雑談の広場:コメント投稿
[ 1205 ]
Re:落日2-7-4
[ 名前:
maxi
]
[ 日付:
2010年11月12日(金) 02時32分
]
「はい、田宮動物病院です……。ああ、これはこれは望月さん、ジョン君との関係はあれから少しは改善しましたか?」
電話の相手が肉感的な人妻であることを知って、田宮は相好を崩した。
「えっ!?どうしてそれを……」
いきなり田宮にジョンとの不適切な関係を言い当てられたと思い、彩子は肝を冷やした。
「いやだなあ。この前ご相談を受けたばかりですよ。ジョン君も少しは言う事を聞くようになりましたか?」
田宮の言う関係が散歩やイタズラのことであると知り、彩子はホッと胸を撫で下ろす。そういえば、あれからずっとジョンを散歩に連れて行っていないことを思い出した。
「あ……、ああ!いえ、それはまだどうにも……。実は、それとは別のことで相談に乗って頂きたいことがありまして……。お時間は大丈夫でしょうか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。どうぞどうぞ、なんでもおっしゃってください。奥さんのためなら何でもしますよ。――何なら、そちらにお伺いしても好いぐらいですよ、ははっ」
調子よく田宮は受け答えし、上手くいけばあの美しい人妻の日常を垣間見れるのではないかと期待した。
「ありがとうございます。で、ですね……、あの……」
(どうしよう……。電話したのはいいけど、犬の子供を妊娠するかなんて直接訊ける訳ないし……)
どう話を切り出そうかと悩んでいた彩子の脳裏に、オヤジ顔をした滑稽な犬の姿がふっと浮かんだ。
「そうよ、人面犬よ!」
好い口実が見つかったと、彩子は思わず電話口ではしゃいだ。
「――あの、奥さん?」
大人しそうな人妻の、いつもとは違う様子に田宮は戸惑った。
「――す、すみません。実は人面犬のことでお訊きしたいことが……」
田宮の声に我に返った彩子は、真面目な口調で正気を疑われかねない相談を始めた。
「じんめんけん!?――あの、もしかして、あの人面犬ですか?――オヤジ顔の?」
思ってもいなかった頓珍漢な相談に、田宮の腰が砕ける。『じんめんけん』と言えばアレしかないよなと苦笑する。
「はい!そうなんです。あの人面犬なんです!」
話が通じて、思わず彩子の声が大きくなる。
「はあ、アノ、ですか……。で、一体、人面犬の何をお聞きになりたいと?」
頓珍漢な話題であってもちゃんと相談に乗れば、この人妻の点数を稼げるのではないかと田宮は気を取り直した。しかし、人面犬とは専門外もいいところである。
「あっ、あの、えーっと……。そう、子供が。子供が訊くんですよ。人面犬は人と犬の間にできた子供なのかって」
「ハァ!?――あの、それはまじめに答えた方がいいですか?」
おかしな方向へと進む話題に、田宮はからかわれているのではないかと思い始めていた。
「ええ、是非。お願いします、田宮先生」
だが、媚の含まれた人妻の声に田宮は鼻の下を伸ばした。
「他ならぬ奥さんの頼みですからねえ……。んっ、んんっ。いいですか?人と犬の間に子供は絶対に出来ません」
「そうなんですか!よかったぁ」
願っていた通りの答に彩子がはしゃぐ。
「――それは確かなことですか?医学的にも証明とかされているんですか?」
「えっ、ええ。ヒトとイヌの染色体数は全くと言っていいほど違いますからねえ。万が一にもあり得ませんよ。――あの、それで、今度そちらに……」
「ありがとうございました、田宮先生!」
獣医の答と医学的な確証を得て安堵した彩子は、お礼もそこそこに一方的に電話を切った。田宮は肩を竦め、呆然と見つめていた受話器を置いた。
妊娠の危険性が全くないと判ってすぐに、遅れに遅れていた彩子の生理が漸く訪れた。ただ、頭では理解していても、
排泄される経血におかしなモノが紛れ込んでいるのではないかという不安から、ナプキンの中身や便器の中を直視することはできなかった。
幸運なことに夫が戻ってくる前の日には完全に生理期間を終え、すんでのところで彩子は危機を脱していた
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> 「はい、田宮動物病院です……。ああ、これはこれは望月さん、ジョン君との関係はあれから少しは改善しましたか?」 > 電話の相手が肉感的な人妻であることを知って、田宮は相好を崩した。 > 「えっ!?どうしてそれを……」 > いきなり田宮にジョンとの不適切な関係を言い当てられたと思い、彩子は肝を冷やした。 > 「いやだなあ。この前ご相談を受けたばかりですよ。ジョン君も少しは言う事を聞くようになりましたか?」 > 田宮の言う関係が散歩やイタズラのことであると知り、彩子はホッと胸を撫で下ろす。そういえば、あれからずっとジョンを散歩に連れて行っていないことを思い出した。 > 「あ……、ああ!いえ、それはまだどうにも……。実は、それとは別のことで相談に乗って頂きたいことがありまして……。お時間は大丈夫でしょうか?」 > 「えぇ、大丈夫ですよ。どうぞどうぞ、なんでもおっしゃってください。奥さんのためなら何でもしますよ。――何なら、そちらにお伺いしても好いぐらいですよ、ははっ」 > 調子よく田宮は受け答えし、上手くいけばあの美しい人妻の日常を垣間見れるのではないかと期待した。 > 「ありがとうございます。で、ですね……、あの……」 > (どうしよう……。電話したのはいいけど、犬の子供を妊娠するかなんて直接訊ける訳ないし……) > どう話を切り出そうかと悩んでいた彩子の脳裏に、オヤジ顔をした滑稽な犬の姿がふっと浮かんだ。 > 「そうよ、人面犬よ!」 > 好い口実が見つかったと、彩子は思わず電話口ではしゃいだ。 > 「――あの、奥さん?」 > 大人しそうな人妻の、いつもとは違う様子に田宮は戸惑った。 > 「――す、すみません。実は人面犬のことでお訊きしたいことが……」 > 田宮の声に我に返った彩子は、真面目な口調で正気を疑われかねない相談を始めた。 > 「じんめんけん!?――あの、もしかして、あの人面犬ですか?――オヤジ顔の?」 > 思ってもいなかった頓珍漢な相談に、田宮の腰が砕ける。『じんめんけん』と言えばアレしかないよなと苦笑する。 > 「はい!そうなんです。あの人面犬なんです!」 > 話が通じて、思わず彩子の声が大きくなる。 > 「はあ、アノ、ですか……。で、一体、人面犬の何をお聞きになりたいと?」 > 頓珍漢な話題であってもちゃんと相談に乗れば、この人妻の点数を稼げるのではないかと田宮は気を取り直した。しかし、人面犬とは専門外もいいところである。 > 「あっ、あの、えーっと……。そう、子供が。子供が訊くんですよ。人面犬は人と犬の間にできた子供なのかって」 > 「ハァ!?――あの、それはまじめに答えた方がいいですか?」 > おかしな方向へと進む話題に、田宮はからかわれているのではないかと思い始めていた。 > 「ええ、是非。お願いします、田宮先生」 > だが、媚の含まれた人妻の声に田宮は鼻の下を伸ばした。 > 「他ならぬ奥さんの頼みですからねえ……。んっ、んんっ。いいですか?人と犬の間に子供は絶対に出来ません」 > 「そうなんですか!よかったぁ」 > 願っていた通りの答に彩子がはしゃぐ。 > 「――それは確かなことですか?医学的にも証明とかされているんですか?」 > 「えっ、ええ。ヒトとイヌの染色体数は全くと言っていいほど違いますからねえ。万が一にもあり得ませんよ。――あの、それで、今度そちらに……」 > 「ありがとうございました、田宮先生!」 > 獣医の答と医学的な確証を得て安堵した彩子は、お礼もそこそこに一方的に電話を切った。田宮は肩を竦め、呆然と見つめていた受話器を置いた。 > > 妊娠の危険性が全くないと判ってすぐに、遅れに遅れていた彩子の生理が漸く訪れた。ただ、頭では理解していても、 > 排泄される経血におかしなモノが紛れ込んでいるのではないかという不安から、ナプキンの中身や便器の中を直視することはできなかった。 > 幸運なことに夫が戻ってくる前の日には完全に生理期間を終え、すんでのところで彩子は危機を脱していた
電話の相手が肉感的な人妻であることを知って、田宮は相好を崩した。
「えっ!?どうしてそれを……」
いきなり田宮にジョンとの不適切な関係を言い当てられたと思い、彩子は肝を冷やした。
「いやだなあ。この前ご相談を受けたばかりですよ。ジョン君も少しは言う事を聞くようになりましたか?」
田宮の言う関係が散歩やイタズラのことであると知り、彩子はホッと胸を撫で下ろす。そういえば、あれからずっとジョンを散歩に連れて行っていないことを思い出した。
「あ……、ああ!いえ、それはまだどうにも……。実は、それとは別のことで相談に乗って頂きたいことがありまして……。お時間は大丈夫でしょうか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。どうぞどうぞ、なんでもおっしゃってください。奥さんのためなら何でもしますよ。――何なら、そちらにお伺いしても好いぐらいですよ、ははっ」
調子よく田宮は受け答えし、上手くいけばあの美しい人妻の日常を垣間見れるのではないかと期待した。
「ありがとうございます。で、ですね……、あの……」
(どうしよう……。電話したのはいいけど、犬の子供を妊娠するかなんて直接訊ける訳ないし……)
どう話を切り出そうかと悩んでいた彩子の脳裏に、オヤジ顔をした滑稽な犬の姿がふっと浮かんだ。
「そうよ、人面犬よ!」
好い口実が見つかったと、彩子は思わず電話口ではしゃいだ。
「――あの、奥さん?」
大人しそうな人妻の、いつもとは違う様子に田宮は戸惑った。
「――す、すみません。実は人面犬のことでお訊きしたいことが……」
田宮の声に我に返った彩子は、真面目な口調で正気を疑われかねない相談を始めた。
「じんめんけん!?――あの、もしかして、あの人面犬ですか?――オヤジ顔の?」
思ってもいなかった頓珍漢な相談に、田宮の腰が砕ける。『じんめんけん』と言えばアレしかないよなと苦笑する。
「はい!そうなんです。あの人面犬なんです!」
話が通じて、思わず彩子の声が大きくなる。
「はあ、アノ、ですか……。で、一体、人面犬の何をお聞きになりたいと?」
頓珍漢な話題であってもちゃんと相談に乗れば、この人妻の点数を稼げるのではないかと田宮は気を取り直した。しかし、人面犬とは専門外もいいところである。
「あっ、あの、えーっと……。そう、子供が。子供が訊くんですよ。人面犬は人と犬の間にできた子供なのかって」
「ハァ!?――あの、それはまじめに答えた方がいいですか?」
おかしな方向へと進む話題に、田宮はからかわれているのではないかと思い始めていた。
「ええ、是非。お願いします、田宮先生」
だが、媚の含まれた人妻の声に田宮は鼻の下を伸ばした。
「他ならぬ奥さんの頼みですからねえ……。んっ、んんっ。いいですか?人と犬の間に子供は絶対に出来ません」
「そうなんですか!よかったぁ」
願っていた通りの答に彩子がはしゃぐ。
「――それは確かなことですか?医学的にも証明とかされているんですか?」
「えっ、ええ。ヒトとイヌの染色体数は全くと言っていいほど違いますからねえ。万が一にもあり得ませんよ。――あの、それで、今度そちらに……」
「ありがとうございました、田宮先生!」
獣医の答と医学的な確証を得て安堵した彩子は、お礼もそこそこに一方的に電話を切った。田宮は肩を竦め、呆然と見つめていた受話器を置いた。
妊娠の危険性が全くないと判ってすぐに、遅れに遅れていた彩子の生理が漸く訪れた。ただ、頭では理解していても、
排泄される経血におかしなモノが紛れ込んでいるのではないかという不安から、ナプキンの中身や便器の中を直視することはできなかった。
幸運なことに夫が戻ってくる前の日には完全に生理期間を終え、すんでのところで彩子は危機を脱していた