の生活ぶりなどを実際に見るためにその地へ赴き、人々から話を聞き出し、場合によってはすでに廃村になってしまった場所にまで、道なき道を踏み分けていったことがうかがえる。

本編に入る前にあの柳田国男が紹介文を寄せているが、これが「昭和25年3月」となっている。つまりそれだけ昔の風習をよく保存してある本なのである。日本中で開発が進んでしまった現在では、これに敵する調査を行うのはすでに不可能だろう。

実はまだ読んでいる途中なのだが、「集村」と「散村」など、農村の形態についての記述はずいぶん参考になった。おかげで、加代と平太の家を村の中心からずっと離れた場所に置くことができた。

絵図を多用しているのも、内容をわかりやすくしてくれて、ありがたい。「絵巻物に見る日本庶民生活誌」もそうだったが、実に頻繁に絵が出てくる。ただし今回は絵巻からの引用ではなく、イラストである。んがっ!! しかし。イラストを描いた人の名前が記載されていない!! こ、これはもしや、イラストも自分で描いちゃったということでしょうか。

つくづく、すごい人である。昭和56年没(74歳)とのこと。



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