今日のランチはジャーマン・ソーセージを、切ったパンにはさんで、マスタードを塗って。レタスのサラダも添えて。あとは濃いめのコーヒーをたっぷり。ちょっと手抜きっぽいけど、短いつき合いじゃなし、たまにはいいでしょ。
口を大きく開けてかぶりつくと、歯と歯の間から、ソーセージがぷっつんと噛みきられる感触が伝わってくる。なんで、そんなにじいっと見てるのよ? ああ、また何かいやらしいこと考えてるでしょ。あたしが口に入れるところ、そんなに興味深い? まったく、これだから男って……。
そう言えば、口でしてあげたことは無かったな。顎を動かすと、ソーセージが口の中でごろりと転がった。口でしてあげると、男ってすごく喜ぶらしい。まあ、耳学問だけど。でも、どんなふうにやれば良いのか、あたしはよく知らない。たぶん、顎はあんまり動かさないのよね、噛んじゃうと大変だし。じゃあ、舌を動かすのかしら。このソーセージじゃ、ちょっと小さすぎるかな。唇は動かせないわよね、きっと。顎を動かさずに唇だけ動かすなんて、きっと無理。でも、こうやれば……こうなら、どう?
あ、やばい、変な目で見られてる……と思った瞬間、つーんと痛みが頭を突き抜けた。
ちょっと、舌を噛んじゃった。鉄と塩の味が、口の中に滲んでくる。うひゃあ、こんな間抜けなこと、絶対言えない。墓場まで持っていこ。と思いつつ、今の動作を反芻しているあたし。そうね、上手い下手はともかくとして、何にでも「はじめて」ってことは、あるのよ。そう、何にでも。
明日のランチもきっと、ソーセージを……。
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